2008年1月14日、ROHにて。
La traviata Opera in three acts Music Giuseppe Verdi Libretto Francesco Maria Piave after Alexandre Dumas fils's play La Dame aux camelias Conductor: Maurizio Benini Original Production: Richard Eyre Revival Director: Patrick Young Designs: Bob Crowley The Royal Opera Chorus The Orchestra of the Royal Opera House Violetta Valery: Anna Netrebko Alfredo Germont: Jonas Kaufmann Giorgio Germont: Dmitri Hvorostovsky Flora Bervoix: Monika-Evelin Liiv Gastone de Letorières: Ji-Min Park Marquis d'Obigny: Kostas Smoriginas Baron Douphol: Eddie Wade Doctor Grenvil: Mark Beesley Annina: Sarah Pring Giuseppe: Neil Gillespie Messenger: Charbel Mattar Servant: Jonathan Coad とても期待の持てる配役陣ですがその期待を裏切らないすばらしい公演でした。指揮者以外はイタリア人はゼロ。ロシア人、ドイツ人、エストニア人、リトアニア人、韓国人それにイギリス人という布陣。ヴェルディにしろこの演目にしろ完全にインターナショナルな人気度からすれば本家以外はどこでやってもそんなものでしょう。 まずネトレプコ。絶好調といってもいい出来でした。どんなピアニッシモでも掠れることのない声のなんとすばらしい艶でしょう。すべての音域で非の打つどころのない歌唱といえるでしょう。第1幕最後のe Strano!からSempre Kiberaに至る独唱など比類のない美しさで早くも耐えきれずに感涙。あまりにもすばらしかったのでここで彼女がキャンセルしても結構と思えたくらいです。インターヴァルに会ったM氏も「ここで家に帰ってもいいかな」と思ったとのことです。このプロダクションは舞台装置が豪華でとてもよくできたものですがその中で彼女の美しさが一段と栄えます。そして彼女の表情や立ち居振る舞いも場面にぴったり。 カウフマンの歌唱も立派でした。この人を2004年11月の「La Rondine」で初めて聴いたときはその美声に惚れ惚れしたものですが、その後のレパートリーの拡大のせいか声の陰影を優先させる歌唱に変化してきたように思えます。2006年12月の「カルメン」で私はそれに気付きましたが、絶叫型のテノールではなく歌のニュアンスをとても大事に表現する歌手ですね。声そのものは魅力的ですが、全音域で艶があるというわけではなく所々掠れが目立つことがあります。でもピアノからピアニッシモでの表現はすばらしい。スマートな体型はアルフレード役にはぴったりです。 ホロストフスキーの声はジェルモン役にはかなり軽いしちょっと明るすぎる嫌いはありますが歌唱そのものは立派でした。ただこの人のちょっと籠もるような歌い方はあまり好きじゃありませんが。ジェルモン役としては2006年1月に聴いたŽeliko Lučičを始め彼以上の歌手はいくらでもいるでしょう。 その他の歌手では、今年からYoung Artists Programmeに参加している3人の若手はなかなかよくやっているという印象ですが、特に韓国人のJi-Min Parkは今日もすばらしく、イタリアものにふさわしい軽めのテノールは第1幕冒頭ではカウフマンより目立っていました。この人は将来主役を歌うようになるでしょう。 ベニーニ指揮の管弦楽も特筆もので、美しいアンサンブルだったし弦の微妙な表現にはウットリしました。 ということで公演はとてもハイレヴェルで、終演後はROHでは珍しくStanding ovationとなりました。写真は左からAnna Netrebko、Jonas Kaufmann、Dmitri Hvorostovsky、Maurizio Beniniです。
by dognorah
| 2008-01-15 21:16
| オペラ
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Comments(17)
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Sardanapalus
at 2008-01-15 23:10
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私の聞いた時のROHの「椿姫」は主役2人が良くありませんでしたが、今回は本当に人気キャストが揃っていますね!それにしても、1幕から涙とは…。でも、あの1幕最後のヴィオレッタのアリアは、ネトレプコならしっかり歌いきってくれそうですものねぇ。
もちろんまだ行きますよね?(^^)別の日の感想と素敵なカーテンコール写真も楽しみにしています♪
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こんばんわ。カーテン・コールの写真を観ていると、昨晩の感動は幻ではなかったことを実感します。結果として、「1幕」で帰らなくて良かったです。あれほどの舞台、滅多にあるものではないですから、「幸運よ再び」とばかりに、今日も1時間おきにロイヤル・オペラのウェブをのぞきましたが、もう、リターンはでないでしょうね。
ネトレプコは、「ルチア」もレパートリーに入れているようなので、今回の主役3人で「ルチア」というのも観てみたくなりました。
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at 2008-01-16 08:27
