ヴァーグナーのオペラのために初めて訪れたバイロイト、夕方から始まるオペラまでは時間がたっぷりあるので毎日少しずつあちこち見て回りました。小さい街なのでそれほど見所はありませんが、少しこの街について印象を語りたいと思います。
ウイキペディアによると現在の人口は約74000人だそうです。とてもドイツ的な清潔な街で、住んでいる人は多分ほとんどドイツ人なのでしょう旅行者を入れてもアフリカ系やインド系の人はとても少ないです。オペラが終わってから一人で夜遅く街を歩きましたが大都市に見られる治安の悪さは全く見えませんでした。かなり安全な街と言えそうです。フランクフルトを流れるマイン川の源流の一つが近くにあり、小川と呼べるRoter Main (赤マイン)川が街の中を流れています。ここより北の方の地域を流れるWeissen Main (白マイン)と合流して本流のマイン川になります。なお赤とか白というのは土質の影響を受けた水の色から来ているようです。 街の中心はバイロイト駅の南数百メートル付近にありショッピング街はほぼ歩行者天国でいつも人で賑わっていますが、旅行者の多い今の時期でもそれほど混んでいるわけではありません。この伝統的な繁華街の延長上にある歩道橋を渡ったところに大きなショッピングモールがあり、買い物好きのドイツ人の需要を満たしているようです。PCをずらっと並べて電話ブースまで設置された本格的インターネットカフェを一軒見つけましたが日本語の書き込みが出来ないので不便です。私はU3に必要な文章を書き込んでから行ってブログにアップしました。PCの持ち込みは出来ません。1ユーロで40分使えます。その他無線LANで無料アクセスさせてくれるカフェやレストランも2-3見つかり、PCを持ち込んでアクセスしてみましたが普通にインターネット出来るのでこちらの方が便利です。駅前にあるBayerischer Hofというホテルは客には無料で無線LANを提供しています。私の泊まったホテル(Arvena Kongress)はケチで1時間10ユーロ、一日22ユーロも取ります。ロビーには無料で使えるPCが置いてあるのですが日本語は表示さえ出来ない代物です。しかしこのホテルは祝祭劇場までチャーターバスの送迎があり、朝食と昼食が付いているなどその他のサーヴィスはとても満足しました。立地的にも街の中心まで徒歩10分足らずで便利ですし。 割と隅から隅まで歩き回りましたが街の中で私が見たものについて少々述べてみましょう。 Spital-Kirche まあ特にどうということのない普通の教会 Stadt-Kirche 一番豪壮な外観ですが内外とも修復中で見るに堪えず、Rathausの屋上から撮った写真を掲げます。 Schloss-Kirche これは立派な塔を持っているのですが修復中で写真は撮りませんでした。しかし教会本体の内部は一見の価値ある美しさです。 Christuskirche 大変モダンな教会。中は見学していません。 Markgräfliches Opernhaus 1748年に建てられたオペラハウスで、当時の領主(Markgraf)の妻(Markgräfin)がいろいろ面倒を見たのでこういう名前が付いているようです。外観は写真に示すように普通の古い建物という目立たない存在ですが、中へ入ると後期バロック様式の装飾がびっくりするくらい華麗な劇場です。バイロイトでは必見でしょう。 せいぜい3-400人程度の観客しか座れない大きさですが、舞台は奥行きが27mもあって設備もちゃんとオペラが上演できるようになっています。当時としては破格に大きい舞台だったことから自分のオペラを上演する劇場を物色していたヴァーグナーの注目を惹き、かなり詳細に検討したようです。また、1872年にはここで彼自身が指揮してベートーヴェンの第9を演奏しています。しかし、やはり入れ物が小さすぎるという結論に達し、すぐ近くに彼自身のオペラハウスを造ることにしたのです。従って、このオペラハウスがバイロイトに存在していたことがきっかけで現在のヴァーグナーの聖地がバイロイトになったと思われ、そういう意味でも大変興味深い劇場です。 ヴァーグナー博物館であるHaus Wahnfried ずいぶん広い館で地下1階地上3階建て。多くの部屋を飾っているのはオペラに関する絵画が多い。後は作曲家や音楽家達の写真や手紙類、役者の衣装など。かなり膨大な資料が保存されていて、見学順路は何回も階段を上り下りさせられる分疲れますが写真を中心に興味深い資料を見ることが出来ました。ドイツ語が読めればもっと面白かったことでしょう。その場でスキャンしてさっと自分の言語に翻訳してくれるガジェットがあれば欧州ではかなり役立つでしょうね。誰か開発してくれないかしら。1階奥のホールにはヴァーグナーが使ったという1873年製のスタインウェーのピアノが置いてあり、今でもここで開催される室内楽コンサートで使用されているようです。常時ヴァーグナーのオペラがスピーカーから流れてきますが、音響の悪さには辟易します。まさかこれが19世紀の音だと言っている訳じゃないでしょうに、もう少しましな装置を使って欲しいものです。部屋の壁沿いには音楽関係の蔵書がぎっしり。裏にある庭園には大きな長方形の石版が埋め込まれたヴァーグナーの墓があります。 Franz-Liszt-Museum リストは1886年にバイロイトで「トリスタンとイゾルデ」を見た直後に亡くなったので墓があるそうですが、従ってこの博物館もあるのでしょう。ごく普通のアパートの一室のような家です。資料数はあまり豊富ではなく写真を中心にごく短時間で見ることが出来ました。 Kunstmuseum Bayreuth 常設展示品はほとんど無く、企画展が主でしょう。私が行ったときは現代作家の釘を多用した作品が並んでいましたが私に言わせれば「がらくた」です。もう一つ、1979年にバイロイトでプレミエだった「ローエングリン」のDVDが演奏されていました。