カテゴリ:オペラ( 364 )

カタラーニのオペラ「ラ・ワリー」

2011年8月5日、オペラ・ホランド・パークにて。

Alfredo Catalani: La Wally

Conductor Peter Robinson
Director Martin Lloyd-Evans
Designer Jamie Vartan
City of London Sinfonia

Wally: Gweneth-Ann Jeffers
Stromminger: Stephen Richardson
Afra: Heather Shipp
Walter: Alinka Kozari
Hagenbach: Adrian Dwyer
Gellner: Stephen Gadd
Il Pedone: Charles Johnston

あらすじ
オーストリアのチロル地方にある村が舞台。Strommingerの誕生日を記念して村の人たちが彼の家に集まり、射撃大会を催している。そこにHagenbachに率いられた別のグループが参加する。彼らは熊を射止めたHagenbachの射撃の腕を褒め称え、彼もそれを自慢げに吹聴することがStrommingerの癇に触り、それを揶揄することで二人の間に諍いが生じる。挙げ句の果てにHagenbachはStrommingerを侮辱して出て行く。しかしその様子を見ていたStrommingerの娘WallyはHagenbachに恋心を抱いてしまう。それを察した父は以前から彼女を愛しているGellnerと結婚することを命令する。彼女は彼と結婚するくらいなら家出した方がましだと言って出て行ってしまう。
父が死んだ後彼女は遺産を引き継ぎ、一人で豊かな生活を送っていたが、村祭りの時にHagenbachに会えることを期待してパブに行く。彼はそこにいたがすでにパブの女将Afraと婚約している。彼女は女将に言いがかりをつけてひどく侮辱するが、Hagenbachは逆に彼女とキスできるかどうか他の男たちと掛け、言葉巧みに彼女を誘ってキスを果たし、掛け金を得る。それはAfraのための仕返しだったことに腹を立て、WallyはGellnerをけしかけてHagenbachを殺させようとする。
しかし家に帰って冷静になった彼女は自分の行動を激しく反省する。そこにGellnerがやってきて、彼を襲って谷底に投げ入れたと報告する。パニックになった彼女は直ちに現場に駆けつけ、重傷のHagenbachを助け上げる。
月日が経ち、ひとりぼっちで自分に嫌気がさした彼女は雪の山の上の小屋に引きこもり、自殺を考える。そこに傷も癒えたHagenbachが現れ、麓に降りて祭りを楽しもうと誘う。一縷の希望がわいてきた彼女はそれに従うが、山を下りる途中に雪崩が起きてHagenbachはそれに飲まれる。それを見てすべての希望を失ったWallyは自身を谷底に投じる。
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アルフレード・カタラーニのオペラは初めて聴きました。今回の公演も歌手たちの歌唱や演技がなかなかのもので、初めて聴くカタラーニのこの音楽もすばらしくて大変楽しめました。
タイトルロールは太り気味の器量の冴えない黒人ソプラノで演技もあまり上手くないのですが歌はすばらしく、なるほどこれがあるから抜擢されたのかと納得する出来でした。
テノールのHagenbach役も負けず劣らずの美声だったし、バリトンのGellner役はテノールを食うぐらいの立派な歌唱でした。それもそのはず、つい先日の「トリスタンとイゾルデ」ですばらしいクルヴェナール役を歌った人ですから。父親役は歌もさることながら演技が大変上手く、感心しました。
他の女性歌手Afraとズボン役Walterはまあまあの歌唱。
ピーター・ロビンソン指揮のシティ・オヴ・ロンドン・シンフォニアは美しい演奏でカタラーニの良さを十分伝えてくれました。
舞台はテーブルや椅子以外はほぼ裸で、大きなキャンヴァス地の生地で雪や雪山を表現するというチープ路線ながらオペラの内容はそこそこ表現されていました。

今日はまあまあの温度で、前回のように寒い思いはせずに舞台を楽しめたのはよかった。

カーテンコールの写真。左からHeather Shipp、Stephen Richardson、Stephen Gadd、Gweneth-Ann Jeffers、Adrian Dwyer、Alinka Kozari。
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主役二人。
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by dognorah | 2011-08-10 08:10 | オペラ

ダルカンジェロのドン・ジョヴァンニ (コンサート形式)

