2007年11月21日、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールにて。
Das Wunder der Heliane, Opera in three acts (UK première) Libletto: Hans Müller after Hans Kaltneker Music: Erich Wolfgang Korngold Patricia Racette: Heliane (soprano) Michael Hendrick: Stranger (tenor) Andreas Schmidt: Ruler (baritone) Ursula Hesse von den Steinen: Messenger (mezzo-soprano) Willard White: Porter (bass-baritone) Robert Tear: Blind Judge (tenor) Andrew Kennedy: Young Man (tenor) EUROPACHORAKADEMIE London Philharmonic Orchestra Vladimir Jurowski: conductor コンサート形式とはいえ初めてコルンゴルトのオペラを経験しました。この作品は1927年にハンブルクで初演されたものですがやっと80年後にイギリスで初演されたのです。この作品をオペラにする契機となったのは彼が好きな女性と結婚しようとしたときに父親に猛反対されたことのようです。愛の強さが逆境を克服できると強調したかったのでしょう。 オケの編成が大きいため最前列の座席を撤去して舞台を広げても歌手の立つ場所が確保できず、歌手はすべて合唱隊と並んでコーラス席に横並びとなり、観客からは一番遠い場所で歌うことになってしまいました。若い常任指揮者ユーロフスキーの指揮はダイナミックで劇的な面を強調するものだったので大音響の舞台上のオケが邪魔してしばしば声が聞き取りにくくなったのがやや残念です。しかし歌も管弦楽も饒舌な音楽ですね。音の饗宴を楽しみました。今夜のロンドンフィルは好調、持てる力を存分に発揮した感じですが、やはり指揮者による力が大きいと感じました。 歌手は概ねよい出来でした。特に主役のヘリアーネを歌ったパトリシア・ラセットがすばらしく、第2幕第3幕の長丁場でも全く衰えを知らぬ熱唱で魅了してくれました。美声を微妙にコントロールして全く破綻がなく劇的ニュアンスを表現する様には感嘆。安心して聴ける名ソプラノだと思います。私はこれが初の経験ですが、主に北米で活躍しているアメリカ人でレパートリーもプッチーニ、ヴェルディからヤナーチェクまで幅広くカヴァーしているようです。 Strangerを歌ったマイケル・ヘンドリックは柔らかい声で好演していましたがやや声が通らず迫力不足の面もありました。 独裁者を歌ったアンドレアス・シュミットは大音量のオケをものともせず声を飛ばしていました。いいバリトンと思います。彼はオケの向こうに声を届かせようとするかのように左手の甲をあごの辺に持ってきて発声していましたが功を奏していたのじゃないかと思います。 Messenger役のシュタイネンも大きな美声で目立っていました。 Porter役のウイラード・ホワイトは聴くのが久し振りでしたが、かなり衰えたなぁという印象です。声に張りも潤いもなく、もう過去の人という感じです。 合唱はドイツから来ましたがヴォリュームもたっぷりながらやや一本調子という印象でした。そういう音楽なんだと言ってしまえばそうですが。 写真は終演後のもので左から、Andreas Schmidt、Patricia Racette、Michael Hendrickです。 あらすじ 独裁者が人々を抑圧しているある国を旅行していたStrangerが人々に笑もなく喜びもない状態に接して、喜びを持とうと演説したら逮捕されて死刑を宣告される。独裁者の妻ヘリアーネが翌日に死刑執行を控えている囚人を慰めるために牢にやってくる。そこでお互いに話すうちに愛が芽生え、求められるままにヘリアーネは裸になるがそれ以上の行為に躊躇して隣のチャペルに籠もる。そこへ独裁者がやってきて、自分は妻の愛を未だに得られない、お前は愛を人々に説いたそうだがどうしたら妻の愛を得られるか教えて欲しい、うまくいったら死刑を撤回してお前と彼女を共有して暮らしてもいい、と相談を持ちかける。と、そのとき未だに裸のヘリアーネがチャペルから戻ってくる。独裁者は妻を不貞罪で逮捕させ、Strangerの死刑を執行するように命令する。ヘリアーネは不倫を否定するが強い疑心を持つ独裁者は二人の言い分を聞いて裁判官に判断するよう要請するなかStrangerは何も言わず自殺してしまう。その後神の出現でStrangerは一時的に生き返り、ヘリアーネと共に愛を賛美しながら昇天する。
by dognorah
| 2007-11-23 02:44
| オペラ
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Comments(3)
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助六
at 2007-11-28 11:12
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うわぁ「ヘリアーネ」の実演があったんですね。私も聴きたかったです。コルンゴルト、ハリウッドで成功したのがなるほどと思わされるアラレの無さギリギリみたいなとこが大好きです。「死の街」舞台上演には幾つか巡り合いましたが、実演ではCDのような豊麗絢爛なすごい音は中々しないですね。作品に弱さがあるのか演奏が難しいのか、未だに判断しかねてます。
少なくともスカスカしてるよりは、ユーロフスキみたいにガンガンなるタイプの方が音楽は活き易いと思います。でも彼だとカチッとしすぎてて旋律のうねるようなしなやかさや豊麗な音色感はイマイチかも知れませんね。昔ドイツの小劇場で、例のジョン・デューの演出で舞台上演があってチラリと興味引かれましたが、オケが弱いと萎みそうな作品だなとか思って、出掛ける元気は起こらなかったです。 フレミングはリサイタルで「ヘリアーネ」のアリア歌ってくれたことがありました。
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助六
at 2007-11-28 11:15
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この頃は「サロメ」成功の尻馬に乗って、ヒンデミット「サンクタ・スザンナ」、シュレーカー「はるかなる響き」「Gezeichneten」、ツェムリンスキー「カンダウレス王」とか「エロティック・オペラ」がズラリと書かれてて、どこかまとめて舞台上演してくれるとありがたいんですけどね。
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dognorah at 2007-11-28 20:54
助六さん、今回のオケは少なくとも豊麗絢爛な音という印象はありました。仰る通り、うねるようなしなやかさというのは感じられませんでしたが、痩せた音よりはいいですね。
私も昨年12月のフレミングのリサイタルでヘリアーネを聴いて、コルンゴルトに興味を持ちました。彼女は今年のPROMSでも同じ歌を歌っているのでお気に入りなのでしょうね。舞台でやって欲しいものですが、脱がなくちゃいけないのが障害かも(笑) その頃にそんなに多くの「エロティックオペラ」が書かれているのですか!どこかでまとめて上演してくれるなら私も行きたい(笑)
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