カテゴリ:オペラ( 364 )

ピーター・ブルックの魔笛

2011年3月24日、バービカン劇場にて。

C.I.C.T. / Théâtre des Bouffes du Nord
A Magic Flute
By Wolfgang Amadeus Mozart
Freely adapted by Peter Brook, Franck Krawczyk and Marie-Hélène Estienne
Directed by Peter Brook
Lighting Design by Philippe Vialatte

Singers (alternately with): Dima Bawab, Malia Bendi-Merad, Leila Benhamza, Luc Bertin-Hugault, Patrick Bolleire, Jean-Christophe Born, Raphaël Brémard, Thomas Dolié, Antonio Figueroa, Virgile Frannais, Betsabée Haas, Matthew Morris, Agnieszka Slawinska, Adrian Strooper, Jeanne Zaeppfel
Actors William Nadylam, Abdou Ouologuem

Co-produced by C.I.C.T / Théâtre des Bouffes du Nord; Barbican, London; Festival d'Automne à Paris; Attiki Cultural Society, Athens; Musikfest, Bremen; Théâtre de Caen; MC2, Grenoble; Grand Théâtre de Luxembourg; Piccolo Teatro di Milano - Teatro d'Europa; Lincoln Center Festival, New York.
Executive Producer: C.I.C.T. / Théâtre des Bouffes du Nord

ピーター・ブルックの演出といえばずっと前に東京で「カルメンの悲劇」を見たことがありますが、今回の「魔笛」もそれと同様に原作をベースにしているものの内容を自由に変えてかなり別物にしています。題名も原作ではDie Zauberflöteと定冠詞がついていますが、今回のものは不定冠詞になっています。
公演は、台詞はフランス語で歌の部分は元通りドイツ語で、英語字幕付きです。登場人物は夜の女王の3人の侍女、3人の少年、ツァラストロの寺院の弁者(代わりにツァラストロが演じる)、多くの僧侶たちなどが省略されています。パパゲーノは鳥を捕まえるのではなく女を狩る仕事というか趣味にしていることになっています(今までのところ成果はゼロという設定ですが)。音楽はピアノだけで、パパゲーノが持たされる楽器は小さなトライアングル。序曲など当然カットですが肝心の部分は大略原作通りのものがピアノで演奏されます。アリアは例えば夜の女王のものは後半に一回歌われるだけです。
最初にタミーノを追いかけ回す大蛇役は全編を通して出演する俳優で、一種の狂言回し的な振る舞いをし、この劇ではかなり重要な役です。パミーノタミーノもパパゲーノも彼に仕切られている印象が強いです。
舞台はとてもシンプルで、多くの竹の棒に台座をつけて並べてあるだけ。役者たちが場面に応じてそれを動かしてシーンを作っていきます。出演者もまあごく普通の服装で、費用はミニマムでしょう。
出演者たちのやりとりは観客を笑わせる部分が多くて喜劇としてよくまとまっており、歌手もすべてレヴェルの高い歌唱だったし、全体としてはとても楽しめる出来だったのはさすがです。ストーリーとしては後半モノスタトスが夜の女王側に寝返った後彼女を寺院に侵入させたところ、ツァラストロが現れてばれてしまう場面で終わり。そして最後に思いつき程度と思われるオチがあるのですが、件の大蛇役が全員横一列に並んでいる前面に出てきて、腕をくねくねさせたかと思うと空中から魔笛を取り出し、暫くいじった後さっとそれを消してしまうのです。はい、マジック・フルートでござい、ということでしょう。

写真は終了後の舞台。左から、ピアニスト、パパゲーノ、各種雑用係、大蛇、モノスタトス、タミーノ、パミーナ、ツァラストロ。パパゲーナ役は画面からはみ出してしまいました。
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by dognorah | 2011-03-26 03:04 | オペラ

マクヴィカーの「アイーダ」はやっぱりすばらしい

2011年3月11日、ROHにて。

Aida: Opera in four acts
Music: Giuseppe Verdi
Libretto: Antonio Ghislanzoni

Director: David McVicar
Conductor: Fabio Luisi

Aida: Liudmyla Monastyrska
Radames: Roberto Alagna
Amneris: Olga Borodina
Amonasro: Michael Volle
Ramfis: Vitalij Kowaljow
King of Egypt: Brindley Sherratt
High Priestess: Madeleine Pierard
Messenger: Steven Ebel

