2008年6月25日、ゼンパーオーパーにて。
TANNHÄUSER und der Sängerkrieg auf Wartburg Große romantische Oper in drei Aufzügen von RICHARD WAGNER Musikalische Leitung Christof Prick Inszenierung Peter Konwitschny Bühnenbild Hortmut Meyer Kostüme Ines Hertel Dramaturgie Werner Hintze Choreinstudierung Matthias Brauer CAST Landgraf Hermann von Thüringen Georg Zeppenfeld Tannhäuser Robert Gambill Wolfram von Eschenbach Christoph Pohl (für Olaf Bär) Walther von der Vogelweide Martin Homrich Biterolf Michael Eder Heinrich der Schreiber Tom Martinsen Reinmar von Zweter Rolf Tomaszewski Elisabeth, Nichte des Landgrafen Brigitte Hahn (für Catherine Foster) Venus Michaela Schuster Ein junger Hirt Lydia Teuscher Vier Edelfrauen Gabriele Müller, Ute Siegmund, Barbara Leo, Claudia Mößner 今回のドレスデン訪問の目的であったこのオペラは欧州では初の経験ですが、特に優れた歌手もいなくて出来としては水準程度かという印象です。そういうレヴェルのせいか、会場内は空席が結構目立ちました。 歌手陣では、タンホイザーを歌ったアメリカ人テノール、ロバート・ギャンビルは高音までよく伸びる声ながら時たま不快な声が出ます。全体としてはまあまあといったところ。 ヴォルフラムはオラフ・ベールの代役クリストフ・ポールが歌いましたが充分楽しめる声と歌唱でした。 エリザベト役はキャサリン・フォスターの代役ブリギッテ・ハーンが歌いましたが第2幕では声に張りがなくてハスキーで極めて不満足。第3幕でやや改善されたものの声質は好みではありません。かなり年増で50代後半か。がっかり。 ヴェヌス役のソプラノ、ミヒャエラ・シュスターは透明感のある声でよかったのですが第3幕ではヴィブラートが多くなってやや興醒め。 領主ヘルマン役のゲオルク・ツェッペンフェルトは声量あるバスがすばらしく、今回の歌手陣の中では一番光っていました。 また、合唱は本当にすばらしかったです。 クリストフ・プリック指揮のオケは重厚で美しい響きを出してヴァーグナーにふさわしいものでした。 このプロダクションは1997年プレミエのもので、演出はペーター・コンヴィチュニーですが、全体に訳の分からない部分はあるものの納得できるものでした。ただ、最後はエリザベトとヴェヌスが抱き合って終わるというのは非常にユニークです。しゃべっている言葉が分からないので子細は不明ですがありきたりの女性の死による救済とは違う解釈はあってもいいでしょう。細かいところでは、第1幕で大小様々なタンホイザー人形を弄ぶヴェヌスの取り巻き女性達とか、剣を使うときに手に嵌める甲冑をタンホイザーが終始手放さなくて、一度だけエリザベトの右手に嵌めさせることの意味などよく分かりません。いろいろ解釈を考えさせられますが、なるほど巷で評判のコンヴィチュニー、なかなか才能のある演出家であることはよく分かりました。面白いです。 舞台装置は第1幕が特に奇抜なものですが第2幕第3幕はそれなりに美しく、よく考えられたものです。第3幕では階段状の舞台が作られていますが、その下に左右に分かれた部屋があり全く別のオケ奏者達が10分程度演奏していました。それぞれに指揮者がいたので都合3人の指揮者が振る姿が私の3階席からは見えましたが、そういうヴァーグナーの指定なのか今回のプロダクションの創作なのか不明です。衣装はあまりいただけません。タンホイザーは終始パジャマのようなものを着ています。ヴェヌスは顔を青く塗っていますが尋常の世の人じゃないという意味付けでしょうか。 第2幕終了後の舞台 第3幕終了後の舞台 挨拶する出演者。左から、Christoph Pohl、Brigitte Hahn、Robert Gambill、Georg Zeppenfeldです。 終演後は前日に続いて近くのレストランで食事をし、ホテル帰還は午前様。タクシーに乗っているとドイツの小旗をつけた車がピーピーとクラクションを流して走り回っており、ああドイツがトルコに勝ったんだ、と分かりました。非ドイツ人らしき運転手にスコアを確認しましたがあまり愉快そうではなかったのでひょっとして彼はトルコ人だったのかもしれません。
by dognorah
| 2008-06-29 19:55
| オペラ
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Comments(20)
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ja8cte at 2008-06-29 22:30
TBさせていただきました。昨年の公演の様子は、
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=24905552&comm_id=8549 の17番コメントにもありますが、私もエリーザベトとヴェーヌスが手を取り合って終了するところが、とてもビックリした覚えがあります。 しかし、とてもきれいな写真が取れていますね!
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Sardanapalus
at 2008-06-29 23:12
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予想通りのdognorahさんの感想でした。この前にあの「リゴレット」を見てしまうと、まあこんなものか、となってしまうのも仕方ないでしょうね。第3幕のオーケストラ分割は、コンヴィチュニーお得意のビックリ作戦ではないですか?
一番上の写真に写っている緞帳幕が素敵ですね。これは劇場の幕ですか?それともタンホイザーのときだけ?
