2008年2月19日、バービカンホールにて。
Vivaldi Tito Manlio Accademia Bizantina Ottavio Dantone: conductor Carlo Lepore: Tito (bass) Karina Gauvin: Manlio (soprano) Ann Hallenberg: Servilia (mezzo-soprano) Roberta Invernizzi: Lucio (mezzo-soprano) Marina De Liso: Vitellia (contralto) Josè Lo Monaco: Decio (mezzo-soprano) Mark Milhofer: Geminio (tenor) Christian Senn: Lindo (bass) 名演でした。ヴィヴァルディのオペラは初めて聴きましたが、管弦楽も歌もとても美しく、バロックオペラもいろいろすばらしい作品が多いことを改めて認識しました。 序曲が始まると「ああ、ヴィヴァルディ!」と誰でも感じれる弦楽合奏の特徴が前面に出てきます。古楽器なのでイ・ムジチのような明るい澄んだ音色ではありませんが、控え目にしっとりとした感じです。オケは最後まで魅力的な演奏を提示してくれて手慣れたものです。既に何度も演奏しているし録音もしているので当然かもしれませんが私には新鮮でした。 歌手がまたすべてすばらしく、各役に対してアリアが1乃至数曲あてがわれているのですが声も微妙な感情表現を歌い上げる様も見事でした。特に第1幕のヴィテリアが敵方の司令官となった恋人ゲミニオとローマの執政官である父ティートに挟まれて悩むアリアとか、第2幕でルチオがオーボエのソロに乗って切々とヴィテリアへの愛を歌うアリアなど心に響きました。 アリアの数はルチオ役が一番多かった気がしますがロベルタ・インヴェルニッチの歌唱はすべて感動もので、聴衆からも多大の拍手とブラヴォーをもらっていました。声で一番感心したのはセルヴィリアを歌ったスェーデン人アン・ハレンベリで、潤いと深みがあって心地よい響きでした。 指揮者のダントーネとは何度もコンビを組んでいるカナダ人ソプラノ、カリナ・ゴーヴァンの声と歌唱もなかなかのものです。発表されていた写真ではとても魅力的な顔でしたがどうやら数年前のものらしく今は太ってしまって丸顔でお腹も結構出ていました。 男性陣ではタイトルロールを歌ったカルロ・レポレがお腹に響いてくるような低音に迫力があり、歌唱も言うことなしという表現力です。近々コヴェントガーデンで上演されるロッシーニのオペラMatilde di Shabranに出演とのことですが来シーズンあたりでしょうか。もしそうならこれは楽しみです。 義務と愛との葛藤だけで3時間半の上演時間はちょっと長いとは感じましたが音楽的には思いっきり楽しめました。ブラヴォーです。客の入りは1階席はまあまあ、2階席は30%ぐらい、3階席はゼロ(恐らく2階席へアップグレードされたのでしょう)。Great Performer Seriesにしては寂しい入りでした。 写真は左からCarlo Lepore、Ottavio Dantone、Karina Gauvinです。 次の写真は女性ばかり写したもので、左からJosè Lo Monaco、Roberta Invernizzi、Marina De Liso、Ann Hallenberg、Karina Gauvinです。 【あらすじ】 ローマとラティンに諍いが発生したため執政官であるティート・マンリオは家族を含めた側近者にローマに忠誠を誓うよう言い渡すが娘のヴィテリアと息子マンリオの婚約者セルヴィリアはそれを拒否する。ヴィテリアの恋人がラティンの司令官ゲミニオであり、セルヴィリアはゲミニオの妹だからである。一方、ラティンの軍人であるルチオは親ローマ派でしかもヴィテリアに横恋慕している。 ティートは息子に和平使節としてラティンのキャンプを訪問するよう命令する。彼がキャンプに着くとゲミニオは彼を侮辱した上剣で挑みかかる。やむを得ずマンリオは応戦するが結果としてゲミニオを殺害してしまう。それはティートの命令に背いたことになりローマに戻った彼は激怒する父と嘆き悲しむ妹と婚約者から激しく責められる。そして父から死刑を宣告されて牢に入れられる。ルチオはローマ軍がマンリオの赦免を嘆願していることから彼を救出しようとするがマンリオはそれを断る。死刑執行の朝になってローマの市民がマンリオを死刑にさせないという行動を取ったためティートもやむを得ず死刑を撤回し、家族は和解する。
by dognorah
| 2008-02-20 23:47
| オペラ
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Comments(9)
こんばんわ。これ、行きたかったんです。でも、火曜日はどうしても外せない用が有るので諦めたんですが、行くべきでした。dognorahさんの文面から察するに、CDが出ているようですね。ヴェネツィア在住の友人によると、ヴィヴァルディのオペラはイタリアではけっこう上演されるらしいです。
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dognorah at 2008-02-21 08:35
