カテゴリ:観劇( 15 )

蜷川幸雄演出、シェイクスピア「シンベリン」公演

2012年5月30日、Barbican Thetreにて。

Shakespeare: Cymbeline

蜷川幸雄カンパニーのロンドン公演二日目を見ました。
先日見たグローブ座の「コリオレイナス」に引き続き今年日本語で見るシェイクスピア劇の二つ目ですが、原作を全く知らないにもかかわらず大変楽しめました。やはり日本語でしゃべってくれるのはありがたい。演出は小気味よいテンポで笑どころたっぷり、見栄えのする衣装、簡素ながらも美しい舞台に加えて俳優達の演技のうまさも際だつすばらしい舞台でした。すでに日本で公演した演目でしかも俳優達がほとんど一緒なのでこなれた舞台になっているのでしょう。背景には山水画や源氏物語絵巻(雨夜の品定め)などが使われて日本発のシェイクスピアと強調している点もいいなと思いました。特に雨夜の品定めはまさしく舞台上で男どもがお国の女自慢をする場面だったので使い方が上手いと思いました。イギリス人には全く理解できないでしょうけれど。でも英語字幕で筋を追わなければならない非日本人観客もかなり入っていてほぼ満席だったのは蜷川人気か。
インターヴァルにストール席後方に座っていらっしゃる蜷川さんを見かけ、声をかけてみましたが上機嫌でした。
ただ、劇の大団円となる最後のシーンは演出としてはあまり評価できず、ダサさ感がつきまとってかなり退屈でした。舞台中央に立つ木が陸前高田市の一本松であり、昨年の震災にかこつけた彼の意図はすぐにわかりましたが、人物処理がくどすぎる気がします。

終了後のカーテンコール
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Posthumus役の阿部寛
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Imogen役の大竹しのぶと蜷川幸雄
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by dognorah | 2012-06-01 00:32 | 観劇

日本の劇団によるグローブ座でのシェイクスピア

2012年5月22日、Globe Theatreにて。

ロンドンのオリンピックを記念して世界各国の劇団が37カ国語でシェイクスピアの劇をグローブ座で上演する企画Globe to Globeが進行中で、5月21日と22日の二日間に京都をベースに活躍する劇団「地点」によってコリオレイナス(Coriolanus)が日本語で上演された。
演出は三浦基、主演は石田大。

舞台はほぼ何もなく奥に音楽を奏でる人たちが座っているだけ。
俳優達は藍色の虚無僧の衣装を身につけているが、トランペットや能で使われるような面を小道具として使っている。主役は深編笠をかぶっているが時々前を手で持ち上げてしゃべる。何かを表現するために象徴的な動作をそれらの小道具を使いながら行うが意味は私にはよくわからなかった。シェイクスピアの著した台詞は恐らくすべてしゃべっているのであろう、かなり早口で言葉を繰り出す。さすがに発声がきれいでほぼ全部キャッチできる。発声の仕方も真面目にしゃべったり声音を変えてふざけたしゃべり方にしたりと大変面白い。元々悲劇のはずだが聴いているこっちは喜劇のように笑ってしまう。演出家も悲劇を意識しないでやりたいようにやっているだけだろう。俳優達も時には聴衆に話しかけたり、自由闊達に演技しており大変上手い。ヴァイオリンやトランペットなどの楽器もよいタイミングで鳴らされる。トランペットも時にはわざとすーすーと空気の音を出してふざけた効果も出している。コリオレイナス以外の俳優は場面に応じて役をコロコロと変えて、最少の人数で舞台をまかなう。何もない舞台と相俟ってミニマリズム演出といわれているようだが、観客は容易に想像力を働かせることが出来る。
ということで演劇は滅多に見ない私でも大いに楽しむことが出来た。やっとやってきた夏のお陰で寒くはなかったし。

ロンドンで二日間公演した後はモスクワで2公演、サンクト・ペテルスブルクで1公演予定されているようです。日本でこれを公演するのは来年になるとのこと。

俳優達。左端が主演の石田大。
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右端が演出家の三浦基
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by dognorah | 2012-05-26 23:28 | 観劇