昨年4月以来の再演です。出演者はすべて昨年とは違っていますが、今年の方が遙かにいいです。
まずタイトルロールですが、昨年と同じミカエラ・カローシの予定だったものが、リハーサルが済んでから妊娠を理由に降板(随分不自然ですね)して、ウクライナ人のリュドミラ・モナスティルスカに変わったのでした。この人は5月から6月にかけて再演される「マクベス」に夫人役として出演する予定の人だったのですが、一足早くROHデビューとなりました。上記の事情でリハーサルには出ていないのでこの日が観客の前で歌う初日になりました。そのせいか第1幕は緊張したのでしょうあまりよくなかったです。ごく普通のソプラノさんという感じで、声があまり出ていませんでした。アリア「勝ちて帰れ」も拍手はぱらぱら程度。ところが第2幕になると俄然声が出るようになり、そのまま最後まで好調な歌唱で、この声なら昨年のカローシよりずっといいです。アムネリスを歌ったボロディナと体格はほぼ同じで恋敵同士が太太コンビとなるのがちょっとなんですが。

そのボロディナも第1幕からいつもの通り快調に歌っていました。髪型も含めて昨年より顔のメークがまともになっているのは歓迎です。昨年はちょっとひどかったですから。

ラダメスを歌ったアラーニャもこのところの快調を維持していて、昨年のアルバレスとは大違い、すべてのアリアを気持ちよく聴けました。

国王もランフィスもなかなかしっかりした歌唱で文句なし。脇役陣で凄かったのがアモナスロを歌ったミチャエル・フォレで、こんなに完璧な歌唱は聴いたことがなく、私の経験した過去最高のアモナスロでした。

指揮のルイージはどこかで聴いたなと思ったら2008年4月にドレスデンで「リゴレット」を振った人でした。あのときと同様すばらしい指揮で、ためが十分にある指揮ぶりがこのオペラにとてもよく合っています。ただ、オケの音に関しては昨年のルイゾッティの方がよかった。昨年のAmphitheatreと違ってオケの真横の席だったからかも知れません。

今回は舞台近くで見たのですが、マクヴィカーの演出やFin WalkerのChoreographyもより細かく見えて更によく理解できました。全くゆるみのない、目をそらさせない舞台は本当にすばらしく、改めて感心しました。

カーテンコールの写真
Borodina, Alagna, Monastyrska, Volle and Sherratt
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Liudmyla Monastyrska
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Roberto Alagna
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Olga Borodina
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Fabio Luisi
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by dognorah | 2011-03-13 08:19 | オペラ

ロイヤルオペラハウスの新作オペラ「アナ・ニコール」

2011年3月1日、ROHにて。

Anna Nicole: Opera in two acts
Music: Mark-Anthony Turnage
Libretto: Richard Thomas
Director: Richard Jones
Conductor: Antonio Pappano

Anna Nicole: Eva-Maria Westbroek
Old Man Marshall: Alan Oke
The Lawyer Stern: Gerald Finley
Virgie: Susan Bickley
Cousin Shelley: Loré Lixenberg
Larry King: Peter Hoare
Aunt Kay: Rebecca de Pont Davies
Older Daniel: Dominic Rowntree
Blossom: Allison Cook
Doctor: Andrew Rees
Billy: Grant Doyle
Mayor: Wynne Evans
Runner: ZhengZhong Zhou
Daddy Hogan: Jeremy White
Gentleman: Dominic Peckham
Trucker: Jeffrey Lloyd-Roberts
Deputy Mayor: Damian Thantrey
その他大勢

