マスネーのオペラ「ヴェルテル」

2007年9月16日、ヴィーン国立歌劇場にて。
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今回滞在中のヴィーンはロンドンと同じく快晴で、温度は暑くもなく寒くもない理想的な天候でした。自然史博物館の中央ドームの上に聳え立つ像も青空を背景にくっきり。これはアポロでしょうか。
中の絵画は割と最近見たばかりだし上天気なのでこの博物館をパスして久し振りにシェーンブルン宮殿まで行って庭園を散歩しました。Tシャツ一枚で快適。芝生では人慣れした茶色のリスが動き回っています。イギリスでもスコットランドではこのリスを見ることが出来ますが、イングランドでは北米から持ち込まれた灰色のリスに駆逐されて普通には見ることが出来ません。
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ニューイヤーコンサートの映像にも登場したことのある温室もついでに見ましたが取り立てて見るべきものもないようです。それより温室の外に植えてあったこの木に注目しました。赤系と黄色系の花が同時に咲くんですね。Lantanaという名前だそうです。
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さんざん歩いた後、午後の遅い時間に庭園内の動物園に近いレストランで食事して夜のオペラに備えました。

Werther
Lyrisches Drama in vier Akten von Edouard Blau, Paul Milliet und Georges Hartmann nach dem Roman ‘Die Leiden des jungen Werthers’ von Johann Wolfgang von Goethe

Musik: Jules Massenet
Dirigent: Miguel Gomez-Martinez
Inszenierung: Andrei Serban
Bühne: Peter Pabst
Kostüme: Peter Pabst, Petra Reinhardt

Werther: Stefano Secco
Albert: Adrian Eröd
Le Bailli: Janusz Monarcha
Charlotte: Elina Garanča
Sophie: Jane Archibald
Schmidt: Benedikt Kobel
Johann: Dan Paul Dumitrescu
Orchester der Wiener Staatsoper
Chor der Wiener Staatsoper

このプロダクションは2005年がプレミエで、そのときはマルセロ・アルバレスとガランチャの共演で、DVDにもなっています。そのDVDで予習をしてこれに臨んだのでした。
舞台は最初から最後まで中央に幹周り10mぐらいありそうな大木が設置され、木を利用した2階部分と階段があります。第1幕は夏なのでしょう、緑の葉が豊富に付いています。第2幕ではそれが黄葉になり、第3幕第2場ではすべての葉は落ち、雪もうっすら積もってヴェルテルが恋をしてから失恋で自殺するまでの時間の経過が表現されます。時代設定は1950年ぐらいでしょうか、古めかしい白黒TVが出てきます。ドラマの進行はわかりやすく、演劇としては十分こなれたものという印象を受けました。

歌手では事前に、当初予定されていたタイトルロールのGiuseppe Sabbatiniが降りてStefano Seccoが代役となることを知り、ややがっかり。セッコはこの6月にリセウの「マノン」で聴いたばかりだし、サバティーニは昨年12月に「ロメオとジュリエット」で聴いて以来注目していたテノールだったからです。案の定舞台にセッコが出てきて第一声を聴くとリセウの時よりも悪い出来と思いました。しかし第2幕、第3幕と進行していくとだんだん調子を上げていき、彼本来の美声が聴けるようになりました。第3幕ではガランチャともよくバランスして迫力のある歌唱も聴けました。しかしそれでも完璧じゃない出来です。前夜のホセ・ブロスのすばらしい記憶が鮮明なことも影響していますが、時折声が汚れる感じがぬぐえません。この人は昨年5月にパリで見た「シモン・ボッカネグラ」で初めて経験したのですが、伸びのある美声が印象的でした。これで3度目ですがだんだん好感度が落ちてくる感じでちょっと残念です。
そして、ガランチャ演じるシャルロッテ。この人も第1幕は余り調子がよくなく、他の歌手も総じて調子が乗らない様子でどうなるのかと心配しましたが、やはり第2幕から調子が上がり第3幕では絶好調となりました。多分負担のかかる第3幕になるまではちょっと抑え気味に歌っていたのでしょう。その第3幕に設定したクライマックスでは彼女の持てるパワーを全力投入で、特に第1場でヴェルテルに恋い焦がれての葛藤場面では迫真の歌唱。彼女を特徴付けるあの深みと潤いのある声が朗々と響き、演技力も相俟って感動の舞台となりました。あの声を出し続けるのはやはりスタミナを要するんですね。前半をセーヴしないと無理ということでしょう。
アルベールを演じるアドリアン・エレードはなかなか優れた座付きのバリトンで、聴くのはこれで4度目ですが、今回はまあまあという調子で、1月の「コジ・ファン・トゥッテ」ほどの出来じゃありませんでした。
ミゲル・ゴメス=マルティネス指揮の管弦楽はすばらしい出来で、第3幕の盛り上がりに大いに寄与しました。叙情性と劇性のメリハリがはっきりしておりドラマの盛り上げ方は職人技と感じました。DVDでは味わえない実演の迫力が最大限に発揮された印象です。それにしても留守部隊オケ、今日も美しい音色で立派な演奏です。
写真は左から指揮者Miguel Gomez-Martinez、Elina Garanča、Stefano Seccoです。
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あらすじ
アルベールと婚約中のシャルロッテを見初めたヴェルテルは愛を告白するが、亡き母の前で約束した結婚だから止めるわけにはいかないとシャルロッテはそれを拒絶する。
結婚後に再会したとき再びシャルロッテに迫るがまた拒絶。その間のやりとりを垣間見た夫のアルベールは彼女の揺れ動く心に疑念を抱く。絶望したヴェルテルは自殺を決意し、アルベールにピストルを貸してくれと依頼する。彼はヴェルテルの意図を知りながら敢えて貸す。永遠の別離の意志を聞かされたシャルロッテは気になってヴェルテルを捜し回り、ベッドに血だらけで横たわる彼を発見。感情をむき出しにした彼女は息絶え絶えのヴェルテルと激しく抱き合いキスを交わす。妻の後をつけて物陰から様子を見ていたアルベールはショックを受け、ヴェルテルが絶命した後泣きながら取りすがってくるシャルロッテを振り払ってその場を去る。
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by dognorah | 2007-09-19 20:12 | オペラ
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