オペラを見るために頻繁にヴィーンを訪問すると見所も大体見てしまって、昼間は時間をもてあます。そういうときに入れ替わり立ち替わりいろいろな特別展を美術館がやってくれるのは非常にありがたい。入場料が結構高くて馬鹿にならないけれど。
「抽象への道のり」と題して有名画家3人の名前があったので入場した。油絵ではこの3人の作品はそれぞれ1点ずつあっただけで、他の多くはオーストリアの現代画家を中心にしている。この3人の名前がなかったらあまり訪れる人もいないだろうから主催者も商売上手だ。しかし3つの作品はいずれも1級品で、それだけでも見る価値は十分にある。特にバーゼルから借用したモネの睡蓮は今まで見たこともないモダンな表現で、抽象の先駆けと主催者が主張するのもうなずける。200x180cmと大きめの作品で、会場で目にしたとたんぐっと惹きつけられた。上に掲げた小さな写真では分かりにくいかもしれない。睡蓮の絵としても大変魅力的だが無駄を排した表現には軽い衝撃を受ける位のエネルギーを感じる。1916-19年に描かれたもので、彼が亡くなる1926年よりかなり前の作品なのでまだ力も充実しているけれど更にそれを発展させるにはちょっと気力が続かなかったのだろう。もう少し若い頃にこういう境地に達していたら抽象の道をどんどん切り開いたかもしれない。晩年にこの手の絵を描くのはセザンヌにも認められたが二人の巨匠に相通じるものがあるのは面白い。セザンヌのあの1枚も会場にあってしかるべきだろう。 カンディンスキーのものは1936年に描かれたCompositionでこちらはモスクワから借りたもの。大変丁寧に描かれたもので魅力的な絵だ。ロスコのも一目で彼の作品と分かるもので1960年作。力の充実を感じる。スイスのコレクション。 他の作家にはもちろん有名な人も(サム・フランシスやピエト・モンドリアンなど)いて、それなりに面白いが私にとって馴染みのない画家達の作品も力作揃いで全体としてまあまあ楽しめた。 Monet – Kandinsky – Rothko und die Folgen Wege der abstrakten Malerei 28.02 – 29.06.2008 Ba-Ca Kunstforum, Wien
by dognorah
| 2008-03-26 01:35
| 美術
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Comments(5)
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助六
at 2008-03-26 10:17
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このタイトルだとケチな私もフラフラ入ってしまいそう(笑)。商売上手は確かとはいえ、未知の作家に会うチャンスを与えてくれる企画力には感謝すべきかも知れません。フランシスは私も大好きですので、結構満足して会場出そうです。
晩年のモネの睡蓮は視力の衰えのせいか確かに抽象に近いけれど、どうもボケちゃったんだか独自の境地なんだか判断しかねるようなとこもある気がしますけど、この作品はしっかりしてて、かつ緻密な光の探求が必然的に形態を溶解させていく現場を感じさせてくれるようですね。 先日久しぶりにヴィーン訪れたら「美術館地区」なんて以前はなかったので、ウラシマ気分でしたが、諸美術館も改築・再編が進んでるようですね。 昔比較的穴場かもと思ったのはクリムトの名品がある「市立歴史博物館」(今は改組されてカールスプラッツ・ヴィーン博物館とか言うよう)、ボッスの「最後の審判」がある美術アカデミー付属なんかでしたけど、今はどうなってるんでしょう。
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助六
at 2008-03-26 10:35
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モネはフォーレ、マスネ、シャブリエ、デュパルクあたりと同世代ですけど、デュパルクなんかは頭がややおかしくなったりしなければ、モネ並に和声面でも新しい道を切り開いてたかもなんて考えました。
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dognorah at 2008-03-28 04:32
仰る通り、最晩年のモネの絵は単にぼけているとしか思えない点もあってあまり好きじゃないのですが、この絵は全然そういうところが無く、彼の作品の中では傑作と評されるべきものだと思いました。ご指摘の「緻密な光の探求」はまさに言い得て妙ですね。そこから作曲界に思いを馳せられましたか。さすがと感心しましたが、デュパルクは歌曲を聴いたことがあるぐらいで作曲家そのものには無知なのでよくわかりませんが、新しい道を切り開くポテンシャルを持っていた人なんですね。
ヴィーン博物館カールス・プラッツは健在で、有史以前から現代に至るヴィーンの歴史博物と、16世紀以降の絵画などが展示されています。クリムトもちゃんと展示されています。実は2月に初めて訪問したのですが、エゴン・シーレなど少数ながら気に入った絵もあって非常にという訳じゃないですが楽しめました。また特別展の展示スペースもあってそのときは名古屋展をやっていました。多忙で記事を書けなかったのですが。
おはようございます。モネの絵、興味深いです。PCのスクリーンで観ても、絵の前面と背景として描かれている水面の次元が遊離しているようで、不思議な浮遊感、眩暈を感じます。実物を見てみたくなりました。
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dognorah at 2008-04-01 05:41
守屋さん、実物と写真は結構印象が異なると思いますのでぜひ実物をご覧になって下さい。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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