ROHの委嘱作品。プレイボーイ誌でモデルをしていたAnna Nicole Smithの生涯をオペラ化したものらしい。コメディ調で書かれている。
音楽はなかなかよくできていると思うけれど、オペラとしてはあまり感心しない。エンターテインメント要素が強く、ウエストエンドのミュージカルとしてならかなり楽しめる作品だろう。
上の配役陣を見てもわかる通り、登場人物がやけに多く、もう少し整理してもらいたいものだ。
主役のエファ=マリア・ウェストブルックは好演で、ほとんど出ずっぱりで喉の負担は相当なものだろうが最後までへたれなかった。ただ、脂肪が付き放題のおなかや腰回りのシェイプをホットパンツやTシャツであられもなく披露するのはどうもねぇ。よくやるよという感じ。
歌手は主役を含めすべてよかったけれど、通常のオペラと違って特に高音や難しいテクニックは必要なさそうな印象だったので歌手にとっては楽勝かも。パッパーノは例によってぶつぶつ声を出しながらかなりのめり込んだ指揮で、力を入れているのがよくわかった。
台詞は中身はたいしたことは言っていないもののやたら多くて、非英語圏の人には聞き取りが難しいし、長くて早く変わる字幕を読むのが一苦労。
新作オペラということで当初は切符の売れ行きが悪く、途中で平土間70ポンドの席を10ポンドで学生に叩き売ったおかげですべて満席の盛況。それもあってか客層はいつもと違って若い人たちが多かった。プロダクションとしてはかなりお金をかけており、いつもの伝統的な緞帳を取り外してすべてこのオペラ専用のものを作っていたし、会場のあちこちに主人公の顔を貼り付けたりと、ポップな雰囲気を精一杯演出していた。
これは再演されるかも知れないけれど、多分私はもう行かないだろう。

Eva-Maria Westbroek
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Gerald Finley、左側はお母さん役Susan Bickley。フィンリーは歯を真っ白にする何かをつけており、ひょうきんな顔に仕上げていた。
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ウェストブルックの隣が作曲家のMark-Anthony Turnage
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by dognorah | 2011-03-04 02:47 | オペラ

オペラ「蝶々夫人」公演

2011年2月27日、RAHにて。

Cio-Cio San - Mihoko Kinoshita, Jee Hyun Lim and Asako Tamura
Pinkerton - Philip O’Brien, James Edwards and Robyn Lyn Evans
Suzuki - Nina Yoshida Nelsen and Marcia Bellamy
Sharpless - Louis Otey and Richard Morrison
The Bonze - Simon Kirkbride
Goro - Aled Hall
Prince Yamadori - Seungwook Seong
Kate Pinkerton - Miranda Westcott
Imperial Commissioner - Freddie Tong
Official Registrar - Owen Gilhooly
Uncle Yakuside - Gareth Jones
Mother - Akiko Enomoto
Aunt - Eriko Shimada
Cousin - Georgia Ginsberg
Royal Philharmonic Orchestra
Conductors - Oliver Gooch and Gareth Hancock
Director - David Freeman

このプロダクションは4年前に友人が出演するというので見に行きましたが、今回はその友人に加えてブログで交流のあった田村麻子さんがタイトルロールで出演するという情報が入り、急遽日曜マチネーの公演に駆けつけました。
上記の出演者欄に記しているようにトリプルキャスト、ダブルキャストが組まれていて主催者側からは当日の歌手名も発表されないため他の歌手の名前はわかりませんが、4年前と同様歌唱演出とも大変楽しめる公演でした。
マイク使用とはいえ、目の前で田村麻子さんを聴くのは初めてでしたが、美しい声と歌唱もすばらしく、演技もしっかりで感嘆しました。やはり蝶々夫人の立ち居振る舞いは日本人でなくちゃ。
彼女の公演は2回だけで、次は3月6日のマチネーです。

終演後の写真はいつもの通り、クリックすると拡大します。
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by dognorah | 2011-03-02 23:03 | オペラ

リセウの新演出パルシファル

2011年2月20日、バルセロナ、リセウ劇場にて。
Gran Teatre del Liceu
Richard Wagner: Parsifal

Direcció musical : Michael Boder
Direcció d'escena : Claus Guth

Parsifal : Klaus Florian Vogt
Kundry : Anja Kampe
Gurnemanz : Hans-Peter König
Amfortas : Alan Held
Klingsor : JohnWegner
Titurel : Ante Jerkunica
Primera noia flor : Estefanra Perdomo
Segona noia flor / Primer escuder : Ana Puche
Tercera noia flor / Segon escuder : Ines Moraleda
Quarta noia flor : Beatriz Jimenez
Cinquena noia flor : Michelle Marie Cook
Sisena noia flor / Una veu : Nadine Weissmann
Primer cavaller : Vicenç Esteve Madrid
Segon cavaller : Kurt Gysen
Tercer escuder : Antonio Lozano
Quart escuder : Jordi Casanova
Ballarf : Paul Lorenger

