2008年6月24日、ドレスデン州立歌劇場(ゼンパーオーパー)にて。
Rigoletto Oper in drei Akten von Giuseppe Verdi Musikalische Leitung: Fabio Luisi Inszenierung: Nikolaus Lehnhoff Bühnenbild: Raimund Bauer Kostüme: Bettina Walter Lichtdesign: Paul Pyant Choreografie: Denni Sayers CAST Der Herzog von Mantua: Juan Diego Flórez Rigoletto: Željko Lučič Gilda: Diana Damrau Graf von Monterone: Markus Marquardt Graf von Ceprano: Markus Butter Gräfin Ceprano: Kyung-Hae Kang Marullo: Matthias Henneberg Borsa: Oliver Ringelhahn, Timothy Oliver Sparafucile: Georg Zeppenfeld Maddalena: Sofi Lorentzen Giovanna: Angela Liebold Ein Page: LinLin Fan Tさんとロンドンの椿姫さんと3人でドレスデンにオペラを見に行こうという話が5月にまとまり、やはりヴァーグナーを見たいということで、ネットで切符が取れたタンホイザーを目的に行きました。到着はタンホイザー前日の24日で、飛行機の中で椿姫さんからこの日は人気が高くて切符が売り切れたフローレス出演の「リゴレット」があるという話を聞いていました。フライトも順調に到着し、ホテルにも意外に早くチェックインできたので、劇場に行ってもし切符が入手できるようならこれも見ましょうということで3人の意見が一致。で、行ってみたら当日売り目当ての行列もあったけれど、ダフ屋が出ていました。かなり高かったけれど3人とも見たいという欲求には勝てずイージーゴーイング。 割といい加減な気持ちで見たわけですが、これが私が見た中では過去最高のレヴェルの高い公演でした。まず、フローレス、ダムラウ、ルチッチの3人がすべて上手い上に絶好調で、更にルイージ指揮のオケもすばらしい演奏で、それに加えて演出と舞台もとてもよくできたもので、うなってしまいました。 マントヴァ公爵としてのフローレスの声は私にはマルセロ・アルバレスよりも好みです。終始例の美声が全開で、第1幕第2場のジルダとの二重唱もダムラウのすばらしさもあって圧巻でした。 リゴレットを演じたジェリコ・ルチッチはROHのラ・トラヴィアータでジェルモンをやったことがあり、そのときのすばらしい歌唱はよく憶えています。そしてこのリゴレットも文句のつけようがない立派な歌唱でした。素直で抜けのよい安定感ある声と類い希な格調高い歌唱で終始感動的でした。ただ、リゴレットという役柄は外面的に道化でも内面的にまじめな性格ですが、ルチッチの場合ほとんど道化としての柔らかい面は出ていなくて終始まじめ一方というのがちょっと気になるところです。演出がそういう方針なのでしょうか。 ジルダを歌ったディアナ・ダムラウもそれに劣らず安定した音程と魅力的な声による情感たっぷりの歌唱で親子コンビでも公爵との熱愛コンビでも第一級のドラマティックな高みに達していたと思います。ROHで夜の女王をやった時みたいに濃い特殊メーキャップもしていないので、美しさにも惚れ惚れです。 この3人に加えて、殺し屋スパラフチレを歌ったゲオルク・ツェッペンフェルトの低音もなかなかのものでした。 しかしマッダレーナを歌ったゾフィ・ロレンツェンの声、歌唱ともあまり魅力的ではないです。したがって第3幕の4重唱はちょっと瑕があるものの後の3人が凄かったのでよい印象です。 指揮のファビオ・ルイージは初めて経験しますが、ヴェルディ音楽を魅力たっぷりに響かせる好感の持てるもので、厚みあるオケの音にも感動しました。 演出と舞台もかなりいい線を行っており、現在のROHのもの(マクヴィカー)より好きです。マントヴァ公の宮殿の黒大理石も豪華だし、ヌード女性を徘徊させたり怪しげな動作をするカップル達で退廃的な雰囲気もきちんと出ています。第二場のリゴレットの家はちょっと変な作りですがまあまあ。しかし第3幕の居酒屋はあまりいただけません。恐らく空を描写する空間をたっぷり取りたいがために、居酒屋そのものは極力小さく簡素にしたのでしょう。リゴレットの性格付けは先に述べたようにあまり道化という雰囲気はありません。前奏曲が鳴っている最中に彼がプロンプターボックスから這い出し、まじめで厳しい顔つきをしながら道化の衣装を身につけていきます。最初から道化はほんの仮の姿であることを強調しているようです。しかしながら細かいところがあちこち凝っていて、リゴレットは宮殿では30センチぐらいの金色の棒をいつも持っているのですがよく見ると(席が前から3列目だった)凄くエロティックなもので、棒の先がヌード女性の下半身に刺さったものです。また、ジルダがマントヴァ公に犯された後では彼女の白いドレスの下腹部が血で汚れているなど生々しさも感じます。 このプロダクションのプレミエは3日前の21日でしたが、来期の再演はごくローカルな歌手達ばかりで、ドレスデンにしては今回の歌手陣は異例の豪華さであることが分かりました。 下の最初の写真は第2幕終了後のもので、左からŽeljko Lučič、Diana Damrau、Juan Diego Flórezです。 次の写真は公演終了後のもので、左からGeorg Zeppenfeld、Juan Diego Flórez、Diana Damrau、Željko Lučičです。
by dognorah
| 2008-06-28 02:38
| オペラ
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Comments(12)
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stmargarets
at 2008-06-28 04:09
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えーっ?これもご覧になったんですか?
