2007年7月17日、ROHにて。
Così fan tutte, ossia La scuola degli amanti: Opera buffa in two acts Music: Wolfgang Amadeus Mozart Libretto: Lorenzo da Ponte Conductor: Colin Davis Director: Jonathan Miller Set Designs: Jonathan Miller Lighting: Jonathan Miller and John Charlton The Royal Opera Chorus The Orchestra of the Royal Opera House Ferrando: Matthew Polenzani Guglielmo: Lorenzo Regazzo Don Alfonso: Thomas Allen Fiordiligi: Dorothea Röschmann Dorabella: Elina Garanča Despina: Rebecca Evans このプロダクションは2004年9月に初めて見ましたが、現代に置き換えた演出です。全員携帯電話を持っていて、第1幕で登場する姉妹はそれぞれTextによるチャットでも楽しんでいるのか夢中になっています。グリエルモになびいたドラベラの写真を携帯で撮ってフェランドに証拠として見せるとか、二人が出征するシーンではCNNの取材陣が来たり、結婚届の書類はパソコンで作るなど現代技術が大いに披露されます。服装も背広、迷彩服、タトゥーに革のパンツなど。開始直後の3人の男達の議論は左側客席の中に置かれた食卓から始まります。彼等はすぐに観客席の仕切りを乗り越えて舞台に出てくるのですがおもしろい設定ではあります。ただし舞台は上の写真のような簡素な(チープな)物で最初から最後まで変化はありません。 3年前もトーマス・アレンがドン・アルフォンソ役でした。彼の歌唱は今回も悪くはありませんが当時の方がもっと声に張りがあったような気がします。しかし演技は相変わらず上手いですねぇ。フェランド役もグリエルモ役も今回の歌手はレヴェルが高く楽しめました。フェランドは第1幕ではクッションに寝転がったままアリアを歌うのですが弱音でも終始安定した音程で魅力的な声を響かせ、歌唱のうまさに感心しました。いいテノールです。 フィオルディギリを歌ったレシュマンは高音域は終始すばらしい歌唱でした。しかし低音域になるとやや違和感があり、特に第1幕ではその印象が強かったです。第2幕ではかなりそれは改善されましたが。しかし存在感のある声です。ドラベラよりアリアが多い分しっかりしたソプラノでないとこのオペラは持ちませんが彼女なら大丈夫ですね。 ドラベラは期待のガランチャですが、声はよく出ていたもののちょっと彼女のイメージとは違います。昨年9月に「皇帝ティートの慈悲」で初体験したときのたっぷりした潤いと深みのある声は、今年1月にヴィーンで見たドラベラでもかなり聴けましたが、今回はそれが非常に少ないと感じました。ただ、声には張りがあり、今回の演出で強調されている蓮っ葉なドラベラ役用に敢えて明るい声にしたのかも知れませんが。悪くはないものの私にはちょっと期待はずれではありました。 デスピーナを歌ったレベッカ・エヴァンスは結構上手いのですが非常にというほどではありません。声はよく出ていますが歌唱が平坦であまりおもしろみがないかなという感じです。 管弦楽は特にいいというわけではありませんが流麗に演奏されて歌手の邪魔にならないというか極めて自然な音楽作りでした。第1幕のデスピーナのアリアでは木管の音にちょっと違和感が感じられましたが。 演出は笑どころ満載でよくこなれており、現代風でも全く問題なくオペラとしては非常に楽しめました。二人の姉妹の性格はきっちり描き分けられていて意図はよく伝わります。前回の公演では最後に、浮気した相手同士手をつないで退出したようにおぼろげに記憶しているのですが今回は全員がばらばらに舞台奥に引っ込みました。 写真は左からElina Garanča、Matthew Polenzani、Dorothea Röschmannです。
by dognorah
| 2007-07-18 20:01
| オペラ
|
Comments(6)
わあ、ガランチャ可愛いですね~
私は生ガランチャは初めてなので、とても楽しみにしています。dognorahさんの大のお気に入りの彼女を聴くためにこの見飽きたプロダクションに2回行くんです。キャンセルだけはしませんよう・・・ dognorahさんは何回行かれるんですか?
0
もう、ご覧になられたんですね。最終日に観にいく予定で、僕のお目当てはレシュマンです。ガーディアンでは彼女の評価が高かったので、楽しみです。でもdognorah同様、所々できつそうな箇所もあったとありました。
前回、ドン・アルフォンソのスーツはマークスのものだったとか。今回は、ギーヴズ・アンド・ホークス、という記事を数週間前に読んだように記憶しています。間違っていたらごめんなさい。
Commented
by
dognorah at 2007-07-19 09:34
ロンドンの椿姫さん、これ可愛く撮れているでしょう?自分でも気に入っています。今回は葬式の時期と重なって安い席は取れませんでしたので既にかなりの出費です。だからこれ一回きりです。
Commented
by
dognorah at 2007-07-19 09:45
守屋さん、レシュマンは確かに完璧ではなかったですが聴く価値は十分にあります。前回のことはパンフレットにも記述がないので知りませんが、今回の男性陣のスーツはギーヴズ・アンド・ホークス提供と明記してありますね。
Commented
by
Sardanapalus
at 2007-07-20 22:07
x
おお、若い歌手での「コジ」は見た目がしっくり来て良いですね!演技の上手いアレンがアルフォンソなのも羨ましい。しっかしガランチャ可愛いなぁ~。レシュマンもいい笑顔ですね♪
Commented
by
dognorah at 2007-07-21 07:29
Sardanapalusさんは前回公演時にいなかったとすればこのプロダクションは見る機会がなかったですね。
|
最新の記事
以前の記事
2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 カテゴリ
プロフィール
ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
検索
その他のジャンル
ブログパーツ
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||