パルシファルは過去3回(ROHヴィーンバイロイト)見ていますのでこれが4回目です。

今回の新演出はバイロイトのようなあまり奇をてらうものではないものの、通常とは違った解釈の部分もあってちょっとびっくりしました。例えば、ティトゥレルは通常の演出では居るのか居ないのかわからないくらいの小さな役作りのことが多いのですが、ここでは大変目立つ存在で、アンフォルタスにGrailの儀式を要請するところでは父親としての威厳が示されます。また、最後の場面では皆が新王パルシファルにひれ伏しているときにアンフォルタスが部屋の外に出ると、庭のベンチにクリングゾルが座っており、アンフォルタスを手招きして隣に座らせ、躊躇しながらもお互いに手を握り合うのです。思い起こせば、前奏曲演奏時に聴衆には誰が誰だかわからない状態で舞台の紗幕の向こうに3人の男がテーブルについて話し合っており、そのうちの二人が仲良くするともう一人の男が怒って椅子を蹴って退出する場面があり、仲良くしたのはティトゥレルとアンフォルタス、退出したのはクリングゾルだと後からわかります。まるで親族会議でティトゥレルが後継者にアンフォルタスを選んだのにクリングゾルが怒ったような設定です。幕が上がると場面設定は病院のようで、アンフォルタスや部下の軍人たちが病気やけがの治療を受けています。グルネマンツは牧師で彼らに説教したりしている風。なので、パルシファルも最後は軍服姿です。また第2幕の花の乙女たちのシーンに男性パートナーも付いているというのも変わっています。ここの場面はもっとエロティックにやってほしかった。クリングゾルは槍をパルシファルに向かって投げようとするところではパルシファルの精神力で金縛りに遭い、簡単に槍を取られてしまうのも変わっていますね。だからクリングゾルは死なないわけです。
初日なのでカーテンコールでは演出家も出てきましたが盛大なブーを浴びていました。気に入らない人には我慢ならない演出だったんでしょう。私は新鮮で面白いと思いました。舞台装置もなかなかのもので回転舞台を使って4種類の場面を素早く切り替えていました。二階建ての建物自体もしっかりと作られています。

歌手ですが、すべて大変立派な歌唱でした。特にグルネマンツを歌ったハンス=ペーター・ケーニッヒは立派でした。過去に聴いた中では最高のグルネマンツです。この人は今まで数回聴いていますが、いつもよい印象を与えてくれる実力バスですね。
題名役のクラウス・フローリアン・フォークトも彼独特の透き通るような声がよく出ていて満足です。
アンヤ・カンペのクンドリーもすばらしい歌唱と演技で、第2幕では色気もちゃんと出ていました。
アンフォルタスを歌ったアラン・ヘルトは以前Promsの「神々の黄昏」で立派なグンター役を聴いたことがありますが、今回も満足すべき歌唱で大満足です。
クリングゾル役もまあまあ、ティトゥレル役も十分な歌唱でした。
合唱はかなり少人数で、第1幕のGrailの儀式ではやや迫力不足と感じました。儀式の最中に場面転換する演出のせいもあって他の劇場では感じた感動がここでは希薄なのはちょっと残念ではあります。

指揮のミヒャエル・ボーダーはロンドンではヘンツェのオペラ「フェドラ」で聴いたことがあるだけですが、今回も不満のない出来で、オケからすばらしい音を引き出していました。テンポは中庸で完全に受け入れられるものです。前奏曲が始まってすぐにヴァーグナーの世界に入れました。

ということで一昨日の「アンナ・ボレナ」に引き続いてとても楽しめた公演でした。
なお、ここリセウでは第1幕終了後も普通に拍手していました。カーテンコールはなかったです。

ところで、「アンナ・ボレナ」は3階席に座り、今回は平戸間後方に座ったのですが、平戸間では前席の背もたれに字幕装置が取り付けられていて、カタルニア語、スペイン語、英語の3種類を切り替えて使えました。これは上の方の安い席にはなかったものです。4年前にここに来たときは舞台上方の字幕投影にカタルニア語とスペイン語だけが提供されていたのが今回はカタルニア語だけになっているところを見ると平戸間の3カ国切り替え字幕は最近つけられたのでしょう。もう少しすれば上方の席にもつけられる可能性もありそうですが、最近の経済情勢では難しいかも知れません。

第2幕終了後の舞台
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Anja Kampe & Klaus Florian Vogt
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第3幕終了後の舞台
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Klaus Florian Vogt
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Alan Held
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Hans-Peter König
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John Wegner & Anja Kampe
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Conductor, Michael Boder
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Stage Director, Claus Guth
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by dognorah | 2011-02-25 02:46 | オペラ