日本映画「それでもボクはやっていない」

2012年2月11日、ICAにて。
周防 正行監督2007年作品
英語題名: I Just Didn't Do It

ロンドンの海外交流基金(Japan Foundation)の企画で9本の現代日本映画がロンドンを始めイギリスのあちこちを巡回します。今回はその中から周防 正行監督と坂口香津美監督も来英し、対談と質疑応答のイヴェントも開催されました。周防さんの対談イヴェントに出席し、今回映画も見ましたので感想を述べたいと思います。彼は映画の上演に際しても来館し挨拶と質疑応答をこなしました。この人の過去のヒット作には「Shall we ダンス?」というのがあり、私もDVDで見たことがあります。
今回の作品は過去の娯楽的映画と違って、かなり深刻な日本の裁判の問題点を描いて、これでいいのか?と見る人に訴えるものになっています。映画開始前に監督が、これは日本の現実であり、決してコメディではない、と強調していました。映画制作まで3年かかって日本の司法制度を勉強し、多くの人にインタヴューして自分でシナリオを書いたそうです。
上映開始時に監督から「日本的な儀式を行いたい」というアナウンスがあり、観客は何が起こるのかと緊張して見ていたら彼はやおらポケットからカメラを取り出して「May I take a photo?」といいながら壇上に上がって我々の姿を撮ったのでした。館内は大爆笑。

ストーリーは、超混雑の朝の通勤電車内の出来事。主人公は痴漢行為をされた女子中学生から誤認逮捕され、警察で否認し続けた結果起訴され裁判にかけられる。無実を訴え続け、彼はやっていないという他の女性証人もいたにもかかわらず有罪になってしまう。その課程を逐一映像にしたものですが、最初から有罪という心証で公判を続ける裁判官や被告に有利な証拠は隠滅するという警察や検事の姿が明らかにされます。全く不愉快な事実ですが日本では本当なんでしょう。深刻な内容にもかかわらず家族や友人達の挙動で笑いを誘う場面も結構あり、映画としては見応えのあるものになっています。

上映後、場内から多くの質問が寄せられ、監督から淀みなくコメントが引き出されてこれも興味深いシーンでした(すべて通訳を介してのやりとりです)。なぜこういう映画を作ったのかという質問がありましたが、ある日新聞で、一審で有罪になった痴漢事件が二審で無罪になったという報道があり、冤罪事件はかなり多いんではないかと興味を持ったのがきっかけだそうです。日本では痴漢行為が多いという事実はここロンドンでも有名で、監督からも一日に何千件とあるでしょうという裏付けコメントが出されて更に有名になった感じです。会場からのコメントでは、こういうひどい裁判は別に日本だけに限った訳じゃない、世界中で横行している、というのがありましたが、権力側のやり口はどこでも一緒ということでしょう。監督はこの映画の後政府内に設けられた新しい司法のあり方を検討する会議の委員に任命されたそうですが、権力にたてつく人を権力側に取り込む作戦でしょうか。彼自身も懐柔されないように気をつけたいという発言がありました。なかなかユーモアもある人で、この映画を作る前は娯楽映画を作る監督という印象を持たれていたために、警察や検事あるいは裁判所などインタヴューが非常にやりやすかった、といって笑わせてくれました。今はもう警戒されて本音は聞けないでしょう。

日本の映画は里帰りのために乗る長距離便でしか見ないので、なかなか貴重な経験でした。監督の話が聞けたのもよかった。こういう企画は大変ありがたく、海外交流基金に感謝したいと思います。
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by dognorah | 2012-02-14 22:49 | 観劇

市川海老蔵(11代目)2010年ロンドン公演

2010年6月7日、Sadler's Wellsにて。
欧州で歌舞伎を見るのは2002-3年ごろに公演された中村雁次郎と中村扇雀などに始まって、2006年の市川海老蔵と市川亀治朗2007年のパリ公演(市川團十郎、市川海老蔵、市川亀治朗など)、 2009年の蜷川歌舞伎(尾上菊五郎、尾上菊之助など)に次いでこれが5回目なので平均して2-3年に一回は見ていることになります。毎回違った面が見えて本当に楽しい。これからもどんどん欧州公演を続けてほしいと思います。