ペーター・ホフマン主演のもので、モニター画面を見ている限りは楽しめる公演でしたが、プレミエだったので当時の各国の新聞評が多数出ておりコピーが壁に貼ってありました。日本の「音楽通信」というのも張ってあり、読んでみたらこれがメチャメチャ貶しているものでした。貶しているのは演出についてなのですがかなり激しい言葉使いです。しかし理路整然とその理由を箇条書きで記していてなかなか読み応えがありました。 Neues Schloss 1753年に建てられた領主の居城。各部屋はよく保存されたお城で、オランダ派の絵画と陶器類も多数あります。それほど感嘆すべき見ものはなかったもののまあ悪くはなかったです。庭園(Hofgarten)は公園になっていますがこちらもよく整備されています。 Neues Rathaus 13階建ての近代ビルですが、その屋上は開放されており、バイロイトの町並みや祝祭劇場(遠くの山の中腹にあります)を一望できます。周囲は結構低い山並みが豊富であることも分かります。 バイロイト大学付属植物園 最初はバスの情報を持っていなかったので歩いていきましたが、中心から30分以上かかります。街の南端にバイロイト大学がありますが更にその南側にあってかなり広い敷地を使っています。入り口近くにはかなり規模の大きい温室があり熱帯植物たちがこれも地域ごとに区切られて多種類見ることが出来ます。ここでバナナの花というものを初めて見ました。 動物が上るのを拒否するかのように幹がトゲだらけの木もおもしろい。 さらに進むと湿度100%近い熱帯を模した部屋があり各種興味深い植物がありました。湿度が不愉快で早々に退散しましたが個人的にはこの温室が見応えがあってお気に入りです。温室を出ると世界の大陸別に様々な植物が植えられています。アジア地域では日本の一角もあって多数の木や草花を見ることが出来ますが、時期的には他地域も含めて全般に花が少ないときなので地味でした。中心付近には池もあり、ベンチに座って観察すると大小様々なトンボが沢山飛んでいます。赤とんぼやシオカラトンボに似たやつとか全体に青色のイメージでヤンマ級の大きなやつなども。バイロイト大学のキャンパスを縦断しましたが夏休みなのでほとんど無人でした。 Eremitage(Altes Schloss) 郊外にありますのでバス(2番)に乗っていきました。因みにバイロイトのバスはバスセンターから四方八方に出ており、道路渋滞もほとんど無いので時刻表も正確に運用されています。大体が10分から20分間隔で運行。私は回数券を買ったので片道運賃は知りませんが、往復券4枚で10ユーロでした。これだと片道1.25ユーロですね。 雨の中をわざわざ行ったのに、内部は修復中で見れませんでした。完成は来年6月とのことで「来年またおいで」と言われてしまった。残念だったけれど、広大な自然を利用した庭園はなかなか美しく、そばをマイン川の上流が流れていたりして起伏もあり散歩するにはもってこいの気持ちのいい場所です。雨でなかったらもっと長時間滞在したのですが、早めにバス停に移動。 祝祭劇場そばの彫刻 日本人彫刻家、松阪節三氏のDer Traum(夢)という名の1996年の作品。碑文には松阪氏のサインと共にリヒャルト・ヴァーグナーの自筆文章のコピーが彫ってあります。 10日間も滞在したのでもっと見ようと思えば見ることは可能でしたが、オペラ(4時開始)がある日はホテル発3時15分の送迎バスを利用することを考えると、午前中ぐらいしか余裕を持って見ることが出来ません。日本人のレピーターと食事時に話した結果皆さんはオペラのために体力を温存しているのかあまり見学はしておられないようで、私などこれでも沢山見た方でしょう。
by dognorah
| 2008-08-26 10:08
| 観光
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Comments(2)
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Maintochter
at 2008-08-28 19:22
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改めていろいろな写真を見ると懐かしいです。私はワーグナー好きのくせに、恥ずかしながら初めて行くまでバイロイトの歴史をほとんど知りませんでした(^^; 辺境伯オペラハウスは見事ですよね。内部ツアーもドラマ仕立て(ヴィルヘルミナ皇女と夫君のダイアログ)のようで面白かったのですが、当然というか残念ながら全部ドイツ語で理解度極めて低し・・・今度行く時にはもっと理解できるようにして行きたいと思います。場内の別会場では「グラール」に関するかなり詳しい特別展があり、こちらは英語のオーディオガイドを借りられたのでよく分かりました。
彫刻家の松阪さんは生粋のワーグネリアンで、比較的最近亡くなられたそうですが、生前、是非とも自分の作品をバイロイトの地にと、私費もかなり投じられたそうです。オペラの日の昼はやはり体力温存しておりましたが、2回目の今回は少し余裕を持って町のことを知り、楽しむことができました。
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dognorah at 2008-08-29 04:16
Maintochterさん、松阪節三さんのことを教えていただきありがとうございます。ネットで検索してもあまり情報が引っかかってこなかったのです。どういう経緯でこの彫刻がここにあるのかご存じでしたら教えて下さい。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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