ドニゼッティのオペラ「アンナ・ボレナ」

2011年2月18日、バルセロナ、リセウ劇場にて。
At Gran Teatre del Liceu
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Anna Bolena by Gaetano Donizetti
Libretto: Felice Romani

Direcció musical : Andriy Yurkevych
Direcció d'escena : Rafel Duran

Enrico VIII : Simón Orfila (Calro Colombaraの代役)
Anna Bolena : Edita Gruberova
Giovanna Seymour : Elina Garanča
Lord Rochefort : Marc Pujol (Simón Orfilaの代役)
Lord Riccardo Percy : José Bros
Smeton : Sonia Prina
Sir Hervey : Jon Plazaola

今回のバルセロナ遠征は、ロンドンの椿姫さんやkametaro7さんなどオペラファンで構成されたグループ5人で行ったのでした。そのためオペラ以外の時間も楽しく過ごすことが出来、充実した旅になりました。

ドニゼッティの有名なオペラとして名前だけ知っていましたが、実際に舞台を見るのは今回が初めてです。そして噂通り、非常によくできた音楽で(ストーリーはあまりいいものではありませんが)確かにドニゼッティの最上級の傑作という印象を受けました。それはやはり歌手たちが揃ってすばらしかったことと、管弦楽も非常に優れた出来だったからでしょう。新演出も悪くはなかったですし。

歌手ですが、グルベローヴァもガランチャも絶好調でした。
グルベローヴァは昨年からの好調をしっかり維持していて、高音もとても美しいものでした。ガランチャとの二重唱Sul suo capo aggravi un Dioは非の打ち所もなく、すばらしい出来に長い拍手が続きました。あまりに長いのでグルベローヴァが舞台に再登場し、ガランチャにも手で合図して出てくるように促しましたが彼女は遠慮して出てきませんでした。第2幕の錯乱の場面で歌われるアリアChi può vederla a ciglio asciutto?とAl dolce guidami castel natìoの弱々しくも美しい襞のような表現は絶品で、涙が出てきます。こういう歌唱を聴けただけでもバルセロナまで来た甲斐があったというものです。

一方のガランチャも2006年に初めて聴いたガルニエでのセスト役以来かという位すばらしい歌唱で、姿形も美しく(同行した他の方々はちょっとふっくらしたとの感想だった)、今日はいつになく色気が感じられました。美しく深みのある彼女独特の声が朗々と響く声量の大きさにも改めて感心しました。

アンナの恋人役Lord Riccardo Percyを歌ったホセ・ブロスもいつものように素敵な声で私は大いに満足。ところが第2幕のアリアでちょっと盛り上げ方にしくじった小さな疵にブーが浴びせられてリセウの厳しい聴衆にびっくりしました。カーテンコールでもしつこくブーを飛ばす人がいて、本人も大変不機嫌でした。ブーするほどの不出来とも思えず、このバルセロナ出身のすばらしい歌手に何か恨みでもあるのかしらと訝ったぐらいです。

エンリコ8世を歌ったシモン・オルフィラはもともとLord Rochefortを歌うはずでしたが、カルロ・コロンバラが降りたために急遽エンリコ8世を歌うことになったのですが、Bキャストで最初からこの役を歌うことになっていたのでスムーズに代役をこなしていました。とてもよいバスで歌唱も堂々たるものでこの人にも満足しました。
スメトン役のソニア・プリナはロンドンで何度か聴いている人ですが、今日ももなかなかいい声が出ていて好ましいズボン役でした。アルトにしてはちょっと背丈が低いですが。

Lord Roshefortを代役で歌ったマーク・プジョルは第1幕ではあまりよくなく、一人凹んでいましたが第2幕では持ち直し、本来の実力を発揮したようです。それでも特段印象に残る声ではないですが。
ヘルヴェイ役のテノールも悪くはない声でした。

管弦楽がまたすばらしく、弦はとても美しい演奏です。指揮はアリアの部分では丁寧に歌手に合わせ、そうでない部分は緩急自在に演奏してドラマを盛り上げるツボを心得たもので、若い人ながらなかなか優れた指揮者です。