2011年7月21日、バーデン・バーデンFestspielhausにて。

Wolfgang Amadeus Mozart: Don Giovanni KV 527

Yannick Nézet-Séguin: Musikalische Leitung
Diana Damrau: Donna Anna
Joyce DiDonato: Donna Elvira (エリーナ・ガランチャの代役)
Ildebrando D'Arcangelo: Don Giovanni
Luca Pisaroni: Leporello
Rolando Villazón: Don Ottavio
Mojca Erdmann: Zerlina
Konstantin Wolff: Masetto
Vitalij Kowaljow: Komtur (トーマス・クヴァストホフの代役)

Mahler Chamber Orchestra
Vocalensemble Rastatt

ダルカンジェロのドン・ジョヴァンニは2006年にコンサート形式で聴いており、今回もコンサート形式なのでオペラ舞台での演技はまだ見たことがないです。でも、今回も以前と同じく彼の歌唱にはしびれました。現代最高のドン・ジョヴァンニ歌いと言えるかも知れません。生粋のイタリア人だし。引き締まった声は艶があって魅力的で迫力も満点、各アリアのニュアンスの表現も言うことなしでした。最近モーツァルトのアリア集CDを出したそうですが、聴いてみたいですね。

レポレロ役のピサロニはちょっと真面目すぎてややこの役に合っていないという感じですが、声や歌は相変わらずよい印象を与えてくれます。

オッタヴィオ役のビリャソンはこの前のヴェルテルと同様まだセーヴ気味の歌唱ながら、まあまあ。本調子じゃないから仕方がありませんが、以前聴いたことのあるミチャエル・シャーデには及びませんね。

その他の男声陣では騎士長役はごく普通、マゼット役が一番印象が薄い歌唱でした。

女声陣ではドンナ・アンナ役のダムラウとドンナ・エルヴィーラ役のディドナートは秀逸。ダムラウは産後の肥立ちがよくて大変丸い顔だったので最初は誰かわかりませんでした。でもすばらしい声を聴いて彼女と認識できました。何とか元の体型に戻って欲しいものです。

ディドナートがまた全く隙のない凄い歌唱で、ガランチャでなくても十分満足できました。ドレスは孔雀かなにかの地模様の入った凝った生地で口紅もそのドレスと同じ色にして、おしゃれーという感じです。

ツェルリーナ役のモイカ・エルトマンは初めて聴く人ですが、同行したダルカンジェロファンの友人によると現在DGが一生懸命売り出し中の若い歌手だそうです。長身のスマートな体型で愛らしい顔をした人ですが、声はやや細くあまり声量はなさそうです。しかし、この役には悪くなく十分歌唱を楽しめました。背中丸出しのドレスがセクシーです。

以上、歌手の出来をABCでランク付けすると、
ダルカンジェロ: A+
ピサロニ:A
ビリャソン:A-
ヴォルフ:B
コヴァリョー:B+
ダムラウ: A+
ディドナート: A+
エルトマン:A-

ヤニック・ノゼ=セガン指揮するマーラー室内管もすばらしい演奏で歌手たちをしっかり下支えしていました。いい歌手にいいオケがあってこそ今夜の感動があったのでした。

余談ですが、8時から始まる演奏の数時間前に劇場の向かいにあるイタリアレストランで食事したのですが、私たちが席についてすぐにビリャソンが奥さんと子供たちを連れて入ってきました。友人がいち早く見つけて会いに行ったので私も追いかけて行って握手してもらいましたがとても気さくな人です。なおこのレストランは2年前に試してとてもおいしかったので今回も行ったのですが、相変わらずの味でとても満足しました。ハウスワインも安い割にとてもおいしい。


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by dognorah | 2011-07-28 05:54 | オペラ

コンサート形式の「ギョーム・テル(ウイリアム・テル)」

2011年7月16日、RAHにて。

Rossini: Guillaume Tell (concert staging; sung in French)

