モンテヴェルディのオペラ「ポッペアの戴冠」公演

2008年7月31日、RAHにて。グラインドボーンオペラのSemi-staged形式。

L'incoronazione di Poppea (The Coronation of Poppaea) (1642)
Opera seria in three acts
Music: Claudio Monteverdi (1567 – 1643)
Libretto: Giovanni Francesco Busenello

CAST
Fortune: Sonya Yoncheva soprano
Virtue: Simona Mihai soprano
Cupid: Amy Freston soprano
Otho: Iestyn Davies countertenor
Lucan/Soldier 1 /Tribune/Friend: Andrew Tortise tenor
Liberto/Soldier 2/Tribune: Peter Gijsbertsen tenor
Poppaea: Danielle de Niese soprano
Nero: Alice Coote mezzo-soprano
Arnalta: Wolfgang Ablinger-Sperrhacke tenor
Octavia: Tamara Mumford mezzo-soprano
Nurse/Friend: Dominique Visse countertenor
Seneca: Paolo Battaglia bass
Page: Lucia Cirillo mezzo-soprano
Drusilla: Marie Arnet soprano
Mercury/Consul: Trevor Scheunemann bass
Lady-in-Waiting: Claire Ormshaw soprano
Lictor/Consul/Friend: Patrick Schramm bass

Staged for the Proms by Bruno Ravella
Glyndebourne original director: Robert Carsen
Orchestra of the Age of Enlightenment
Emmanuelle Haïm: harpsichord/conductor

今年のグラインドボーンオペラの新作で、演出はロバート・カーセンですが、BBC PROMSのためにブルーノ・ラヴェラという人が半舞台化したものが公演されました。キャストはグラインドボーンで出演した人が衣装と共にそのまま来たようです。

主役二人はネロを演じたアリス・クートとポッペアを演じたダニエル・ドゥ・ニースで共に先日バービカンの別のオペラコンサートで聴いたばかりです。二人とも春から夏にかけてイギリスで活動してきたんですね。

公演はイタリア語で歌われましたが上掲のキャスト表では役は全て英語表記になっています。オットーネの表記がOrthoなんてちょっと戸惑いますが。

オーケストラは18名の小さい編成で、それが舞台前面に位置し、その奥に1mぐらい高くした演技スペースが作られています。字幕が出ないので観客は買い求めた対訳リブレットを手元にして劇の進行を理解しなければならず、かなり不便ではあります。私は随分前の同じグラインドボーンのDVDをVCD化したもの(マリア・ユーイングがタイトルロールのもの)を持っていてそれで予習していったので楽でしたが。予習中に気付いたのですが、このオペラの台詞はシェークスピアの戯曲のように啓示に富んだ言い回しが多く、とても面白いです。

この公演で出演した歌手では主役級の人たちはかなりの水準で、ポッペアを歌ったドゥ・ニースは声はやや堅めではあるものの華やかさがあり舞台映えする容姿と相俟って魅力的なポッペアを表現していました。ネローネを歌ったアリス・クートは中高音の艶と深みがすばらしい反面中低音では艶がなくなることがあり時には不快な声も出たりするのはこの前のセスト役の時と同じで、それさえなければすばらしいメゾソプラノなのに惜しいと思いました。しかし全体としては魅力的な人です。メゾにしては背が低く、ディドナートとほぼ同じくらいでしょうか。オットーネを歌ったカウンターテノールのイェスティン・デイヴィーズはやや柔らかめの声ですが終始心地よく、上手い歌唱でした。セネカ役のバスはあまり低音が伸びません。むしろマーキュリー役のバスに魅力を感じました。後、ページ、オクタヴィア、ドルシラ役もなかなかの歌唱でした。

モンテヴェルディの音楽は管弦楽はあまり華やかではなく主たる音楽は声で構成されるものという印象を持ちました。指揮のアイムは管弦楽に要所要所の指示を出すもののほとんどの時間はハープシコードと歌手への指示に使っていたような。

私の持っている旧グラインドボーン盤では男の役は全て男声が、女の役は全て女声が歌っていましたが、今回はネロとページを女声が、ポッペアお付きのメードとナースが共に男声が用いられて、おまけにオットーネが女装してポッペアを殺しに行くので舞台上は男女が交錯していました。やたら男声の裸姿が出てきたりもし、ひょっとしてカーセンもゲイか?という印象を持ってしまいました。

それはともかく公演自体はオペラセリアにも拘わらず笑どころも満載でとても楽しめました。
写真は左からDanielle de Niese、Emmanuelle Haïm、Alice Cooteです。
c0057725_06075.jpg


【あらすじ】
紀元1世紀のローマでの史実に基づいた物語である。プロローグで、徳の女神と幸運の女神がどちらが優れているか論争しているところへキューピッドが現れ、何と言っても愛の力が人間に一番影響力があるといって二人を納得させ、更に実際に力を示してやろうする。

旅から帰ったオットーネが見たものは恋人のポッペアが皇帝ネロと寝ていること。嘆き悲しむが相手が皇帝では何も出来ない。ポッペアは自分を正妻にするよう皇帝に嘆願し、オットーネに対して、もうまとわりつかないでくれと言い捨てる。オットーネの身の回りの世話をしているドルシラは予てからオットーネを愛していたが、ここぞとばかりに彼を優しく慰め、二人は新しい恋にときめく。一方、皇帝の妻オクタヴィアは怒り心頭。昔恩を着せたことのあるオットーネを呼びつけてポッペアを殺すように命令する。オットーネはドルシラの協力で女装し、ポッペアの寝室に忍び込む。しかしキューピッドの邪魔で殺し損ねた上召使いに姿を見られてしまう。服装からドルシラが容疑者として捕まり、自分がやったと嘘の自白をして皇帝から死刑を言い渡される。しかしそこにオットーネが出頭して真実を明かす。彼の女を寝取った後ろめたさからかネロは二人を追放処分することで死刑を撤回する。そして今回の事件を後ろで操ったオクタヴィアにも島流しの刑を言い渡す。これで邪魔者がいなくなったネロはポッペアと正式に結婚して幕。
[PR]
by dognorah | 2008-08-01 23:58 | オペラ
<< ザルツブルグ「オテロ」の評判 BBCプロムス – メシアンの大作 >>