美しいカーテンですね。劇場も、外観、内装共に趣があって大陸とイギリスという島国の違いを感じます。
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dognorah at 2008-06-30 00:00
ご~けんさん、ドレスデンに行ってやっとご~けんさんに追いついたという思いでした。しかし昨年夏の歌手の方が遙かに知名度の高い人が出ていますね。切符が売り切れだったのは納得です。
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dognorah at 2008-06-30 00:08
Sardanapalusさん、予想されちゃいましたか(笑) でも昨年の出演者ならもっとましな感想になったと思いますよ。
オーケストラは分割ではなくエキストラに全く別のオケを二つ付け加えたのです。私は3階席だったのでオケが見えたのですが、平土間からはそれは見えないので演出の一部かどうか確信が持てません。 この緞帳はリゴレットではありませんでした。恐らくタンホイザーだけのためではないかと思っています。というのは第2幕、第3幕と進むとこの模様の投影が使われ、しかも投影サイズがだんだん小さくなっていたからです。
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dognorah at 2008-06-30 00:17
守屋さん、内装はともかく外観は歴史的にオペラ劇場の位置付けが大陸とイギリスでは違うことを如実に表していますね。大陸の中でもドレスデンはこの劇場を街の中心と考えているのでしょう。広い広場を前にして立っているのは見た目にも気持ちいいですね。
このカーテンは、トゥーランドットの時もあったような・・・
http://gohken.exblog.jp/5895756/ その日は一階席から観たので、こんな感じでした。縦方向の通路がないのにも、驚いた覚えがあります。
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dognorah at 2008-06-30 01:34
ご~けんさん、ご指摘ありがとうございます。リゴレットの時が特殊で、使われなかっただけなんですね。
一緒には座れませんでしたが、私たちに舞台近くの席を譲って下さってありがとうございました。
あのリゴレットの後ではなにを聴いても劣ると感じるでしょうが、このタンホイザーもこれはこれで面白かったですね。視覚的に楽しめました。 私たちは性懲りもなく翌日のコンサートにも行ったのですが、このカーテンはあって、その前でオケ演奏がされました。現代的なリゴレットには合わないと思って外したのでしょうね。
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moonhigh
at 2008-06-30 20:31
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リゴレットはもう、私の中では今までで一、二位の満足度で感涙でしたが、タンホイザーも思い出すとどんどん心の中でよくなってきましたよ。
特に最終幕の序曲で有名なコーラス部分の舞台は素敵でした。タンホイザーは全般的にコーラスとオケの出来が出色でしたね。 いつも旅行の手配はすべて夫に丸投げの、依頼心最強コンビの椿姫さんと私。dognorahさんがタンホイザーのチケットをゲットしてくださらなかったら何も始まりませんでした。心から感謝しています。 また、よろしくね(と、ちゃっかりおねだり)。
dognorahさん、音響はいかがでしたか? 私は今でも夢に見るような(聴こえるような)素晴らしい歌手たちの声を思い出します。日本でのPAはホトホト嫌になっていたこともあって、感激したのを覚えています。バスティーユもクリアで素晴らしいのですが、ここはまた一味違うと思いました。
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Sardanapalus
at 2008-06-30 23:28
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皆さん、緞帳情報をありがとうございました!では、演出上の理由が無い限り、ゼンパーオーパーへ行けば見られるのですね。アラベスク模様の部分など、じっくり見たいものです(^^)
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dognorah at 2008-07-01 01:08
ロンドンの椿姫さん、私はストール席よりも上の方が好きなのです。今回はストール席では見えないものも見えて、両方の情報を交換できて面白かったです。
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dognorah at 2008-07-01 01:13
moonhighさん、私もこの公演を反芻することが多く、今も巡礼やヴェヌスのテーマが頭の中を時々占領しています。
楽しくおしゃべりできる方々との旅行は最高です。こちらこそ今後もよろしくおつきあい下さい。
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dognorah at 2008-07-01 01:19
ご~けんさん、タンホイザーに関してはオケと合唱の響きがさすがという思いです。歌手に関しては前日のリゴレットで聴いた歌唱がすばらしかったので、タンホイザーはやや霞み気味です。ホールとしての音響は特にすばらしいということはなく、バスティーユ、ヴィーン、マドリード、バルセロナとはあまり違わない感じです。私もコヴェントガーデンのPAにはかなり嫌気がさしていまして、大陸の方へ行くドライヴになっている気がします。
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dognorah at 2008-07-01 01:23
Sardanapalusさん、将来は是非行って見て下さい。ただ来期に関しては分厚い本を買ってすべての演目をざっと見た限りでは私的にはあまり魅力ある歌手は出演しないようです。今回のリゴレットのようなものは数年に一度なのでしょう。
音響のこと、了解です。私は初日が5F立ち見席だったため、ホール全体に溢れる歌手の声に圧倒されたせいかもしれません。コンセルトヘボウで演奏を聴いたとき、真っ先にそれを思い出しました。何事も最初が肝心と言いますが、その時の印象はいつまでも残るものですね。
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dognorah at 2008-07-02 01:10
ご~けんさん、そうですね一般に天井に近い場所の方が音はより豊かに響きますよね。逆に平土間だと音が頭の上を素通りしちゃうとかいう話も聞きますが。
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Bowles
at 2008-07-10 14:14
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去年11月のドレスデンの来日で上演されたのと同じプロダクションですね。私としては、コンヴィチュニーの(いつもは過激さと言われるものの影に隠れている)ナイーヴさが気に入りました。演出、それにドレスデンの緞帳のことは某所の07年11月の日記に書いていますので、もしよろしければ。
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dognorah at 2008-07-10 23:12
Bowlesさんの日記は読んでいたのにすっかり失念していました。思い出させて下さりありがとうございます。しかし鋭い観察眼、コメントしていらっしゃる方々の意見など大変勉強になりました。この頃はコンヴィチュニーもまだあまり過激じゃなかったのでしょうか。私もおっかなびっくり見に行ったのですが意外にも感嘆してしまいました。Bowlesさんの日記にも書かれている絵画的視点など実に細かいところまで入念に演出していますね。それに、日本公演でも緞帳など細部に至るまで忠実に原形を保っていることに感心しました。
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