Michele Pertusi: Guillaume Tell ウイリアム・テル (バス、スイスの愛国者)
John Osborn: Arnold Melchthal アルノール・メルクタール (テノール、スイスの愛国者)
Matthew Rose: Walter Furst ヴァルター・フルスト(バス、スイスの愛国者)
Frédéric Caton: Melchthal メルクタール(バリトン、アルノールの父、村長)
Elena Xanthoudakis: Jemmy ジェミ(ソプラノ、テルの息子)
Malin Byström: Mathilde マティルデ(ソプラノ、ハプスブルク家の王女)
Nicolas Courjal: Gesler ジェスレル(バス、オーストリア人総督)
Carlo Bosi: Rodolphe ロドルフ(テノール、ジェスレルの警備隊長)
Celso Albelo: Ruodi リュオディ(テノール、漁師)
Mark Stone: Leuthold ルートルド(バリトン、羊飼い)
Davide Malvestio: Huntsman 狩人 (バリトン)
Patricia Bardon: Hedwige エドヴィージュ(メゾソプラノ、テルの妻)

Orchestra and Chorus of the Academy of Santa Cecilia, Rome
Antonio Pappano conductor

初めて聴く音楽にもかかわらず、大感激のすばらしい演奏でした。ロッシーニの最後のオペラだけあって、実によく練られたロッシーニらしい曲想がふんだんに使われたオペラです。リブレットがイタリア語ではなくフランス語だというのがちょっと奇異に感じられましたが、それを抜きにしてももっと頻繁に上演されるべきオペラだと思いました。そう思わせたのは出演者たちの達者な音楽のせいでしょう。パッパーノ指揮の管弦楽とコーラスは第一級の演奏、独奏者たちもすべて文句なしの歌唱で、さすがパッパーノ、満足すべき歌手たちを揃えていました。

タイトルロールのバリトン、ミケーレ・ペルトゥージは過去にヴィーン国立歌劇場で聴いたことがあって、そのときと同様非常に上出来の歌唱というわけではないにしても十分楽しめる歌唱でした。
ストーリーとしてはよく知られているように輝の息子の頭にのせたリンゴを矢で射るように強制されるなど悪代官ジェスレルとスイスの人たちとの戦いですが、オーストリア王女とスイスの若者の恋という挿入エピソードを絡めてオペラらしい筋になっています。その恋人たちを演じるテノールのジョン・オズボーンとソプラノのマーリン・ビストロームの歌唱がすばらしく、これによって本日の公演は非常にハイレヴェルになったと思います。

オズボーンは昨年のROHのコンサート形式「真珠採り」で初めて聴いて感心した人ですが今日も艶のある美しい声と朗々とした歌唱に酔いました。
ソプラノはスエーデン人で長身の美人ですが、深みのある豊かで美しい声と大きな声量に圧倒されました。来期のROH公演で「ファウスト」のマルゲリート役をゲオルギューとシェアして歌うことになっていて、私はリハーサル券を取っているのでひょっとしたら舞台姿を見れるかも知れません(ゲオルギューはダブルキャストの場合、リハーサルには出演しないことが多いのです)。

以上のように感動を与えてくれる演奏で、これは是非舞台で見たいオペラという印象を強くしました。

今日の席は舞台から遠くて斜めなのであまりいい写真は撮れませんでしたが数枚掲載しておきます。

左からAntonio Pappano、Patricia Bardon、Malin Byström
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Michele Pertusi、John Osborn
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John Osborn、Malin Byström、Elena Xanthoudakis
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by dognorah | 2011-07-18 21:59 | オペラ

ゲオルギューのトスカ

2011年7月14日、ROHにて。

Director: Jonathan Kent
Conductor: Antonio Pappano

Tosca: Angela Gheorghiu
Cavaradossi: Jonas Kaufmann
Baron Scarpia: Bryn Terfel
Spoletta: Hubert Francis
Angelotti: Lukas Jakobski
Sacristan: Jeremy White
Sciarrone: ZhengZhong Zhou

今年のトスカ公演はダブルキャストが組まれていて、最初の組み合わせマルティナ・セラフィン、マルチェロ・ジョルダーニ、ユーハ・ウーシタロの出演分はすでに記事にしました。

ゲオルギューがこのプロダクションに出演したのを見たのはプレミエの時の2006年6月(アルバレスと共演した回ニコラ・ロッシ・ジョルダーノと共演した回があります)、デボラ・ヴォイトの代役で出演した2009年9月に次いで4回目です。いつもすばらしい歌唱を聴かせてくれていましたが、今日は特によかったのではないかと思いました。「歌に生き、愛に生き」での絶望的な感情表現が非常にすばらしく感涙ものでした。