さて、今回は義経千本桜から「鳥居前」「吉野山」「川連法眼館(かわつらほうげんやかた)」の三つのエピソードが上演されました。それぞれ見ごたえのある演目ですが、最後のもので海老蔵のこれまでに見たことの無い演技力を見て感嘆しました。歌舞伎役者というのは運動能力も大いに要求されるんだということもわかりました。忠信の姿から狐への早変わりの妙技も凄かったし、狐として這い回ったりぴょんぴょん飛び回ったりする身のこなしの軽さは大いに客受けしていました。私の席の両脇はスペイン人とイギリス人が座っていましたが二人とも声を上げて感嘆していました。歌舞伎というのは様式美だけじゃなくてこういう娯楽性も大変重要なんだなぁと改めて思った次第です。

出演者
市川海老蔵(源九郎狐と佐藤忠信)
大谷友右衛門(源義経)
中村芝雀(静)


カーテンコールの写真(クリックで拡大)
市川海老蔵
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大谷友右衛門
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中村芝雀
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舞台
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by dognorah | 2010-06-10 23:39 | 観劇

ロンドンで能を見る

2009年12月3日、パーセル・ルームにて(マチネー)。

Noh Play at Purcell Room
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広島県を本拠地とする大島能楽堂と、東京とニューヨークで活動している英語創作能の団体Theatre Nohgakuによる共同制作舞台がロンドン、ダブリン、オクスフォード、パリで公演されており、最初の公演地であるロンドンの3回の公演のうちでマチネーに行ってきました。大変な人気で、マチネーの切符しか入手出来なかったのです。会場はサウスバンクの三つのホールの中では最小のPurcell Room(席数367)で、能にはふさわしい大きさの会場ですが、これだけ観覧希望者が多いのであればもっと公演日数を確保して欲しいと思いました。能は東京では見たことがありますが、ロンドンでは「オペラと能の融合」というイヴェントには行ったことがあるものの本格的な能を見るのはこれが初めてです。

演目と出演者
(1)KIYOTSUNE(清經) (日本語上演)
Author: 世阿弥元清 (1363-1443)
Artistic Direction: 大島政允
シテ:Masanobu Oshima/Akira Matsui
ツレ:Richard Emmert/Teruhisa Oshima

(2)PAGODA (英語上演)
Author: Jannette Cheong
Composition and Direction: Richard Emmert
Choreography: Kinue Oshima, Teruhisa Oshima
Costumes: Teruhisa Oshima, Yasue Ito
Masks: Hideta Kitazawa
シテ・ノチシテ:Kinue Oshima
ワキ:Jubilith Moore
ツレ:Elizabeth Dowd
アイ:Lluis Valls
ノチツレ:Teruhisa Oshima

最初に和装のアメリカ人による解説があり、この日本の古典芸能を日本だけにとどめておくにはあまりにも素晴らしすぎるので、自分たちは国際的に広めようと思って英語の創作能を作り、活動してきたという経緯が話された。主宰のRichard Emmertは35年に及ぶ修行を重ねてきたそう。
最初の演目は、ワキが登場するシーンを省いた短縮版でやや物足りないですが、まあ楽しめました。英語のリブレットを買わせて参照する形式ですが、もう少し頑張って英語字幕を投影する形式にすればもっと受け入れられたでしょう。こういう上演に来る客というのはかなり日本の古典芸能に興味があってのことだと思いますが、その後のインターヴァルに帰ってしまったり途中で席を立った客がちらほらいたのは残念です。なお、ダブルキャストのうちどちらが出演したのかは情報がないので不明です。

次の演目はイギリス人の書いた脚本に基づいて創作されたもので、前日に世界初演がなされました。英語はゆっくり発音されるので、これはストーリーはすべての人に理解されたでしょう。日本語でも発音がわかりやすいということもないので言語的にはどちらでもいいのかもしれません。しかし日本人役者とアメリカ人役者では英語でも発声の仕方が異なります。これは講演後の質疑応答でも客から質問が出ていましたが、やはり幼少の頃から訓練を受けた日本人役者の場合は腹の底から搾り出すような発声ができるけれど、外国人の場合は単に喉から声を出すだけで日本人のようには行かないようです。

