2007年2月26日、ROHにて。
ORLANDO:Opera in three acts Music: George Frideric Handel Libretto: Anonymous after Carlo Sigismondo Capece's L'Orlando and Ludovico Ariosto's Orlando furioso Conductor: Sir Charles Mackerras Director: Francisco Negrin Designs: Anthony Baker Lighting: Wolfgang Gobbel Associate Director and Choreographer: Ana Yepes The Orchestra of the Age of Enlightenment Orlando: Bejun Mehta (a knight) Angelica: Rosemary Joshua (Queen of Cathay, in love with Medoro) Medoro: Anna Bonitatibus (an Aftican prince, in love with Angelica) Dorinda: Camilla Tilling (a shepherdess) Zoroastro: Kyle Ketelsen (a magician) このプロダクションは2003年がプレミエでしたので4年ぶりに再演です。私は4年前はパスしたので今回が初めてでしたが、歌も舞台もとにかくすばらしい公演でただただ感心するばかり。ヘンデルのオペラを大いに堪能しました。 歌手は全て文句の付けようのない出来で、特に主役のベジュン・メータは、カウンター・テノールでここまで凄い歌唱が出来るのかと唖然としました。まるでベルカントオペラのように高音を張り上げて歌えるのです。声は低音から高音まで非の打ち所のない美しさ。表情も含めた演技も上手い。 ソプラノ二人もお互い張り合うように上手い歌唱を披露してくれました。ローズマリー・ジョシュアは初めて聴く人ですが潤いのある声で上手い歌唱の美人歌手ということでしっかり記憶に刻まれました。ティリングは何度も聴いている人ですが今夜もすばらしい高音を聴かせてくれました。 メゾソプラノのボニタティブスは昨年6月にツェルリーナ役で聴いたことがあります。それほど好きな声ではありませんが歌唱は大過なくこなしていました。 バリトンのケテルセンがまたすばらしく、彼がこんなに実力者だとは初めて知りました。2005年9月にMaskaradeで聴いたことがあるだけでしたが当時はそれほど印象的ではなかったのです。 舞台は円形の回り舞台を4つに区切って必要に応じて回転させるもので、全体としてもなかなか工夫が凝らされて楽しめるものです。衣装も違和感なく溶け込んでいます。あまりわけがわからないのは、3人のダンサーがエロス、ヴィーナス、マーズに扮してしばしば登場するところ。ヴィーナスとマーズは台詞にも出てくるのでいいとして、エロスがしょっちゅう歌手たちにちょっかいを出す場面はどうかなと思います。かなりしつこい。ヴィーナスは上半身ヌードで登場しますが、乳房の美しさで採用されたのではないかと思うくらいかっこよかった。写真を見ると結構美人さんでもあるのですが。とにかく舞台装置も含めてなかなかよく出来たプロダクションと思います。 写真は、左からボニタティブス、ジョシュア、マッケラス、メータ、ティリング、ケテルセンです。 あらすじ Cathayの女王アンジェリカはかつて命を救ってくれた騎士オルランドに謝意を示すため結婚を約束するが、しばらく会わないうちに女羊飼いのドリンダが怪我の介抱をしていたアフリカの王子メドロに出会い、自分も介抱するうちにメドロを愛してしまう。ドリンダもメドロを愛しているため二人で取り合いとなるがメドロはアンジェリカを選ぶ。 オルランドはアンジェリカを探し回るが見つけたときは彼女がメドロといい仲になっているのに失望し怒り狂う。あまりのことに正気を失いドリンダをアンジェリカと間違えたり乱暴狼藉をしたり挙句の果てにメドロを刺し殺し、次いでアンジェリカも殺す。疲れ果てて眠りにつくが、永い眠りの後に魔法使いゾロアストロに覚醒されようやく正気を取り戻す。メドロはまた彼が乱暴な振る舞いをするのではないかと戦々恐々とするがゾロアストロの魔術で生き返ったメドロとアンジェリカが現れるとオルランドは平静心を取り戻し二人の結婚を受け入れて自分はまた新たな人生を歩もうと決心する。
by dognorah
| 2007-02-27 21:32
| オペラ
|
Comments(14)
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助六
at 2007-02-28 05:12
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94年にクリスティー指揮カーセン演出、01年にマクリーシュ指揮演奏会形式で聴いたことがあります。カストラートが創唱したオルランド役は、前者がバードン、後者がミンガルドとCT苦手の小生には幸い2度とも女声でした(笑)。今はCTのレヴェルが上がってるから、いい歌唱も多いでしょうね。オルランドの狂乱アリアがユニークですよね。カンタービレ-カバレッタ形式の祖先はこの辺かもなどと思いながら聴きました。