カウフマンは2008年6月にミカエラ・カローシと共演したとき以来2回目ですが、こちらも今日は歌のうまさに心底感嘆しました。力強く声を出す部分と弱音部との対比を際だたせながらニュアンス豊かな歌唱で心に訴えてきました。彼を初めて聴いた2004年11月の「ツバメ」で感心した彼の歌唱はその後いろいろ聴いてもあまり心に迫るものがなかったのですが、今日はようやく最近の彼の歌唱の良さがわかった気がしました。演技もとても上手くて第3幕の例のアリアでは舞台中央に突っ立って歌うのではなく、両膝をついたまま柱にもたれたり離れたりしながら身振りで不運な境遇を表現していましたが、さすがの演技と思いました。

ブリン・ターフェルはプレミエの時以来の出演と思いますが、好調な声だったし相変わらず悪役はお手の物で演技も非常に上手かった。
パッパーノの指揮はドレスリハーサルの時と同様すばらしいもので言うことなしです。

それにしても偉大な歌手3人が揃って好調でオペラ自体が格段の高みに達していると実感できる幸せな夜でした。当分こういう組み合わせはないでしょうから、暫くこのプロダクションは見なくていいかなと思っています。

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by dognorah | 2011-07-16 08:44 | オペラ

マスネーのオペラ「サンドリヨン(シンデレラ)」初日

2011年7月5日、ROHにて。

Cendrillon: Conte de Fées in Four Acts
Music: Jules Massenet
Libretto: Henri Cain

Director: Laurent Pelly
Conductor: Bertrand de Billy

Lucette (Cendrillon): Joyce DiDonato
La Fée: Eglise Gutiérrez
Le Prince Charmant: Alice Coote
Madame de la Haltière: Ewa Podles
Pandolfe: Jean-Philippe Lafont
Noémie: Madeleine Pierard
Dorothée: Kai Rüütel
Roi: Jeremy White
Doyen de la Faculté: Harry Nicoll
Surintendant des Plaisirs: Dawid Kimberg
Premier Ministre: John-Owen Miley-Read

ロイヤルオペラで初めて上演される作品です。プロダクションは2006年のサンタ・フェ・オペラのものを借りてきたものです。世界的に見てもロッシーニの「チェネレントラ」に比べて上演の頻度が少ないようです。音楽はマスネーらしい美しいものですがストーリーはよく知られたものなので、後は舞台をどのように魅力的に見せるかが勝負ですね。今回は衣装に趣向を凝らして華やかさと滑稽さを出していましたが、舞台装置はローラン・ペリーらしく簡素なもので見栄えはしなくて、それでなくても所詮大騒ぎして上演するほどのオペラじゃないなぁという印象を受けました。

歌手では、タイトルロールを歌ったジョイス・ディドナートはさすがの名唱、妖精役のエグリセ・グティエレスは相変わらずあまり好みの声ではなかったものの今日は軽々と高音が出ていて、これはこれでよかった。アリス・クートも全く不満のない歌唱でした。サンドリヨンの父親役を歌ったジャン=フィリップ・ラフォントは声もいいし歌も上手い。継母役のエヴァ・ポドゥレシュは演技が上手いものの声があまり魅力的じゃありませんでした。
ベルトランド・ドゥ・ビリーの指揮は十分美しい響きを出していて不満はなし。
全体としては気軽に舞台と音楽を楽しめましたが、何度も見ようという気にはなりません。

Joyce DiDonato
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Jean-Philippe Lafont, Bertrand de Billy, Joyce DiDonato & Alice Coote
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Eglise Gutiérrez
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Alice Coote
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Alice Coote & Ewa Podleś
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Laurent Pelly (far right)
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by dognorah | 2011-07-07 09:45 | オペラ

トリスタンとイゾルデ

2011年7月3日、グランジ・パーク・オペラにて。

Richard Wagner: Tristan und Isolde
Grange Park Opera
Sung in German with English surtitle

Conductor: Stephen Barlow
Director & Designer: David Fielding
Lighting Design: Wolfgang Goebbel

King Marke of Cornwall: Clive Bayley
Tristan: Richard Berkeley-Steele
Isolde: Alwyn Mellor
Brangäne: Sara Fulgoni
Kurwenal: Stephen Gadd
Melot: Andrew Rees
A shepherd/a sailor: Richard Roberts
The English Chamber Orchestra