ヴィヴァルディのオペラはイギリスではまだまだでしょうね。日本人も私以外にそれらしき人が一人いたぐらいでした。
CDはnaiveというレーベルが3枚組で出していましてそれが世界初のCDだそうです。指揮と管弦楽はこの公演と同じで歌手はKarina GauvinとAnn Hallenbergが同じ役ですね。www.vivaldiedition.comに情報があります。
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Bowles
at 2008-02-21 10:40
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いいものをお聴きになりましたね。ダントーネの振るこのオペラ、何年か前のボーヌとこのロンドンぐらいでしか演奏されていないような...。ここに登場している女性陣、すべて私の気に入っている人たちです。とくにゴヴァン(ケベック出身)。ルセとのトラジェディ・リリクやヘンデルも最高。私的には当代随一のアルチーナだと思っています。しかし、舞台が少ないのは、やはりあの容姿か...。ハレンベリも肥大化しましたが、ゴヴァンの比ではないし。
ヴィヴァルディのオペラは、歌手がそろえばとても楽しいものだと思います。守屋さんがおっしゃっているヴェネツィアのヴィヴァルディ、これは続けて二本上演されたもので、イタリアでもとても珍しいことでした。 レポーレ、声はいいんですが、表現が浅いというか。なかなか伸びません。Matildeの彼の役はほんの脇役だからいいんですけれど。
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dognorah at 2008-02-21 21:24
Bowlesさん、コメントありがとうございます。本国イタリアでもヴィヴァルディのオペラは珍しいのですね。そういう意味ではいい経験をしました。レヴェルの高い公演だったし。女声陣はホントにいい歌手を揃えてくれたものだと思います。
>Matildeの彼の役はほんの脇役・・・ あ、そうなんですか。全く知らないオペラなので彼が重要な役をやるのかと思ってしまいました。
>Bowlesさん(dognorahさん、横ですいません)
訂正ありがとうございます。友人のブログの「バヤゼット」のエントリを読み返しても、「頻繁」とはありませんでした。バルチェッローナが出たということで舞い上がってしまったようです。 いつの日か、飽きるまでバロック・オペラのなまの舞台を観たいものです。
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Bowles
at 2008-02-22 08:51
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>dognorahさん
naiveのCD、三組目です。完全全曲はNegriの指揮のものがLPの時代に出ていて、それもCD化されていますし、その次はイタリアでの上演のライヴでサルデッリのものも出ました。いちばん充実した演奏がnaiveのヴィヴァルディ・エディションのものであるのは当然!! >守屋さん いえいえ、ヴェネツィアはちょっと珍しいバロック・オペラを少なくとも年に一度は、フェニーチェではなく、もっと小さいテアトロ・マリブランのほうで取り上げているので、訂正ではありません。ごめんなさいね。 >バルチェッローナが出た ヴェネツィアとほとんど同じキャストのビオンディが指揮する《バジャゼット》、日本でも2,3年前にセミ・ステージ形式で上演されたました。会場は興奮のるつぼ!!
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dognorah at 2008-02-22 09:14
三組目でしたか!プログラムの広告ページにWorld Premiere Recordingと宣伝されていたのでそのまま信じちゃいました。
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とんび
at 2008-02-26 00:46
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はじめて書き込みします★
ティトマンリオ、naiveのヴィヴァルディシリーズの中でも特に気に入っている曲でしいたので、今回のバービカンの記事を拝読しながら、興奮を禁じ得ませんでした。CDの方に出ていないインヴェルニッツィが歌ったというのは、本当にうらやましい限りです! ぜひ来日してほしいソプラノの一人です。
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dognorah at 2008-03-01 10:21
とんびさん、初めまして。このオペラのファンでいらっしゃるのですね。実際に聴くまでどんな音楽か全く予備知識がなかったので、すばらしい演奏に接して「してやったり!」と思ったものです。これだからコンサート通いは止められません。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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