「トリスタンとイゾルデ」公演

2007年1月14日、ヴィーン国立歌劇場にて。

Tristan und Isolde
Handlung in drei Aufzügen
Text und Musik von Richard Wagner

Dirigent: Leif Segerstam
Inszenierung: Günter Krämer
Bühnenbild: Gisbert Jäkel
Kostüme: Falk Bauer
Chorleitung: Ernst Dunshirn

Tristan: Peter Seiffert
König Marke: Kurt Rydl
Isolde: Deborah Polaski
Kurwenal: Peter Weber
Melot: Clemens Unterreiner
Brangäne: Janina Baechle
Ein Hirt: Peter Jelosits
Stimme des Seemanns: John Dickie
Steuermann: Wolfgang Bankl

Orchester der Wiener Staatsoper
Chor der Wiener Staatsoper

約5年振りにこの演目を見ました。パリでポラスキーのトロイ人を見てぜひこの人のイゾルデを聴きたいと思っていたのが意外に短期間でそのチャンスが巡って来ました。
このプロダクションは昨日のコジ・ファン・トゥッテと同様2003年にプレミエだったものです。舞台は象徴的なつくりですが、長方形を多用したモダンなデザインが美しい。第1幕はちょっと最近流行のキチンのイメージを感じさせる淡いトルコブルー、白、黒といった色使いです。
トリスタンが戦闘で殺したアイルランドの将軍モロルドの遺骸を象徴する鎧兜一体が終始舞台に置かれて過去の出来事がトリスタンとイゾルデの二人に心理的な影を落としている様が表現されているなど、わかりやすい演出です。またブランゲーネは最初毒杯を用意するのですが途中で気を変えてもう一方の杯に例の惚れ薬を仕込み、二人が乾杯しようとするときに跳んできて毒杯の方を倒し、仕方なしに二人がもう一方の杯をシェアする設定にしているなど芸の細かいこともやります。わかりやすいといえば第2幕ではメロットが終始柱の陰に隠れてイゾルデを見張っています。トリスタンとイゾルデが愛の交歓を歌う場面では舞台中央が柱と共にプールのように沈み、代わりに情念を表しているのか糸杉と思われる形のものが数本せり上がってくるのも音楽とよくマッチしていると思いました。衣装は女性二人の分だけ作ったのかしらという印象です。イゾルデはたっぷりと布地を使った長いお引きずりのドレスなのに、男声は全て現代風でトリスタンは分厚いコートを引っ掛けての演技のため大汗をかいていました。

歌手では、最初のイゾルデの発声から舞台を支配したポラスキーはさすが。気品のある立ち姿と共にぞくぞくします。しかし第3幕の愛の死ではちょっと声量が落ちてしまって管弦楽にかき消され気味だったのは残念です。
トリスタンを歌ったペーター・ザイフェルトがまたすばらしいヘルデンテノールで、声量があって艶のある声は惚れ惚れしました。コヴェントガーデンでもこういう人がジークフリートを歌ってくれたらなぁと羨望の溜息。最初から最後まで声量もそのままでした。
次いで感心したのがブランゲーネを歌ったJanina Baechle(ヤニナ・ベヒレとでも発音するんでしょうか)。先月聴いたアラベラで端役を歌っていた人です。ヴィーンというところは端役を歌うかと思うと主役級を歌ったりとめまぐるしいですね。ちょっといいなと思ったらすぐ抜擢するのでしょうか。だとすれば歌手にとってはとても励みになりますね。とにかくこの人も終始すばらしい歌唱で、ポラスキーといいコンビでした。
男声陣ではクルト・ライドルが先月聴いたドン・カルロの大審問官のときよりよい出来だったと思います。
残念なのはクルヴェナールを歌った歌手が全くだめで、声量を出そうとすると籠るような声になって聞き苦しくワーグナー向きじゃないです。

しかし今夜の公演で圧倒的だったのはレイフ・セーゲルスタム指揮の管弦楽でしょう。昨日と一昨日のモーツァルトのオペラのときは自身の定期公演のために不在だった歌劇場管弦楽団の主要メンバー、つまりヴィーンフィルが今日は戻ってきて、重厚で繊細なアンサンブルによりこれぞワーグナーという官能的な響きを余すところなく提示してくれたのです。今夜の公演はK+K&kのブログでも書かれているようにちゃんとリハーサルをしているので充実した演奏になったのでしょう。このフィンランド人指揮者は圧倒的な印象を残してくれました。第1幕終了時からブラヴォーが飛び交ったくらい聴衆の反応もすごかったです。目をつぶって聴いているだけで血湧き肉踊るような興奮と感銘を受けることが出来る音と演奏でした。ロンドンでもかなり演奏をしたことがあるみたいですが、今まで経験できなかったので次回は逃さないようにしたい人です。会場で知り合った某テレビ局のクラシック担当ディレクターの話ですと、彼は日本へも頻繁に行き人気の指揮者のようですが、身の回りにあまり気を使わない人で滅多にシャワーも浴びないとかで、周りの人たちが迷惑しているそうです(^^;

さて、次回はどこかでヴァルトラウト・マイヤーのイゾルデを聴いてみたいものです。

写真は左から、ライドル、ポラスキ、セーゲルスタム、ベヒレ、ザイフェルトです。
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by dognorah | 2007-01-19 23:11 | オペラ
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