演出は一部ヴィデオを使ったりしてちょっと意味不明の部分もありましたが、全体としてはまあよくできた方でしょう。服装は現代物で、最初から最後まで舞台にはカラスの頭をかぶった男女がたくさん出てきて、合唱隊に混じったり、セットの家具を運ぶ役をやったり大活躍。友人も言っていましたがロンドン塔を暗示するものでしょうか。舞台は階段を多用するものの(時には3階建てにもなる)シンプルなもので場面転換もスムーズ、機能的なものでした。

カーテンコールではグルベローヴァ登場の時に上方から色とりどりのビラがたくさん降ってきました。最前列に座っていたkametaro7さんが拾って後で見せてくれましたが、グルベローヴァ出演の最終日に合わせて「また来てくれてありがとう、エディータ」という文章と彼女の写真が印刷されたものでした。仲間の皆さんに誘われて出待ちをしてその紙に彼女のサインをもらいました。ガランチャのサインはキャスト表にしてもらいました。大勢が取り囲むので彼らと話をすることが出来なかったのが心残りです。ガランチャには何で今夏のバーデンバーデンをキャンセルしたんだ?と問い詰めたかったのですが。

Edita Gruberova
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ビラに驚くグルベローヴァ
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ビラを掲げて
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Elina Garanča
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José Bros
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Marc Pujol, Simón Orfila and Elina Garanča
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by dognorah | 2011-02-23 23:43 | オペラ

モーツァルトの「魔笛」

2011年2月1日、ROHにて。

Die Zauberflöte: Singspiel in two acts
Music Wolfgang Amadeus Mozart
Libretto: Emanuel Schinkaneder

Conductor: Colin Davis
Director: David McVicar

Tamino: Joseph Kaiser
Pamina: Kate Royal
Papageno: Christopher Maltman
Papagena: Anna Devin
Queen of the Night: Jessica Pratt
Monostatos: Peter Hoare
Sarastro: Franz-Josef Selig
First Lady: Elisabeth Meister
Second Lady: Kai Rüütel
Third Lady: Gaynor Keeble
Speaker of the Temple: Matthew Best
First Priest: Harry Nicoll
Second Priest: Donald Maxwell
First Man in Armour: Stephen Rooke
Second Man in Armour: Lukas Jakobski

このプロダクションはちょうど3年振りに3度目の鑑賞です。

今回も歌手には大変満足しました。筆頭はザラストロを歌ったフランツ=ヨーゼフ・ゼーリッヒで、プレミエ時以来の登場ですが、本当に立派な歌唱でした。今まで「ラインの黄金」のFasolt役や「トリスタンとイゾルデ」のマルケ王など何度か聴いてきましたが、今回一番感心しました。

タミーノを歌ったカナダ人ジョゼフ・カイザーもすばらしいテノールで、背が高くてハンサムなのもこの役にはぴったりです。過去には「サロメ」のNaraboth役という端役で聴いたことがあり、そのときも美声に感心しましたが、これからもどんどん使ってほしい人です。

パミーナを歌ったケイト・ロイヤルも役にふさわしい容姿と若々しさが感じられる涼やかな声を持っており、彼女の歌唱もとても楽しめました。

パパゲーノを歌ったクリストファー・モルトマンも立派な歌唱で、特に低音部が美しい声でした。ただ演技的にはキーンリーサイドの敏捷な演技が頭にあるせいかちょっとモタモタという印象でした。

夜の女王を歌ったジェシカ・プラットはやや太めのソプラノですが、第一幕ではちょっと歌唱のスムーズさに欠ける嫌いがありました。しかし第2幕では本来の実力発揮というところでしょうか、例の高音も伸びやかに出てすばらしいアリアでした。

指揮はプレミエの時と同じコリン・デイヴィス、ちょっと管弦楽だけの部分はテンポが遅めでしたがオケは柔らかくて美しい音でさすがの出来です。ただ、指揮台の彼を見て(オケピットの横の席でしたからよく見えました)、今までより年を取ったなぁという印象を受けました。

舞台ですが、今回はやけに煙モクモクが目立ち、かすんでよく見えない場合が多くてかなり不愉快でした。演出を見るのはこれで3回目なのに以前のことはよく覚えていませんが、こんなに煙りいっぱいという印象はなかった。Revival Directorの名前が載っているので、その人がやったのかも知れません。煙を多用する舞台は大嫌いです。

