2007年3月12日、ROHにて。
The Tempest: Opera in three acts Music: Thomas Adès Libretto: Meredith Oaks after Shakespeare Conductor: Thomas Adès Director: Tom Cairns Set Designs: Tom Cairns and Moritz Junge Costume Designs: Moritz Junge Lighting: Wolfgang Göbbel Choreography: Aletta Collins 歌手 Prospero: Simon Keenlyside Miranda: Kate Royal Ferdinand: Toby Spence Caliban: Ian Bostridge Ariel: Cyndia Sieden King of Naples: Philip Langridge Antonio: Donald Kaasch Sebastian: Jonathan Summers Trinculo: David Cordier Stefano: Stephen Richardson Gonzalo: Graeme Danby 2004年にプレミエだったものの再演です。当時は私はパスしたので今回が初めての経験です。作曲家自身が指揮しました。筋はシェークスピアのものをほぼなぞったものでした。 音楽は第1幕はかなりけたたましい音が出るもののやや退屈、しかし第2幕と第3幕はなかなか聴き応えのあるもので、劇の内容ともよくマッチしています。 歌手はキーンリーサイド始め全て持ち前の声がよく出ていたように思います。初めて聴くボストリッジの声はCDや放送で知っている声の先入観からすると道化た役柄にはちょっと違和感を感じましたが。ROHデビューのケイト・ロイヤルもはじめて聴く人ですがいい声をしています。Arielを歌ったアメリカのソプラノ、シーデンは曲の要請に応えて最高音域を出してはいたものの、精一杯という感じで聴いていてあまり気持ちのいいものではありません。尤もそういう音域が悠々と出せる人材はほとんどいないでしょうけれど。 舞台装置はよく出来ています。プロローグにおける船の沈没シーン(映像と思われる)と水中を沈んだり浮き上がったり泳いだりする人のワイヤーアクションがとても効果的です。背景や点在する爬虫類なども雰囲気があります。舞台中央にずっと存在し、開いたり回転したりするラップトップPCのような造作物も使い方が上手く、背景や周りの具象的なものが作る雰囲気の中で抽象化された空間を提示するなどアイデア一杯の演出でした。 アデスのオペラと言えば昨年6月にコンサート形式で「Powder Her Face」を経験しましたが、あの時は採用した台本とよくマッチした作品と思ったものです。しかし今回はなぜ古典的なシェークスピアを使う気になったのかいまいちわかりませんでした。 写真は、左からラングリッジ、ボストリッジ、キーンリーサイド、アデス、シーデン、ロイヤル、スペンスです。
by dognorah
| 2007-03-13 22:09
| オペラ
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Comments(9)
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守屋
at 2007-03-14 07:48
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こんばんわ。僕も昨晩の初日を観てきました。3年前の初演の感想を日記に書いていおいて、観に行く前に読み返しました。今回も、前回心に染みた、第3幕の五重唱が一番気に入りました。ケイト・ロイヤルさんは背が高いですね。どうやら、ロイヤルでパミーナを歌う予定らしいですが、彼女の背につりあうタミーノはいるのでしょうか?
昨夜は、政治家のポーティロ、ロイヤル・バレエのダンサーも何人かいて、会場は華やかでしたね。
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dognorah at 2007-03-14 09:47
守屋さん、こんばんは。確かにあの5重唱は聴かせどころですね。ケイトは写真で見る限りスペンスよりは低いですね。彼がタミーノを歌えるかどうか知りませんが。
ポーティロやバレーダンサーが来ていたんですか。気付きませんでした。ポーティロは今やBBCのロイヤルオペラ放送の解説者として有名ですね。それにしてもこの現代的なオペラでほぼ満員の盛況でした。
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Sardanapalus
at 2007-03-14 21:27
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レポートお待ちしてました!ケイト・ロイヤルは見た目もミランダに合ってますね。私も1幕はアリエルの超音波とプロスペロの怒っているところしか印象に残ってないですが、あの5重唱と最後のカリバンと王冠の場面はかなり好きです。批評をあつめたページをTBさせていただきましたので、よろしくお願いします。
>スペンスよりは低いですね。彼がタミーノを歌えるかどうか知りませんが タミーノはスペンスの当たり役のひとつだと思いますよー。ROHが彼をキャスティングしてるかどうかは分かりませんが、次の再演もパパゲーノはキーンリーサイドだそうですし、ロイヤルがパミーナ歌うなら、何とか見てみたいものです。 >現代的なオペラでほぼ満員 流石はイギリスの星(笑)アデスですね。
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dognorah at 2007-03-15 10:08
Sardanapalusさん、TBありがとうございます。スペンスは確かにブリュッセル、サンタ・フェ、マドリードでタミーノを歌っていますね。ROHのキャスティングは多分夏ごろに発表になるでしょう。
私も初日に行きました。
皆すばらしい歌唱で、楽しめました。来週もう一回行きます。 dognorahさん、ボストリッジは初めてだったのですね。私は嫌というほど聴いてますが(好きなのでもちろん嫌にはなってません)、ウィグモア・ホールなどのリサイタルなどは又かなりちがいますので、機会があれば是非どうぞ。 トビー・スペンスのタミーノ、私がROHで心待ちにしているものです。翻訳ものの嫌いな私がENOの魔笛に行ったのは彼聞きたさです。 テンペストのあのセットは「本」だと前のときも思ったのですが、なるほどパソコンかもしれませんね。
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dognorah at 2007-03-16 22:41
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stmargarets
at 2007-03-22 22:15
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私も土曜日に観てきました。
観ている間はこの「本vsPC論争」?(笑)の事は忘れていましたが、プロスペローにとって本は重要な物なので、本だと思い込んだまま見てしまいました。覚えていればもっとよく観察できたのに、シマッタ。 もう一度行かれるかた、是非真相を解明してきてください!
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stmargarets
at 2007-03-22 22:16
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追伸、
また記事お借りします。
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dognorah at 2007-03-22 23:13
stmargaretsさん、皆さんがそう仰るということは本の方が正解かも知れませんねぇ。
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