それにしても、熱心な外国人能ファンが居るというのは驚きで、ここまで公演ができることには大変感心しました。将来もぜひロンドンで公演して欲しいものです。
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by dognorah | 2009-12-07 02:09 | 観劇

文楽鑑賞

2009年4月13日、国立文楽劇場(大阪)にて。

演目
義経千本桜の三段目(椎の木の段、小金吾討死の段、すしやの段)

***主な出演者***
 竹本住大夫
 竹本綱大夫
 鶴澤寛治
 鶴澤清治
 吉田簑助
 吉田文雀 ほか

諸般の事情で4月7日より大阪にいます。16日にはロンドンに戻りますが。
ちょっと時間が出来たのでホテルから日本橋の方へ千日前通りをぶらぶら歩いていたら国立文楽劇場に行き当たった。文楽はTVでしか見たことがないので大いに興味をそそられる。しかしその公演時間割を見て驚く。第1部が午前11時開始、午後3時25分終了。第2部が午後4時開演、午後9時14分終了。ヴァーグナーもびっくりの長丁場だ。しかも休憩時間がきわめて少ない。これをまとめて見る時間的余裕はないので、幕見席と言って1幕のみを見る切符を買った。上記の三段目のみを見たわけだが、これだけでも休憩なしの2時間45分とオペラ並みの時間がかかる。幕見席は特殊な切符なので左右後方の席があてがわれており、小さな人形を見るにはやや遠い。今回は持っていなかったけれど双眼鏡が必要だ。それでも生の舞台は大変楽しめた。人形は遠くても語りの声や三味線がすばらしいし、話の筋も良くできている。上記出演者には浄瑠璃語りをやる大夫が二人しか書いていないが実舞台では交代で6-7人出演していた気がする。三味線や、人形遣いもしかり。
平日のせいか客の入りは6-7割であったが、熱心なファンが多いように見受けられた。またいつか、今度は舞台間近で見たいものだ。
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by dognorah | 2009-04-16 00:03 | 観劇

蜷川歌舞伎ロンドン公演

2009年3月25日、バービカンシアターにて。

シェイクスピアの戯曲Twelfth Nightをアレンジして歌舞伎役者が演じた公演。
演出:蜷川幸雄
脚本:今井豊茂 (小田島雄志の翻訳に基づく)

出演
尾上菊五郎
尾上菊之助
中村時蔵
中村翫雀
中村錦之介
市川亀治郎
板東亀三郎
尾上松也 
河原崎権十郎
板東秀調
市川団蔵
市川段四郎
市川左團次

舞台は大きな鏡とアールデコ調のセットと日本風が入り交じった感じのもので、伝統的歌舞伎のイメージではない。舞台転換はスマートでスムーズであった。台詞は歌舞伎調に現代言葉を時々挟む物。シェークスピアの原作は読んだことがないが、演劇としては全体に冗長感が否めず、ストーリーの先も読めてしまうのでやや退屈で、蜷川の手腕はあまり感じられない。脚本はもっと練るべきだろう。
各役者はさすがに上手くて台詞は時々とちることがあったもののすばらしい発声を楽しめた。菊五郎が二役を、また菊之助が三役を早変わりしたが見事な早さであった。声音の使い分けもさすが。亀治郎と時蔵の女形はこれもさすがのうまさ。特に亀治郎。
久し振りに一流の歌舞伎役者を見ることが出来たのは幸せだが、蜷川でなしにやはり本格的な歌舞伎を持ってきて欲しかった。

写真はカーテンコールのもの。左から尾上菊之助、蜷川幸雄、尾上菊五郎。
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(文中、亀治郎の漢字を間違えていましたので修正しました。)
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by dognorah | 2009-03-27 09:02 | 観劇