ジョシュアの名前初めて知ったのは、96年エクスのクリスティー指揮ヘンデル「セメレ」ででした。当時も中々評判になってましたね。後ろ姿だけど全裸の披露もありましたよ。10年を経ても歌・容姿とも健在と伺い嬉しいです。 マッケラスの指揮は如何でした?ピリオド演奏のパイオニアの一人という面もある人だけど、個人的にはヤナーチェクで示す人が変わったような奇跡的名演と他のレパートリーでの凡庸さの落差が不思議な指揮者なもので。
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2003年に観ましたが、楽しい回転舞台ですよね。
プレミエのときは、オーランド役はたしかメゾソプラノのAlice Cooteでしたが、今回はカウンターテノールということで楽しみです。助六さんとちがい、私はあの不気味なCTが大好きなのです。 ローズマリー・ジョシュアは、助六さんの仰る通り、ENOのセミレで大評判になった人です(裸も大きな理由でしょうが)。以来ちょこちょこロンドンでは出ていて何度か聞いたことはありますが、本格的にROHに出るのは珍しいので、これも楽しみです。ヘンデルのオペラは長いので、下手だと苦痛ですものね。 ヘンデルと云えば、3月末にアンジェリカ・キルシュラーガーとダルカンジェロが出る「Ariodante」もありますが、行かれますか?
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守屋
at 2007-02-28 07:26
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初演時に2回観たので今回はパスしているんですが、今日のThe Evening Standardの五つ星といい、行っておいたほうが良さそうですね。
前回オルランドを歌ったアリス・クーツはけっこう好きなんですが、オルランド役は彼女の声には低すぎたように感じました。ロイヤル・オペラで初めて主役だったにもかかわらず、評価が厳しかったからでしょうか、あれ以来彼女の名前をROでは見ませんね。 2回目は、クーツが体調不良で欠場、代役はメドロ役のメータが務めました。これが非常に良かったです。最後、舞台に降り注ぐ花びらが綺麗でした。 ところでダンサーについて。前回あれだけ「邪魔」と叩かれたのに、まだいるんですね。噴飯ものだったのは、ヴィーナスの写真を掲載したどこかの新聞が、ご丁寧にも乳首を削除していました。あるべきものがない写真ほど不気味なものはないし、そんなことするなら掲載しなければいいのにと思った次第です。
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ガラちゃん
at 2007-02-28 09:03
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あれ、dognorahさん、いらっしゃってたんですか。私も昨日行ったんですよ。体調悪くて、休憩中もほとんど座席にうずくまっていたから、お会いできなかった。。。残念。 オペラの感想はdognorahさんと同感です。風邪も忘れるくらい、印象的でした。2幕最後のオルランドの狂乱の場面は特に素晴らしかったですね。
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dognorah at 2007-02-28 20:14
助六さん、私もCTは苦手でしたがメータだったら何度でも聴けます。やはり最高の技術を持っている人を経験しないとだめだということを再認識しました。
ジョシュアは10年以上前からご存知でしたか。それを憶えていらっしゃるというのはよほど感銘されたんでしょう。私もこれから彼女の出演するものを漁って行きたいと思っています。 オケのことを書くのを忘れていましたが、序曲をはじめ、出だしの演奏はテンポといいアンサンブルといいもたもたしてちょっといただけなかったです。でも、時間の経過と共にどんどんよくなって非常に楽しめました。長時間のオペラなので持ち直してくれてよかったですよ。 彼はお国の音楽はやはり得意なようですね。ブローチェク氏の旅もUK初演のときは指揮は若いチェコ人でしたが彼が監修したそうです。
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dognorah at 2007-03-01 01:02
ロンドンの椿姫さんは前回見て今回もご覧になるということで比較する記事が期待できそうですね。楽しみにしています。
3月のアリオダンテはちゃんと切符を取ってあったのですが、その日のパリからの列車をうっかり遅いものにしてしまったので見れないのですよ(泣) どなたか代わりに行ってくださる方いませんかねぇ。席はストールの一番後ろです。
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dognorah at 2007-03-01 01:18
守屋さん、ROHのHPで2003年の公演と称してメータとティリングの舞台写真が掲載されているのですが、お陰で謎が解けました。メータは代役だったのですね。