グラインドボーンに引き続いて二日続けてイギリスの田舎で行われるオペラに行き、オペラだけでなくピクニックもたっぷり楽しみました。今回のグランジ・パーク・オペラはハンプシャー州のウインチェスターに近い場所にありロンドンから約70マイルの距離、私は初めて経験しました。グラインドボーンほど立派な劇場ではないですが、こんな場所によくぞこれだけのものがと驚くようなちゃんとしたオペラ劇場(昔の建物の内側に2002年に建築)で、舞台装置もとてもまともなものです。客席数は恐らく5-600人程度と思われますが、ストール席は傾斜がついていますし、シャンデリアはMETと同じように開演と同時に天井に上がっていきます。これだけすばらしい劇場が1年に一ヶ月間しか使われないなんてもったいないというか贅沢というか、イギリスの豊かさはこういうところにもあるんですね。グランジ・パーク・オペラが設立されたのは1997年で、第一回目は1998年だそうです。それ以来毎年開催されていて、今年の演目は「トリスタンとイゾルデ」「ルサルカ」「リゴレット」の3つでそれぞれ7乃至9回の公演が行われ、それに加えてブリン・ターフェルのリサイタルが2回開催されました。グラインドボーンやホランドパークと同様ここも原語主義です。

さて、公演の方ですが、これが予想以上の質の高さで驚きました。トリスタンのリチャード・バークリー・スティールは2009年のROHの公演でメロート役を歌った人ですが、声も歌唱もすばらしく、過去に何回も聴いたRobert Dean Smithよりもずっといいです。
イゾルデを歌ったオールウイン・メラーはそのROH公演のニーナ・ステンメのカヴァーとして待機していた人らしく、ROHもそこそこ実力を認めていた人ですね。この人の声は全面的には好きというわけじゃないですが、これだけ歌えれば立派というしかない歌唱でした。「愛の死」はもう少しニュアンスが欲しいところですが。
ブランゲーネ役のセイラ・フルゴーニは何度もROHの脇役で聴いていますが、何ら不満のないブランゲーネで、ROHではチャンスは無くても他の劇場ではいい役で活躍できる人ですね。
クルヴェナール役のスティヴン・ガッドはユーロフスキーのコンサート形式の時にもいい声で歌っていた人で、今日は一際惚れ惚れする声でした。ROHでも同役で何ら不足はない歌唱が出来るでしょう。
マルケ王のクリーヴ・ベイリーもROHでは何度も脇役でお目にかかっている人で、低音はよく出るものの声の輪郭がはっきりせず、迫力的にはやや物足りない気がします。
メロート役のアンドリュー・リーズは元気のいい声でよかったと思います。

スティーヴン・バーロー指揮するイギリス室内管弦楽団も立派な演奏で、ヴァーグナー音楽を十分満足して聴けました。

演出ですが、モダンな設定で第1幕の船室は全く現代のもの、トリスタンも青いキャプテン制服姿です。イゾルデのスーツケースのそばには死の予感の意かあるいはトリスタンに殺された彼女の許婚モロルドの遺骨なのか頭蓋骨が転がっています。頭蓋骨は形を変えて第2幕でも登場します。その第2幕は舞台設定がよくできていて二人が愛し合う場面では寝室の壁が動いて明るい森が現れ、幻想的な雰囲気を醸しだしたり非常に美しいものです。第3幕はトリスタンの独白の間に少年時代の回想シーンなどが俳優たちによって演じられ、視覚的にも退屈しないようになっています。ただし、トリスタンが死んだ後の二人の動きはPeter Konwitschnyの演出そのもので、クレジットには何も書いてありませんが恐らくコンヴィチュニーの許可を得てコピーしたものなのでしょう。すなわち、死んだはずのトリスタンとまだ生きているはずのイゾルデが手を取り合って他の人々から不可視の状態になり、二人の背後で黒いカーテンが引かれるとイゾルデがトリスタンのために「愛の死」を歌うもので、二人が舞台袖に引っ込むとカーテンが開いて二人の墓のそばにマルケ王とブランゲーネがたたずむというものです。このエンディングそのものはなかなかよくできたものなので、演出家デイヴィッド・フィールディングも使いたかったのでしょう。それはともかく、全体としての演出はとてもよくできていると思います。上記の音楽面での充実振りと相俟って非常に楽しめた公演でした。この大オペラをこういう小さな劇場で聴くというのは何という贅沢なことでしょう。来年も是非来たいと思ったのでした。