Jessica Pratt, Joseph Kaiser, Kate Royal and Colin Davis
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Joseph Kaiser, Kate Royal, Christopher Maltman and Franz-Josef Selig
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Franz-Josef Selig as Sarastro
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Three Ladies
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Anna Devin as Papagena
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by dognorah | 2011-02-07 01:19 | オペラ

ヘンデルのオペラ「アルチーナ」の映像

11月にヴィーンで見たヘンデルのオペラ「アルチーナ」はオーストリアの放送局からTV放送されたそうですが、ヴィーンに住む方からそのヴィデオが今でもネットで見ることができるということを教えていただきました。ここです。画面の真ん中をクリックすると再生が始まりますが、その再生されている映像の左下のボタン(Hoehere Viedeoquaritaet)で高画質に、右下のボタン(Video als Vollbild)でフルスクリーンになります。

この録画日は残念ながら日本人のShintaro君は出演しておらず、別の人(オーストリア人)が歌っています。なお、これを元にしてDVDが発売されるそうです(いつかは知りませんが)。
この映像、いつまで見れるか不明ですので興味ある方は早めにアクセスした方がいいでしょう。
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by dognorah | 2011-01-20 03:06 | オペラ

タンホイザー

2010年12月11日、ROHにて。

Tannhäuser: Grosse romantische Oper in three acts (1875 version)
Music and libretto: Richard Wagner

Conductor: Semyon Bychkov
Director: Tim Albery

Tannhäuser: Johan Botha
Elisabeth: Eva-Maria Westbroek
Venus: Michaela Schuster
Wolfram von Eschinbach: Christian Gerhaher
Herrmann, Landgrave of Thuringia: Christof Fischesser
Biterolf: Clive Bayley
Walter: Timothy Robinson
Heinrich: Steven Ebel
Reinmar: Jeremy White
Shepherd Boy: Alexander Lee

コヴェントガーデンでは1987年以来のタンホイザー上演で、当然新演出です。
序曲に続いて演奏されるバッカナールでは舞台奥にROHの舞台を小型にしてコピーしたもの(カーテンまで同じ)が現れてそれがヴェーヌスベルクだというわけです。そのカーテンが開くたびにヴェーヌスや配下の女性たちが現れてタンホイザーや他の男性を誘惑します。そしてヴェーヌス配下の女性たちを中心に激しい運動量で振り付けられた少々エロティックなダンスが踊られますが、スピード感溢れるもので舞台を凝視させられます。 なかなか面白い趣向です。インターヴァルにロビーにいるとイギリス人男性たちが感想を言いあっていて「これがドイツだったらきっとダンサーは裸だったろうに」と悔しそうなコメントをしていた人がいた。激しく同意。
第1幕最後ではヴェーヌスベルク部分がプールのような形で陥没し、タンホイザーの前に牧童が現れますがこの牧童はよく使われるソプラノではなく本当の少年が歌います。この少年は第3幕でも登場して法王の杖に生える若芽を象徴する苗木を植えるのですが。
第2幕ではそのROHの舞台が廃墟のように瓦礫となっている状態でそれが歌のコンテストを行うホールというわけです。尤も、テューリンゲンという王国は他の国と戦争している状態なのでいろいろ破壊されたという設定はあまり無理がないかも知れません。
第3幕では第1幕幕最後のような陥没した舞台中央に再びヴェーヌスがベッドの上に寝転がった状態でせり上がってきますがエリーザベトの葬列が登場すると平らな地面と入れ替わります。
全幕を通して舞台を囲むように黒い幕が張られていて、ヴェーヌスベルク以外はほとんど色彩はありません。衣装などは現代の設定です。あまり派手な舞台ではないものの、結構説得力があり、私には特に不満はありませんでした。演出的にも割とよくできていると思います。

歌手ですが、久しぶりの新演出に張り切っていい歌手を集めた印象で、すべてすばらしい出来でした。特にタイトルロールのヨハン・ボータには脱帽最敬礼です。完璧な歌唱だったと思います。こういう凄い歌唱を聴くと2008年6月に見たドレスデンの公演でのロバート・ギャンビルなど何だったんだろうと思わせられます。レヴェルが違いすぎます。
エリーザベト役のエファ=マリア・ウエストブルックとヴェーヌス役のミヒャエラ・シュスターもともにすばらしい歌唱で大満足です。
ROHデビューのクリスチャン・ゲルハーハーも声量こそ控えめながら美しいバリトンで切々と歌う様はとても印象的です。
テューリンゲン領主役のクリストフ・フィシェッサーも十分満足できるバスでした。