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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bibinga at 2008-01-16 08:28
ホントに素晴らしかったですね! 一晩立った今でも、ネトレプコの声が頭の中に鳴り響いています。鳥肌を通り越して、鳥になってしまいました。
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dognorah at 2008-01-16 09:39
Sardanapalusさん、1幕最後で異例のカーテンコールがあったのにカメラの準備が間に合わず撮れませんでした。次回も変な席ですがなんとか撮りたいと思います。しかしオペラって最後が寝間着姿というのが結構あって厭ですね。
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dognorah at 2008-01-16 09:41
守屋さん、かなり入れ込んでいますね(^^)
ルチアは確かMETでやったと思いますが狂乱の場をぜひ彼女の声で聴いてみたいです。
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dognorah at 2008-01-16 09:46
bibingaさん、コメント禁止にした憶えはないのにここ数日のうちに勝手にそうなったみたいです。現在exciteに問い合わせしていますが、直らないようなら引っ越ししたいと思います。多くの貴重なコメントがURLなしでいただいているのにそれが無くなるなんてショックです。
しかしこの公演は本当に空前絶後というくらい凄かったですね。
椿姫様にこの椿姫のチケットを頂いて、丁度ロンドンにいる娘が行きましたが、オペラ初心者の娘でさえ、ネトレプコの歌唱があまりに素晴らしくて涙が出た、と書いてきました。本当に最高級の贅沢な舞台であったことが、Dognorahさんのブログを読んでよく分かりました。
Dognorahさんが、このような昨年にも勝る素晴らしい音楽体験をブログにつづって下さるのを、今年も楽しみにしています。
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dognorah at 2008-01-16 21:01
sottovoceさんのお嬢さんはラッキーでしたね。若いときからこういう最高のものを味わうとしっかりオペラ鑑賞のエキスパートになるでしょう。
sottovoceさんも東京でぜひオペラをご覧になって感想を書いて下さい。
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bibinga at 2008-01-17 05:52
(横から口出ししてすみません) Sardanapalusさん、1幕の後のカーテンコールの写真、こちらにありますのでよろしければご覧ください。dognorahさんに腕もカメラも大きく劣り、恥ずかしいですが。
http://bibinga.exblog.jp/d2008-01-14
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bibinga at 2008-01-17 06:00
dognorahさん、明日17日も券が手に入ったので行ってきます。これほどの舞台、生涯で最後かもしれませんから・・・。あとは23日ですが、それまでキャンセルしないで欲しいです(祈)。
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Sardanapalus
at 2008-01-20 14:07
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>1幕最後で異例のカーテンコール
一応この演出では必ずやるのではないでしょうか?私が見に行ったときは、アリアがひどい出来だったので幕が開いてヴィオレッタが出てきても、まばらな拍手でかわいそうでしたよ(^_^;)dognorahさんが以前見たときはリハーサルだったので省略されていたのではないでしょうか?
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dognorah at 2008-01-21 06:13
Sardanapalusさん、そうでしたか。私はこのプロダクションは多分前回のリハーサルも含めて3回目の観劇で、憶えていなかったのです。
dognorahさん、BBCインターネットラジオで1/14公演全幕の放送がありました。ちょっと音が悪かったのが残念ですが、メモリープレーヤに入れて、通勤途上で聞くのが楽しみです。
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dognorah at 2008-02-11 10:04
ご~けんさん、放送されていたとは知りませんでした。ネトレプコの名唱がちゃんと捉えられていて欲しいですね。
第2幕まで聴きました。「花から花へ」の少し前くらいから、思わず引きこまれました。こんなに感動的な第1幕の終わりがあったのだろうか、、、視覚的な情報がなくても充分楽しめますね。しかし、ネトレプコ以外の声が小さくて、聞き取りにくいくらいでした。それだけ存在感の大きな彼女だったと思います。
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dognorah at 2008-02-14 01:29
ご~けんさん、録音でも十分楽しまれたようですね。音の取り方に少し問題があるように思われますが。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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