ナタリー・ドゥセの「マノン」公演

2007年6月27日、バルセロナ・リセウ劇場にて。

Catalunyaの首都BarcelonaにあるGran Teatre del Liceuは素敵な劇場という話は聞いていたので是非経験したかったのですが、見たい演目と聴きたい出演者があってやっと実現しました。ここはAキャストとBキャストの公演があり、それを二日連続で公演する場合があるので両方を見ました。今日はまずAキャストの公演を報告します。

Manon:Opéra comique en cinc actes
Musica:Jules Massenet
Llibret:d'Henri Meilhac i Philippe Gille basat en la novel•la L’histoire du chevalier Des Grieux et de Manon Lescaut d’Antoine-François Prévost

Direcció musical:Victor Pablo Pérez
Direcció d'escena:David McVicar
Direcció dei cor:José Luis Bassa
Escenografia i vestuari:Tanya McCallin
Il luminació:Paule Constable
Coreografia:Michael Keegan-Dolan

Manon Lescaut:Natalie Dessay
El cavalier Des Grieux:Rolando Villazón
El comte Des Grieux:Samuel Ramey
Leseaut:Manuel Lanza
Guillot de Morfontaine:Francisco Vas
Senyor de Brétigny:Didier Henry
Poussette:Cristina Obregón
Javotte:Marisa Martins
Rosette:Anna Tobella
La minyona:Claudia Schneider
L'hostaler:Lluís Sintes
Guàrdies:Jordi Mas, Gabriel Diap
Sergent:Leo Paul Chiarot
Arquer:Ignasi Campà
Jugadors:Miguel Ángel Currás, Josep L1uís Moreno, Ignasi Gomar

舞台はENOのためにDavid McVicarが演出したものでLiceuとChicago Lyric Operaとの共同制作となっています。場面転換は全く行われず小道具の配置だけで各シーンを表現するのですが特に違和感はありません。現代の観客は想像力が豊かですから(^^)
舞台後方には劇中劇としての観客席があり大抵のシーンで何人かの観客がいて舞台上の演技に対して拍手したりします。時には奇声を発して周りの観客から「シー!」と言われたりと芸も細かい。オペラが始る前から幕が上がっていて19世紀の古典的衣装を着けた俳優たちがうろうろしており、指揮者が登場すると舞台前面に集ってきて我々本物の観客たちと一緒になって拍手をして指揮者にエールを送ったりします。序曲の間は彼らが舞台上でダンスをします。また、第二幕のグリューのアパートで暮す二人のシーンでは訳のわからない男女が5人以上いて衝立の陰などに隠れて二人の挙動を覗いていたりします。しかしなぜかわからないながらも特に違和感も感じずそのままオペラを楽しめるのがおもしろいところ。
ROHの「リゴレット」で見せたマックヴィカーのエロ好みはここでも存分に発揮されていて男女の性行為や半裸の女性、全裸の男性などが登場します。主役のマノンでさえ裸になって入浴するシーンで座席の位置によっては胸が見え、事実私の席からはドゥセの小振りな乳房が見えちゃいました。また、金持のGuillotとSenyorはそれぞれ頬の違う場所に大きなほくろをつけていますが、彼らが手をつけた女性はすべて乳房や顔にほくろをつけています。マノンも第三幕になると顔と乳房の両方にほくろをつけて彼らと寝たことを表現しています。オペラグラスを使わないとわからないような芸の細かさです。
とにかく猥雑ながらもマスネーのオペラはちゃんと表現されているし、やはり親の言いつけどおり修道院に行くべきだったと思わせる奔放な女マノンがしっかり印象づけられるなかなか優れた演出と思います。少なくとも私は好きです。

そしてタイトルロールのナタリー・ドゥセですがその演出に沿ったキャピキャピしたマノンを思う存分表現する演技であり歌唱でした。各アリアは申分ない声でしっかりと歌われ会場はブラヴォーの嵐。ほんとにいい声です。
対するロランド・ビヤソンも登場直後は声の潤いがなかったもののすぐいつもの調子を取戻してこれまた美声を力一杯発揮してこちらもブラヴォーをいっぱい引出していましたがその中に少数のブーも強く響いていましたので不満を感じた人も若干いたようです。しかし低音のブーはよく響き渡るものですね。同行の友人の解説によるとこの二人の歌手はあまりドラマの進行や相手のことは考えずに私が私がと声を張上げてしまうところがあり、特にビヤソンは自分の美声に酔って歌唱表現力がお座なりになっているとのこと。私はオペラというものはあまり演劇性を重視しない質だしビヤソンの声はそれほど好きでもないこともあって気になりませんがプロな方々には我慢できないようです。それにしてもトータルのブラヴォーの量は翌日のBキャストに比べると遙かに多く、大多数の観客は私と同じような考え方かも知れません。
グリューの父親を演じたサミュエル・レイミーは豊かな低音を響かせますが、声を大きくしすぎたのかかなり音程がふらついていました。年のことを考えてもう少しヴォリュームを絞ればいいのに、とは同行の友人の批評です。これは私も同感。
その他の役ではレスコーを歌ったマニュエル・ランサがしっかりした声と歌唱、またGuillotを歌ったフランシスコ・バスも好演。

指揮のビクター・パブロ・ペレスは初めて経験しましたが、美しいマスネーの音楽をたっぷり鳴らしながらも歌手に気を使って歌いやすいように指揮をしている印象です。オケはかなり若いメンバーですが、実力はROHと同程度か。
このホールは大きさ的にはROHと似たようなものですが音響は遙かに優れています。歌手の生の声がとても聴きやすく、こういうのを聴くとROHのマイクを使用した音がほんとに疎ましくなります。
ところで、字幕なんですが舞台上方のサータイトルはカタルニア語のみです。ストール席やボックス席ではROHやヴィーンと同じ字幕システムがあって、カタルニア語、スペイン語、英語から選択できるようになっていますが、私が座った3階席はそのそのシステムがついていないのでフランス語の歌唱を聴くのみでした。

写真は左から指揮のVictor Pablo Pérez、Natalie Dessay、Rolando Villazón、Guillot de Morfontaineを歌ったFrancisco Vasです。
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by dognorah | 2007-07-02 03:07 | オペラ
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