この日は気温も高めで24度くらい、風もほとんど無くピクニックには最適の天候でした。8人で借りた小さなテントの下で開演前と2回の長いインターヴァルの間にたらふく食べて飲んで談笑しました。

ピクニック用の敷地。右手前とか左後方の小テントの中で飲食するので雨でもOK。
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Stephen Gadd、Alwyn Mellor、Richard Berkeley-Steele & Sara Fulgoni
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Alwyn Mellor & Richard Berkeley-Steele
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Richard Berkeley-Steele
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Alwyn Mellor
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Sara Fulgoni & Clive Bayley
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Stephen Gadd
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conductor: Stephen Barlow
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by dognorah | 2011-07-06 01:06 | オペラ

ヘンデルのオペラ「リナルド」

2011年7月2日、グラインドボーン・オペラにて。

Georg Frideric Handel: Rinaldo
Glyndebourne Festival 2011
Conductor Ottavio Dantone
Director Robert Carsen

Rinaldo Sonia Prina
Goffredo Varduhi Abrahamyan
Eustazio Tim Mead
Almirena Anett Fritsch
Armida Brenda Rae
Argante Luca Pisaroni
A Christian Magician William Towers

Orchestra of the Age of Enlightenment

今年のグラインドボーン・オペラの新演出演目で、その初日を見てきました。
カーセンはどんなことをやるのかと思ったら、ヘンデルの結構まじめなストーリーを喜劇的に演出していて、かなり笑わせてもらいました。
原作では第1次十字軍の遠征でエルサレムをイスラム側から奪還するストーリーですが、序曲が始まると舞台はイギリスの高校らしい教室で、生徒たちが入ってくると一人の男の子がいじめに遭っています。そこに男性と女性の教師がやってきて、いじめにあった子は悪ふざけしていたと誤解されて鞭で打たれたりします。授業は歴史の時間で丁度第1次十字軍の話らしい。いじめっ子は想像力がたくましくて、自分がリナルド、男性教師がイスラム軍の将軍アルガンテ、女性教師がその愛人でダマスカスの強力な巫女アルミーダに見立てて彼らの率いるイスラム軍をやっつける妄想に耽ります。そこからオペラの第1幕になって、まずは味方の十字軍の将軍ゴッフレドやその弟のエウスタチオが黒板の向こうから現れて、まずは自分をいじめたクラスメートたちをやっつけさせます。その後から恐らくリブレット通りの展開になるのだろうと思いますが、リナルドの恋人のアルミレーナとの結婚をエルサレム陥落後に設定して、戦いが進行していきます。
途中、二人のマーメイドがリナルドを騙して連れ去る部分ではマーメイドの代わりにアルミレーナのそっくりさんを8人くらい用意していろいろな所作で爆笑でしたし、第3幕最後の両軍の戦いは地球の絵柄を描いたボールでサッカーの試合をするようになっていて、十字軍側がゴールを決めたところで勝負あり、等カーセンは大ふざけでした。しかしこれはこれで面白い演出と思いました。

歌手は皆さんとても上手く、ソニア・プリナは声量はそれほど無いもののさすがの歌唱、先日ウイグモアでリサイタルを聴いたルカ・ピサロニのオペラ舞台は初めて経験しましたが他を圧する迫力ある歌唱で大いに楽しみました。二人のソプラノ、アネット・フリッチュ、ブレンダ・レー共にいい声でしたし、メゾ・ソプラノのヴァルデュヒ・アブラハミアンやカウンターテノールのティム・メッドも不満はありません。
指揮は、第1幕はもう少し生き生きした音楽作りが欲しいところでしたが、第2幕と第3幕はこなれてきて楽しめました。

今年は実はグラインドボーンの切符を積極的にチャレンジしなかったので安い切符は全く取れず、あきらめていたのですが、友人からこの演目の切符を譲り受けることが出来、仲間と一緒に行けた上、舞台も結構楽しめましたのでハッピーです。

