カテゴリ:オペラ( 364 )

スカラ座の音楽監督辞任

昨日のニュースで知ったが、リッカルド・ムーティ氏が18年間勤めたスカラ座の音楽監督を辞任した。スタッフに総すかんを食ったために決意したそうである。

今日のGuardian紙によると、オーケストラのメンバーでさえも彼に反旗を翻したのが決定的だったそうだ。理由はとにかくワンマンだったことという。

有名な舞台監督のゼッフィレッリ氏も、ミラノに独裁者はいらん、と痛烈に批判している。そんなに独裁者だったとは知らなかった。

彼は昨年10月にコベントガーデンでLa Forza del Destino(運命の力)を振るはずであった。プロダクションもスカラ座との共同制作であったし、私はムーティを非常に楽しみにしていた。

ところがである。直前になって彼はキャンセルしたのだ。理由は、スカラ座の舞台をほんのちょっと(これはコベントガーデンの表現)変えたのが気に食わないというのだ。この変更は、イギリスの法律で要求されている安全基準を満たすためであったに過ぎない。今からして思えば、スカラ座でもこういう細かさで接していたのだろう。

余談だが、このキャンセルのためにコベントガーデンの音楽監督であるパッパーノ氏はどれだけ苦労したことか。アメリカかどこかでオーケストラを客演指揮することになっていたのをキャンセルして大急ぎでロンドンに戻り、短時間で稽古をつけて上演にこぎつけたのだ。上演は上出来だった。いつもだったら序曲の後はちょっとだけ拍手のところ、事情を知る我々は割れんばかりの拍手喝采で彼をねぎらった。序曲そのものもすごく力の入った演奏ではあったが。

さて、ムーティ氏はこれからどうするであろうか。当分はオケの客演指揮かしら。
上記の事件にもかかわらず、私は彼の指揮は好きだ。ロンドンでは何度か聴いたことがあるがいつも感心させられた記憶がある。だからこそ「運命の力」をぜひ聴きたかったのだ。今年の誕生日が来れば64歳ということだから、指揮者としてはまだまだ活躍できる若さだ。メジャーなところで今後もバリバリ活躍してもらいたいものだ。
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by dognorah | 2005-04-04 03:35 | オペラ

ロイヤルオペラのBBCライブ放送

今日は私が先日見たワーグナーのオペラ「ワルキューレ」のBBC中継放送が予定されていた。

しかし放送されたのは第1幕だけ。なんと、第2幕以降に出る予定のヴォータン役Bryn Terfelが急病で出演不可能となったためだという。

私が経験した「ラインの黄金」での口パクより程度が悪い。経験した限りでは初めてのことだが、なんとも高価な病気だ。第2幕と第3幕は後日公演されるとのことだが、他の配役やスタッフ、観客、BBCがすべて影響を蒙ることになる。どういう契約になっているのかはわからないが、後始末は厄介なことだろう。

単なる肉体的な不調なら時間をかけて完治してもらえばいいが、もし重圧から来る精神的なことが原因なら、ちょっと事態は深刻。そうでないことを祈る。
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by dognorah | 2005-03-29 06:20 | オペラ

ワーグナーのオペラ「ニーベルンクの指輪」 -第2部「ヴァルキューレ」

見てきました。午後5時開演で10時半終了の長丁場である。コベントガーデンは、普通は7時半始まりであるが、上演時間が長くかかるものでも遅くとも10時半には終了することになっているらしく、そこから逆算して開演時間を決める。途中、休憩時間は30分+65分で、2回目の休憩時に食事が取りやすくなっている。私は開演前に軽く食べていたので近所のパブへ行ってラガーを1パイン飲んでスタミナを補給しただけだが。

今日の主な配役は、
 ブリュンヒルデ: Lisa Gasteen
 ヴォータン: Bryn Terfel
 ジークムント: Jorma Silvasti
 ジークリンデ: Katarina Dalayman
 フリッカ: Rosalind Plowright
 フンディング: Stephen Milling

歌手たちの出来はすべて高水準で、終演後の拍手と歓声はいつになく大きく長かった。Terfelも今日はいつもの好調さで声量のあるバスが心地よい。期待のGasteenは相変わらずの張りのあるしかも豊かな声だがイゾルデのときほど滑らかではなく、高音部が時折金属的な響きになっていたように思うが気にするほどではない。しかし、よくこれだけ水準の高い歌手が揃ったこと。

オケも前回同様気合の入った演奏で、パッパーノはあまり強弱を際立たせないが、メロディーの歌わせ方はほんとに美しくさせる。

舞台だが、今回はあまり印象的ではなかった。太い金属の螺旋をオブジェとして舞台中央に配してモダンな感じを出しているが、第1幕と第2幕が基本的に同じだし、舞台はもう少しゴタゴタ的印象を少なくして欲しい。

第3幕もちょっと煙を使いすぎでうっとうしく、構成も好きじゃない。この場面でももっと太い螺旋があり、これはいい感じである。ただ、その螺旋の中央に大きなついたてみたいなものがあってぐるぐる回転するのはあまりいただけない。