Shun-kin

2009年2月2日、バービカン劇場にて。

谷崎潤一郎の小説「春琴抄」と「陰翳礼讃」をベースにSimon Mcburney率いる劇団Compliciteが昨年世田谷で公演したものをロンドンに持ってきたものです。英語字幕付き日本語上演です。

谷崎の小説は恥ずかしながら読んだことがないのですが、日本人俳優達がロンドンまで来て公演してくれるということで行ったのでした。春琴抄なんて題名からは何となく綺麗なイメージを想像してしまいましたが、サディストとマゾヒストみたいな三味線師弟の話で、サイモン・マクバーニーさんは春琴に仕える佐助のマゾヒストの極致みたいな点に興味を引かれたみたいです。同行の友人の感想ではほぼ原作通りのストーリーが舞台で再現されているようです。劇開始後に照明について言及があり、物語終了後に、ろうそくしかなかった時代は暗い中での生活が一般的で、そういう環境で独自の発展を遂げる文化があるとの解説があり、それが「陰翳礼讃」のエッセンスを舞台に持ち込んだということなのでしょう。春琴と佐助の関係もそういう環境も荷担して発展したのか?と思わせる構成でした。

俳優は全てマイクを使っていましたが、今時普通なんでしょうか。
舞台演出は結構感心した点で、速いテンポで次々場面を転換していく様はなかなかよく考えられていて小気味良さを感じます。観客の想像力に頼りながら棒一本でいろいろな舞台装置を表現する手法はかなり日本的で、この演出家は日本文化をすっかり吸収したかのようです。果たしてイギリス人観客に理解されたのかどうか分かりませんが、私は物語に没頭でき、舞台を楽しむことが出来ました。
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by dognorah | 2009-02-04 22:03 | 観劇

ロンドンで京劇「滑油山」を見る

Slippery Mountain
by Not So Loud Theatre Company

Director: Paddy Cunneen
Di Zhang Wang: Ghaffar Pourazar
Mulian: Eriko Shimada
Liu Qing Ti: Ming Lu
Attendants: Emilia Brodie, Peter Savizon, Charlie Tighe, Chie
Musisians: Joanna Qiu, Joe Townsend

c0057725_1284090.jpg先日ウイグモアホールでセルビア人ピアニストDorian Grinerのリサイタル(大変すばらしかった)を聴きに行ったときにインターヴァルで、ある日本人女性から現在ロンドンで京劇をやっているので見に来ないかと誘われた。彼女も出演しているとのこと。
それで4月9日に見に行ったが結構楽しめた。

場所は中華街にあるNew World Restaurantの2階。客はテーブルで食事しながら観劇できる。
俳優とスタッフはNot So Loud Theatre Companyというイギリス人中心の劇団の人たちで、それに中国人一人、日本人二人、イラン人一人が加わって公演された。楽団には胡弓を弾く中国人も一人いる。俳優の中国人、日本人一人、イラン人は京劇に入れ込んでいてしょっちゅう北京に勉強に行っているらしい。中国語をしゃべるのは中国人とイラン人だけで後の出演者は英語でフォローして観客に筋が分かるように工夫している。

話の筋は、仏教の教えに背いて罪を犯した女 Li Qing Ti が滑油山で一生修行することになっているのを僧侶として修行中の息子 Mulian が連れ戻しに行くというもので、下界から来たものを追い払う悪魔達を蹴散らしたものの師匠のDi Zhang Wangから許されずあきらめる。

悪魔達との戦いシーンは剣を両手で振りかざす日本人女性Chieさんと棒を一本扱うイラン人Ghaffar Pourazarによって舞われたが、さすがに北京で習ってきただけのことはある迫力あるもので全編の白眉だった。このシーンがあってこそ京劇というものだ(私は京劇は見たことがないが、南京で似たようなものである越劇というのを見たことがある)。。日本人女性の両手による剣捌きが特に見事である。二人の呼吸もぴったりと合っていて京劇の様式美を垣間見ることができた。バックの音楽もすばらしかった。公演は3月18日から始まっており、この週末の4月13日で終わる。