歌手全員のカーテンコール
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Sonia Prina
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Luca Pisaroni
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Ottavio Dantone & Anett Fritsch
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Brenda Rae
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Robert Carsen between Sonia Prina and Ottavio Dantone
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by dognorah | 2011-07-05 08:36 | オペラ

モーツァルトのオペラ「偽の女庭師」コンサート形式

2011年6月24日、バービカンホールにて。

Mozart: La Finta Giardiniera
Academy of Ancient music
Richard Egarr conductor
Rosemary Joshua Sandrina
Elizabeth Watts Serpetta
Klara Ek Arminda
Daniela Lehner Ramiro
James Gilchrist Il Contino Belfiore
Andrew Kennedy Podesta
Andrew Foster-Williams Nardo

このオペラは2006年にROHで見て以来5年ぶりです。そのときも若いモーツァルトの音楽に大変感激しましたが、今回も歌といい管弦楽といいすばらしい音楽であることを再認識しました。このオーケストラがすばらしいことは今年1月にウイグモアホールで聴いたときに感じましたが、今日も惚れ惚れするような音でモーツァルトの響きを余すところ無く伝えてくれた印象です。指揮のリチャード・エガーを改めて見直しました。もっともっとバロックオペラを演奏して欲しいです。
歌手たちも皆さんとてもすばらい歌唱でした。3人のソプラノはそれぞれ個性があって楽しめましたが、特にローズマリー・ジョシュアの純粋な響きにはうっとりしました。衣装のデザインはいいのですが生地の絵柄はちょっといただけません。蝶のように見えますがよく見ると蛾ですね。スエーデン人ソプラノ、クララ・エクは力強い響きだし、イギリス人のエリザベス・ワッツも美しい声でした。ズボン役のダニエラ・レーナーは声もいいけれど歌が滅法上手く、大いに感心しました。男声陣はすべてイギリス人で、特に二人のテノール、ジェイムズ・ジルクリストとアンドリュー・ケネディは普段よく聴く馴染みの人たちですが、全く不満のない歌唱でした。バスバリトンのアンドリュー・フォスター=ウイリアムズも魅力的な声の持ち主です。
このコンサートはマイナーなオペラである上に非常に有名な歌手が出ていないせいか切符の売れ行きが悪く、私も元々行く気がなかったのですが主催者から2割引のオファーがあったので行ったのでした。行って大正解、心底楽しめました。

左から、Klara Ek、Daniela Lehner、Rosemary Joshua & Elizabeth Watts
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左から、Andrew Kennedy、Andrew Foster-Williams & James Gilchrist
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Rosemary Joshua
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Elizabeth Watts
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Klara Ek
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Daniela Lehner
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Richard Egarr
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by dognorah | 2011-06-27 07:58 | オペラ

ブリテンのオペラ「ピーター・グライムズ」

2011年6月21日、ROHにて。

Peter Grimes: Opera in a prologue and three Acts
Composer: Benjamin Britten
Libretto: Montagu Slater after George Crabbes's Poem ' The Borough'

Original Director: Willy Decker
Revival Director: François de Carpentries
Conductor: Andrew Davis
Royal Opera Chorus
Orchestra of the Royal Opera House

Peter Grimes: Ben Heppner
Ellen Orford: Amanda Roocroft
Captain Balstrode: Jonathan Summers
Swallow: Matthew Best
Mrs Sedley: Jane Henschel
Auntie: Catherine Wyn-Rogers
Ned Keene: Roderick Williams
Hobson: Stephen Richardson
Rector: Martyn Hill
Bob Boles: Alan Oke
First Niece: Rebecca Bottone
Second Niece: Anna Devin
Dr Crabbe: Walter Hall