しかもなんだか席が無茶前の方っぽいですけど!!! 羨ましい・・・。
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こんばんわ。大陸のオペラ・ハウスって、いいキャストが揃うんですね。ダムラウだったら、「リゴレット」をまたみてみたいものです。
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dognorah at 2008-06-28 06:42
stmargaretsさん、今から行っても間に合いますよ!切符はダフ屋から買ってもロイヤルより安いし!
今回はたまたま見れましたが最高の公演がこういう風に転がり込んでくるんですね。そういう機会に恵まれたことを感謝です。3人のうち誰が幸運の女神のほほえみを得たのでしょうかね。
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dognorah at 2008-06-28 06:44
守屋さん、揃うときは揃いますがいつもはこうじゃないです。本文にも書きましたが来期のドレスデンはあまり魅力がないです。ここでこういう歌手が揃うのは恐らく数年に一回でしょう。
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Matthew
at 2008-06-28 09:40
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ドレスデン。。。いいですねぇ。。。
しかもなんだかものすごく前。。。 ダフ屋も重要ですねぇ。。。。。 僕も帰国の年にドレスデンで見たトリスタンとイゾルデが忘れられないほど素晴らしくて、日本でのドレスデンの講演3回見ました。。。 高くて。。。もう、2度とこんな大盤振る舞いはしまい。。。と思いました。 日本では安い新国立三昧です。。。
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dognorah at 2008-06-28 19:26
Matthewさん、お久しぶりです。ドレスデンではロンドンの椿姫さんとどうしていらっしゃるかなぁと噂していたんですよ。最近はmixiの日記もあまり書かれていなかったので。
ドレスデンは日本によく行くようですね。海外からのオペラ公演が6万円というのは決して高くはないと思いますよ。私がこうしてドレスデンやヴィーンに行ってオペラを見ると交通費や宿泊代も込みで計算すると6万円では収まりませんから。
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Sardanapalus
at 2008-06-29 00:35
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ダムラウのジルダ聴きたい~。ルチッチのリゴレットも良さそうですね~。フローレスは当然高音も楽々でしょうし。ダフ屋でも安いって、ドイツは良いですね。ドレスデンには聖母教会を見に行く野望があるので、その時にオペラも見ることにします。
ほんとにラッキーでしたね、あんな席が降って来たなんて。しかもちゃんと3人分あってよかったです。ほっ!
今回のドレスデン行きの計画については大変お世話になり、ありがとうございました。dognorahさんがタンホイザーを買って下さらなかったら行ってませんでしたもの。 私たちはもう一日残ってしっかり観光もでき、とても楽しい旅でした。
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dognorah at 2008-06-29 09:55
Sardanapalusさん、ここは世界的にはちょっとマイナーなオペラハウスかもしれませんが聖母教会よりは遙かに見応えがあります。是非行って下さい。
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dognorah at 2008-06-29 09:58
ロンドンの椿姫さん、一緒に行けてとても楽しかったです。普段はなかなか出来ないおしゃべりをたっぷり出来たのもよかったし、来期はまたどこかに一緒に行きましょう。オペラ同好の方々との旅は最高です。
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kametaro07
at 2008-07-19 15:30
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はじめまして。昨年6月にベルリンstaatsoperでparsifalを見て以来、オペラにはまっているオペラ初心者です。椿姫さんのサイトにも投稿させていただいたのですが、ロンドンで6月29日ドン・カルロ、30日ドレスデンでリゴレット見ました。感激しました。ただあまりにリゴレットが素晴らしかった為ドン・カルロも良かったのですが、印象がうすれてしまった気がします。もったいないというか、良いものを2日続けて見るのも考え物だなと思ってしまいました。今年は1月ロンドンでtraviata,5月パリでles capulets et les montaigusと見たのですが、いずれもキャストチェンジでネトレブコを聞くことができず、1月チューリッヒのle cidではホセ・クーラのお父様が亡くなったということでキャストチェンジとついてないと思っていたのですが、今回は大満足でした。私は日本在住なので、今年はもう欧州まで行くのは無理だと思いまが、dognorahさんのブログこれからも楽しみに拝見させていただきます。bayerische staatsoperもいつになるかわかりませんが行こうと思ってます。
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dognorah at 2008-07-19 22:25
kametaro07さん、初めまして。一週間の違いで同じリゴレットをご覧になったのですね。ドレスデンもフローレスと長年にわたって出演交渉を続けてきて他の配役や演出もフローレスが気に入るように配慮したそうでやっと今回の公演が実現したのです。そういう貴重な公演を見れてとてもラッキーでした。これを見たらドン・カルロの印象が薄れるのはやむを得ないでしょう。私たちも翌日見たタンホイザーにかなり影響を感じましたよ。
今年は無理でも来年はまたいらっしゃるんですね。私と同じ公演を見られたらまたコメントをお願いいたしますね。
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