管弦楽がまたすばらしく、またまたセミヨン・ビチコフのヴァーグナーに感心させられました。滔々と流れる密度の濃い音楽で、ビチコフが各幕で登場するたびに歓声が上がりましたが第3幕ではオケまで拍手して彼の指示にもかかわらず立とうとしなかったくらいです。 このビチコフがカーテンコールで登場したらオケをねぎらう前にまっすぐにボータのところに来て彼を讃えていました(下の写真参照)。

カーテンコールの写真(クリックで拡大)
Johan Botha
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Eva-Maria Westbroek
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Michaela Schuster talking with Christof Fischesser
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Christian Gerhaher
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両手に花のヨハン・ボータ
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ボータを讃えるビチコフ
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Director: Tim Albery
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by dognorah | 2010-12-14 02:32 | オペラ

プッチーニのオペラ「マノン・レスコー」

2010年11月27日、ヴィーン国立歌劇場にて。

Manon Lescaut
|Giacomo Puccini
•Philippe Auguin | Dirigent
•Robert Carsen | Regie
•Antony McDonald | Ausstattung
•Ian Burton | Dramaturgie
•Philippe Giraudeau | Choreographie

•Olga Guryakova | Manon Lescaut
•Eijiro Kai | Lescaut,ihr Bruder,Sergeant
•José Cura | Chevalier René Des Grieux
•Sorin Coliban | Geronte de Ravoir
•Ho-yoon Chung | Edmondo
•Marcus Pelz | Wirt
•Dan Paul Dumitrescu | Sergeant

前日に続いてこれも面白い演出で、改めてロバート・カーセンの才能に感心しました。 現代読替で、最初の場面はショッピングモールです。 円弧状の通路になっているので奥は見えません。
両側にはショーウインドウが並び、マネキンに着せた婦人服が展示されています。 右側手前はホテルの入り口になっていて、到着した旅行客が入っていきます。 ショッピングモールでウインドーショッピングをしている婦人達は見栄えのする服装をした美人達で見るものを楽しませてくれます。このセットは基本的に第4幕まで変わらず、ショーウインドーのガラスの向こうの風景が変わるだけで、第2幕と第3幕はパリにあるジェロンテの高層アパートで大きなガラス窓の外にパリの現代風景が広がります。第1幕と第4幕はほぼ同じという経費節約型ですが、説得力はあります。
舞台装置はさておき、登場人物はかなり手を加えていてストーリーの辻褄合わせをしていますが全く違和感はありません。 ジェロンテとエドモンドは全幕に登場し、第4幕ではジェロンテがレスコーに買収された係員を射殺するというのも論理的です。 第2幕最後にジェロンテがマノンをソファーに押し倒してレイプするかのようなシーンも彼の憎しみとrevengeの思いを強烈に表現していて新鮮です。 アメリカ送りにされる女囚達はファッションモデルで第1幕のショーウインドーに飾ってあったドレスを着てキャットウォークをしたりという遊びも入っていて、第3幕の暗い場面があまり暗くなく楽しめるものになっています。 全体としてはとてもよく練れたお膳立てになっていて、こういう演出だと読替も全く気になりませんね。

歌手達ですがとても水準が高いものでした。 オルガ・グリャコワは昨年「チェレヴィチキ」で聴いて以来ですがまあ好調です。 ただ時折高音が金属的な響きになることがあり、それがちょっと気になりました。 顔も少し細くなったようですが、育児のせいかややお疲れという顔で、器量に少し翳りが見られたのは残念。
ホセ・クーラはやや顔の肉付きが増えた印象ですが声は絶好調で好ましい歌唱です。
甲斐栄次郎も立派なバリトンで、歌唱はすべてすばらしいものでした。 座付き歌手なので頻繁に登場するし、西洋人に比べると見栄えがあまりしないのが響いているのかカーテンコールでは拍手だけなのが残念。
ジェロンテ役のソリン・コリバンも文句なしのバスでした。

フィリップ・オーギンの指揮は大変劇的なもので、叙情的な部分との対比でグッと来るものです。 第3幕への間奏曲も大変美しい。

カーテンコールの写真
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Ho-yoon Chung and Eijiro Kai
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Sorin Coliban, Philippe Auguin and Olga Guryakova
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by dognorah | 2010-11-30 00:54 | オペラ