初めて見るオペラですが、ブリテンらしく暗い雰囲気のものです。地方の漁村の息詰まるような空気に加えて弱者を救うどころか大衆を煽ってそれを助長するような教会などやりきれない社会が余すところ無く描かれているのは演出のなす技かも知れませんがブリテンもそれを表現したかったと思われます。音楽はとても美しくかつ冷徹な表情が印象的で、アンドリュー・デイヴィスの指揮はまさにこのオペラの音楽を描出していました。管弦楽の音も冴えてさすがに彼の棒は凄いものがあります。ストーリー的にはちょっと登場人物が多すぎて誰が誰だかわからない面があり、もう少しすっきり出来なかったのかな、という印象を受けました。
歌手では、ベン・ヘプナーが今日はかなりまともな歌唱で、雑なところもあるもののさすがと思わせるいい声も時たま聴けました。過去、「トゥーランドット」で聴き「トリスタンとイゾルデ」では見ただけですが今回が一番まともでした。
エレン・オーフォード役のアマンダ・ルークロフトはかなりいい声がよく出ていて不満はありません。他の歌手も概ねよい歌唱で、全体的には結構レヴェルの高いものでした。
演出は鋭い視点で先に言ったようなブリテンの意図をよく伝えているものです。舞台は白黒の簡素なもので唯一第3幕の仮面舞踏会の場で着飾った人々によって色彩が使われているだけですが、演出の意図からすれば全く妥当なものでしょう。オリジナルの舞台はブリュッセルのモネ劇場のものということです。METのジョン・ドイル演出のDVDを持っていますが、今回の演出に比べると生ぬるさを感じます。

Ben Heppner
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Amanda Roocroft、左後ろはJane Henschel
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With the conductor Andrew Davis
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by dognorah | 2011-06-23 07:38 | オペラ

ドニゼッティのオペラ「ドン・パスクアーレ」

2011年6月18日、Opera Holland Parkにて。

Donizetti: Don Pasquale

Conductor Richard Bonynge
Director Stephen Barlow
Designer Colin Richmond
Lighting Designer Mark Jonathan

Don Pasquale Donald Maxwell
Dr Malatesta Richard Burkhard
Ernesto Colin Lee
Norina Majella Cullagh
A Notary Simon Wilding
City of London Sinfonia

今年もホランドパークオペラの季節がやってきました。イギリスの6月というのは雨が降ったり寒くなることが多いのですが今年も例外ではなく雨模様で、出入り口(常に大きく開いています)近くの席に座って大変寒い思いをしました。オーケストラメンバーは皆さんアノラックのようなものを着て対策していましたね。
このオペラは昨年9月にROHで見て以来ですが、今日もそのときと同様大変楽しめました。エルネスト役のテノール、コリン・リーは期待通りのすばらしさでした。このクラスの歌手がホランドパークオペラに出演するのは珍しいことです。柔らかく艶のある美声が満開です。ノリーナ役のソプラノ、マジェラ・カラハは2年前にここで見た「ロベルト・デヴリュー」のエリザベッタ役にも出ていた人ですが、そのときほどじゃないにしても十分美しい歌唱でした。タイトルロールを歌ったバリトン、ドナルド・マックスウエルはROHの舞台で何度も脇役に出演したのを聴いていますが、満足すべき歌唱と演技です。ドクター・マラテスタ役のバリトン、リチャード・バークハードも実にいい声をしていますし、演技も上手いです。かなり気に入りました。ドン・パスクアーレと肩を組みながら踊って歌うシーンは大変楽しめましたが、このシーンはイギリスでポピュラーなBBCのTV番組Eric and Ernieから取ってきて観客を笑わせたのだろうと同行した友人が言っていました。
指揮のボニングを見るのは2年ぶりですが、そのときより格段に年を取ったなぁという印象を顔から受けましたが、昨年奥さんを亡くされたことが影響しているのかも知れません。でも指揮振りは相変わらずすばらしく、音楽は大変楽しめました。コーラスのことはどこにも記載されていませんが、いつも通りすばらしい歌であり演技でした。
演出は、現代イギリスの海のそばの町に設定した読替で、ドン・パスクアーレの家は砂浜そばで営業するフィッシュ・アンド・チップスの店です。外見はみすぼらしい店ですが、ノリーナが嫁入りすると彼女は近代的な店に改装するなどしてお金を使います。この辺り、何となく最近訪問したケント州のMargateを彷彿とさせる雰囲気です。新築成った店の構えがあそこにあるターナー美術館そっくりなのです。エルネストからの手紙も携帯に入ったテキストだったり、スポーツカーのフェラーリを買う話など台詞も一部現代化しています。笑いどころもたくさん取り入れていますし、全体としては大変よくできていると思いました。

Richard Burkhard, Majella Cullagh, Donald Maxwell & Colin Lee
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Colin Lee
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Majella Cullagh
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Richard Bonynge
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by dognorah | 2011-06-21 01:34 | オペラ