不評だったダンサーの出演はあるいは演出家の意地かもしれませんね。
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dognorah at 2007-03-01 01:24
ガラちゃんさんもおられたのですか!会えなくて残念でした。風邪、速く直るといいですね。次回はテンペストですかね。私は12日に参ります。
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ガラちゃん
at 2007-03-01 08:41
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風邪は今日、ほぼ全快しました。今夜はマダム・バタフライに行ってきましたが、このオペラは日本人にはどうも居心地が悪いですね。歌手もオケもいまひとつで、あまり楽しめませんでした。テンペストは15日に行きます。明日、ムストネンのゴルドベルク変奏曲(@QEH)、来週はキーシンとベルリンフィルに行きます。
先週末、チューリヒでドンカルロとラ・ボエムを見てきましたが、ドンカルロがとにかく素晴らしかった! ダニエラ・デッシ、ディンティーノ、レオ・ヌッチ、コロンバーラ。全員絶好調で、ウェルザー=メストの振るオケも本気度120%。いやー、感動。 ボエムもアルバレスが絶好調で好演でした。ただし、ファンティーニのミミは健康そのものでしたが。。。 先週はトリオ・ド・オグビリエのコンサートにいらしゃってくださって、ありがとうございました。素人の演奏ゆえ、By the Thamesに評を載せていただくレベルにはありませんが、どっか隅っこの方にご感想をお書きくだされば無上の喜びですーーー。
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dognorah at 2007-03-02 00:36
ガラちゃんさん、風邪が直ってよかったですね。私もマダム・バタフライは居心地が悪いです。最後には泣いてしまうし。今回はリハーサルが当れば行くというスタンスでしたが外れました。キーシンとBPOではお会いできそうですね。
チューリッヒのドン・カルロもよかったんですね。ここでもディンティーノがエボリでしたか。アルバレスはロンドンの後そっちに行って歌っていたとは忙しい人ですね。 トリオ・ド・オグビリエのコンサートは知人が出ている分書きにくいんですよね・・・
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Sardanapalus
at 2007-03-03 11:48
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やはりタイトルロールがいいと嬉しいですよね。メータは聞いたことないので何とも言えませんが、この演出の「オルランド」はいつか見たいと思っています。次の再演はいつかなぁ~。
マッケラスの指揮はしばらく聞いていませんが、お元気そうでしたか? >ケテルセンがまたすばらしく、彼がこんなに実力者だとは初めて知りました この人はなかなか不思議な人ですよね。とてもうまいと思うのですが、まとまりすぎてしまって印象に残りにくいというか。「魔笛」の弁者で初めて聞いたとき非常に気に入ったのですが、フィガロはイマイチ…去年プロムスで聞いたレポレッロは演技も歌も良かったです。安定感はありますね。
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dognorah at 2007-03-04 02:33
Sardanapalusさん、マッケラスはいつもの通り足を少し引きずりながらの歩行ですが、元気そうでしたよ。
そういえばあのプロムスでケテルセンが出ていましたね。キンリーサイドに圧倒されてはいましたが。最近どこかで見たはずだと思っていましたが私はTVで見たのでした。
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なつ
at 2007-03-04 05:01
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アメリカの音楽大学でピアノ演奏を選考しているものです。生でいろいろなオペラを体感できるとは!うらやましいです。今、オペラ史を授業で選考してい、いろいろな研究論文を読まされるのですが、オペラを書いた作曲家、聞いている人にとってはそのようなことはどうでもいいのでは?と思ってしまいます。また、ちょくちょくのぞかせてもらいます。
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dognorah at 2007-03-04 21:35
なつさん、はじめまして。オペラを聴くものにとってはある程度聞き込んでくると作曲家の時代背景や先達たちからの影響などオペラ史は結構興味の対象になりえると思います。
これからもよろしくお願い致します。
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