終演後、日本人出演者の方々と話したが、Chieさんが京劇に入れ込んでいる方で、Shimadaさんは西洋オペラをやるソプラノである。またイラン人はもともとIT技術者だったのが京劇に取り憑かれて頻繁に中国に行くようになったとのこと。
ロンドンで公演することになった経緯は聞き損なったが、日本の能と同じように誰か熱心にぜひロンドンで紹介したいとプロモートした方がいたのとNot So Loudのように地元で協力してくれる人たちが見つかったことで実現したのだろうが、関係者の努力に賛辞を贈りたい。
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by dognorah | 2008-04-11 01:35 | 観劇

歌舞伎パリ公演

2007年3月25日、パリオペラ座(ガルニエ)にて。

市川海老蔵(11代目)と市川亀次郎(2代目)は昨年6月にロンドンで公演していますが、今回は海老蔵の父である團十郎(12代目)を始め多くのメンバーを揃えてのパリ公演です。会場に着いて驚いたのは着物を着た女性がものすごく多く、恐らく日本から駆けつけたファンに相違ありません。インターネットでこの公演の切符が発売と同時に売り切れたのは日本からのアクセスのせいであったとは。観客も4割ぐらいは日本人と思われます。その割には会場からの掛声が少なかったのは歌舞伎ファンというより海老蔵ファンだからでしょう。ロンドンでは複数のイギリス人が「ナリタヤ!」と叫んでいたのとは大違いで、フランス人で声を出した人は皆無と思われます。モルティエ総裁の依頼で実現した公演の割にはパリではあまり歌舞伎ファンはいないようです。なお、舞台はロンドンと違って花道は造られず、代わりに客席中央通路に舞台から行けるようにしてそれを花道代わりに使っていました。

演目
(1)勧進帳
武蔵坊弁慶:市川海老蔵
九郎判官源義経:市川亀治朗
富樫左衛門:市川團十郎
常陸坊海尊:市川團四郎

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さすがに成田屋歌舞伎十八番の一つ、とても楽しめました。上の写真は弁慶の六尺棒と富樫の刀があわや火花を散らすかというクライマックスですが様式的にも美しく、歌舞伎ってすばらしい芸術だなぁと感心させられる場面です。市川親子の仕草は見事でした。下の写真は殴ってしまった義経に詫びを入れる弁慶。体格がいいこともあって海老蔵の弁慶はなかなか見応えがあります。以前から見たいと思っていたこの演目をこのようなすばらしい役者で見ることが出来て幸せです。
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(2)口上
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主立った出演者が上の写真のように正装してずらっと並び、観客相手に一人一人が挨拶するものです。9人並んでいますが、約1名を除き全員がフランス語で挨拶したのは立派。それも結構長い台詞で、フランス人観客にとても受けていました。しかしちゃんと字幕も出るので、口上だけだとどの程度通じたかは謎ですが。下の写真は長々とフランス語をしゃべりまくった團十郎です。
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(3)紅葉狩り
更科姫(後に戸隠山の悪霊):市川海老蔵
平維茂(たいらのこれもち):市川團十郎
山の神:市川亀治朗

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海老蔵は弁慶という偉丈夫を演じた後は一転して美女役、そして悪霊の役と芸達者なところを遺憾なく見せてくれます。上の写真は将軍、平維茂の前で挨拶する更科姫の場面。このあと次の写真のように悪霊に変化します。ここでも團十郎との立ち回りのコンビはすばらしい。舞台装置も衣装も美しく、舞踊と荒事の両方を堪能できるおもしろい演目と思いました。
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最後の写真はカーテンコールで勢揃いした主な出演者たちです。
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3月28日にフランス政府から團十郎と海老蔵に対してChevalier dans l'Ordre des Arts et des lettreという勲章が贈られたそうです。團十郎に対してCommandeur、海老蔵にはChevalierという格のものが授与されました。

今回の公演は昨年のロンドン公演より遙かに力が入ったもので、次回はロンドンでもちょっと大がかりな演しものを期待したいところです。
私は切符を入手できなかったのですが、sottovoceさんから1枚譲っていただき、このすばらしい公演をよい席で見ることが出来ました。またまた感謝です。
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by dognorah | 2007-03-29 19:41 | 観劇