最後にブリュンヒルデを取り巻く炎はどういう風にするのかちょっと楽しみだったが、この金属螺旋の上を炎が走って全体がめらめらと燃える工夫は意外感もありなかなかのものであった。

ということで今日は音楽的には満足、舞台の作りにちょっと不満というところである。

この続きの「ジークフリート」と「神々のたそがれ」は2005-2006年のシーズンに上演されるのでしばらく間隔が開く。
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by dognorah | 2005-03-10 10:37 | オペラ

オペラの楽しみ -ワーグナーのニーベルンクの指輪-第1部ラインの黄金

先般コベントガーデンのRoyal Opera Houseにてこのオペラを鑑賞した。バイロイトと違ってここでは1年かけて「ニーベルンクの指輪」4部作を上演する。今回はその第1部であり私は非常に楽しみにしていた。

ところが当日はハプニングがあり、主役ともいうべきWotanの役をするBryn Terfelが風邪を引いて声が出なくなってしまった。オペラ開始時に係りの人が舞台に出てきてこの事実を告げたとき、観客席からは失望のため息がユニゾンで漏れた。劇場側は当日の朝ドイツにいたDonald McIntyreというベテランのWotan役に連絡を取り、急遽ロンドンに来てもらうことにした。当日は強風でフライトが遅れ、到着した空港もロンドンから最も遠いGatwickであったが何とか開演時間は遅らせずにすんだ。しかしそういう状況だから舞台で演技できるわけがなく、彼はオーケストラピットの中で歌うだけで、舞台上では声の出ないBryn Terfelが口パクをやるという苦肉の策が取られることに。その説明が進行する間、観客席からは、McIntyre代役のニュースに拍手、ピットで歌うことに再び失望、Terfelの口パク出演に笑いと拍手で何とかこのアレンジを受け入れた。

悪いことにその日が最終公演でBBCがTVカメラを持ち込んで録画する予定であった。それより以前の公演日にも録画取りをしていたなら問題ないけど、この日だけだとどうする気だろうとちょっと心配になった。ピットで歌う歌唱は観客には迫力がなかったけど、録音ではレベル調整ができるからあるいはそのまま放送するかもしれない。まだ放送する日が発表されていないがぜひ結果を確かめてみたいものだ。

さて前置きが長くなったが、オペラそのものはWotanの迫力不足を除き見事なできばえだった。音楽監督で今回の指揮者でもあるAntonio Pappanoも任期中の一大イベントだからさぞ張り切っていたことだろう。構成ががっちりしながらもしなやかな演奏だった。主な出演者は次のとおり。
Wotan: Bryn Terfel (Donald McIntyre)
Albelich: Gunter von Kannen
Fricka: Rosalind Plowright
Freia: Emily Magee
Fasolt: Franz-Josef Selig
Fafner: Phillip Ens
Loge: Philip Langridge

舞台構成はフローレンスのMaggio Musicale原作らしいが実によくできている。2時間半の公演を休憩時間なしにぶっ通しでやれるのはこのオペラ劇場の優れたメカニズムによるもの。ウイーン国立劇場では円形舞台の4分の1だけが観客に向いており、場面転換はその舞台をくるっと90度回転するだけでできる。ここロンドンでは、舞台全体が天井までせりあがることで下に用意した次の場面が現れる仕掛けになっているが、実に効果的にそのテクニックが使われ、目の前で実現される場面転換のスマートさに観客は大満足である。
最近は欧州各地の歌劇場(時にはアメリカ)と提携して舞台を共同制作することで経費を節約する例が多いが、少ない予算で豪華な舞台が実現できるのでわれわれ観客にとっても歓迎すべきことである。

このオペラではラインの黄金を守る水の精たちが最初に登場するが、薄暗がりの中とはいえヌードで登場する。オペラに登場する人物は歌手と舞台俳優で構成されていて、今までは俳優たちが全裸になるシーンはたとえばリゴレットなどで見受けられたが、実際に歌ういわゆるオペラ歌手が裸になるのを見たのは今回がはじめてである。映画化されたオペラではそういう場面は何回か見ているが、おそらく世界的にそういう傾向なのであろう。ちなみに、今回の登場人物たちの衣装はかなり現代的で、おそらくこれは4部ともそういう方針で貫かれるのであろう。これも世界的にすべてのオペラでそういう傾向にあり、バイロイトの公演でもビデオで見る限りかなり前からそうなっている。

歌手たちは総じて十分楽しませてくれる水準にあり、これでBryn Terfelが万全な状態だったらどんなにかすばらしかったことだろう。彼はウエールズ出身のバスで歌のうまさと演技力を併せ持った逸材で安心してオペラに没頭させてくれる偉大な歌手である。ラインの黄金の前には昨夏グノー作曲のファウストでメフィスフェレス役を演じていたのを見たがAngela GheorghiuやRoberto Alagnaを圧するすばらしいパフォーマンスで終演後は私も他の観客とともにブラボーを連発した記憶がある。

来月はこれの第2部、Warkureの公演があるが、非常に楽しみである。Brunnhilde役には私が最高の賛辞を捧げているオーストラリアのソプラノLisa Gasteenが出演するので二重の楽しみである。そのときはまたここで報告しようと思っています。
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by dognorah | 2005-02-19 07:05 | オペラ