グリュックのオペラ「トーリードのイフィジェニー」

2007年9月10日、ROHにて。

Iphigénie en Tauride
Tragedie in four acts
Music: Christoph Willibald Gluck
Libretto: Nicolas-François Guillard, after Guymond de la Touche's Iphigénie en Tauride, based on Euripides

Conductor: Ivor Bolton
Director: Robert Carsen
Set and Costume Designs: Tobias Hoheisel
Lighting: Robert Carsen and Peter Van Praet
Choreography: Philippe Giraudeau
The Royal Opera Chorus
The Orchestra of the Age of Enlightenment

Iphigénie: Susan Graham(メゾソプラノ)
Oreste: Simon Keenlyside(バリトン)
Pylade: Paul Groves(テノール)
Thoas: Clive Bayley(バス)

ロイヤルオペラハウスの今シーズン幕開けは例年になく早い本日となりました。ロバート・カーセンによるこの新作プロダクションはシカゴ・リリックオペラおよびサンフランシスコオペラとの共同制作で、シカゴでは一足先にタイトルロールに同じスーザン・グレアムで昨年公演されました。

今回はAmphithetreの最前列で聴きましたが例によってスピーカーからの大音量に悩まされました。もうちょっとヴォリュームを下げてほしいものです。ということで歌手の声の大小はよくわかりませんが、歌唱は不満なし。オレスト役のキーンリーサイドは同役をミンコフスキー指揮の録音でも歌っているのですね。今日は声の艶のないところが結構あり、あまり好調とは思えませんでしたが。グレアムは3年前に「ナキソス島のアリアドネ」で作曲家として出演したのを聴いていますがあまり印象には残らなかった人です。今日の歌唱はニュアンス豊かでなかなか立派なものでした。しかし大きい人ですね。他の女性出演者よりも頭一つ分背が高いです。ピラド役のポール・グローヴスはやや太い声質のテノールで心地よい歌唱でしたが、ちょっと一本調子という印象です。
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写真は左から、Paul Groves、Susan Graham、Simon Keenlysideです。

カーセンの演出はDVD以外では初めて見ました。ギリシャ悲劇の緊張感を感じることのできるストイックな舞台という印象を受けましたので一応彼の意図は表現されていると思います。舞台装置はほとんど無く三方を垂直な壁で構成したものです。その壁は1-2幕は黒っぽい色で、登場人物は最初から最後まで黒の現代日常的衣装。コンサートで合唱団が着ているあれで、男性は黒シャツに黒パンツ、女性は黒のワンピース。特別に作る必要もなかったでしょう。小道具は剣のみ。登場人物の動きは様式化されていて戦いの場面も単に刺す動作を各自がやるだけ。時々壁や壁の下から水が出てきます。血を表しているのでしょうか。第3-4幕は壁が白っぽくなるだけです。
c0057725_8193597.jpgしかしこの舞台、三つのオペラ劇場の共同制作にしてはあまりにもチープです。観客の想像力が頼りなのでしょうが、はっきり言ってコンサート形式に毛の生えたようなもの。初日なのでカーテンコールではカーセンが登場しましたが、案の定ブーを浴びせられました。私も浴びせた口ですが。左の写真はブーに憮然とする(?)Robert Carsenです。
オーケストラはとても上手く、満足すべき出来でした。このオケをガーディナー以外の指揮者が振ることもあるのですね。イヴォール・ボルトン、7月のドン・ジョヴァンニに続いての登場で、有名ではないですがしっかりした職人という印象です。

あらすじ
シュトラウスのオペラ、エレクトラの続きの話です。
ミケネーの王アガメムノンの娘イフィジェニーは昔、神を鎮めるために生け贄にされたが生きていて今はスキタイのトーリードというところにあるディアナ神を祀る神殿で神官をしている。スキタイは嵐に襲われており、怒れる神を鎮めるために犠牲を捧げるようにスキタイ王トアスはイフィジェニーに命令する。そこへ部下から難破した船から海岸にたどり着いた二人のギリシャ人を捕らえたという報告が入り、丁度おあつらえ向きということでその二人を犠牲にすることにし、身柄はイフィジェニーに預けられる。その二人はイフィジェニーの兄弟のオレストとその親友ピラドで、身分を隠しているのでイフィジェニーにはわからない。イフィジェニーは前夜に、自分の父アガメムノンが妻クリュタイムネストラによって殺される夢を見ていたので、ギリシャ人にミケネーの様子を訊く。すると夢のとおりで、父を殺した母は息子オレストによって殺されたことを知る。それを聴いたイフィジェニーはこのギリシャ人のうち一人を密かに逃がし、妹エレクトラ宛の手紙を託そうと考える。最初はオレストを指名して逃亡させようとしたが、母親を殺して罪の意識に苛まれているオレストは死を願望しており、懇願してピラドを代わりに逃がすようにする。
しばらくして、捕虜の逃走を知ったトアスがオレストを直ちに犠牲にするようイフィジェニーに迫る。仕方なしに神官登美子達が犠牲の儀式を進行させ、まさに剣でオレストを刺そうとしたときにオレストが姉のイフィジェニーのことを口走り、彼女は彼の正体を知ることになる。王が来て早く殺すように催促したときにギリシャ兵を連れて戻ってきたピラドが王を殺す。戦いが終わったとき、ディアナの声が響き、オレストの罪を許すこと、彼はミケネーに帰って王となるべきことが告げられる。
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by dognorah | 2007-09-12 08:21 | オペラ
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