Florian Uhlig ピアノリサイタル

2007年1月8日、St James教会にて。

The Beethoven Piano Society of Europe(BPSE)なんて組織があるんですね。1993年設立で、ピアニストやピアノを愛する人々のために国際的フォーラムを形成し、ベートーヴェンのピアノ音楽の権威ある解釈と音楽を広めることを目的とする云々・・・
欧州プレジデントはアルフレッド・ブレンデル、副プレジデントにはマルタ・アルゲリッチやパウル・バドゥラ・スコダ(まだ生きていたんですね)など錚々たる名前があります。財政的にはメンバーの会費とイギリスの宝くじ売り上げの分け前などに加えてベーゼンドルファーの協賛金があります。そう言えば今日のコンサート会場のセント・ジェームズ教会には貸与されたベーゼンドルファーのフルコンサートグランドがあります(すばらしい音です)。

c0057725_1091936.jpg今日のピアニストフローリアン・ウーリッヒ(左の写真)は1974年デュッセルドルフ生れのドイツ人です。ドイツで基礎教育を受けたあとロンドンに留学、RCMとRAMという競合する二つの音楽大学を出た後国際的に活躍している人です。独奏者としてリサイタル、協奏曲に出演する一方室内楽や伴奏もこなし、かの有名なヘルマン・プライというテノール歌手の最後のパートナーだったそうです。CDもバッハから20世紀音楽まで各種出しているものの非常に有名というわけではありませんね。腕が立ち表現力の豊かな人という印象です。



プログラム
Wolfgang Amadeus Mozart(1756-1791):
・Sonata in E flat major, K282
・8 Variations in F major on the march from “Les Mariages Samnites” by A.E.M. Grétry, K352

Ludwich van Beethoven(1770-1827):
・8 Variations in C major on “Une fièvre brûlante” from “Richard Coeur de Lion” by A.E.M. Grétry, WoO 72
・Sonata in C major, op.53 “Waldstein”

なかなか凝ったプログラミングと思います。二人の作曲家が同じグレトリ(1741-1813)の作品をもとに書いた8つの変奏曲を見つけてきて橋渡しとして、最後にメインのヴァルトシュタインで締めくくってBPSEの面目を立てる、という感じです。なお私はグレトリという作曲家の名前は初めて聞きました。

演奏もモーツァルトとベートーヴェンの性格付けをしっかりと表現した面白いものでした。最初のモーツァルトK282は12-3分の短い作品ながらメヌエットを二つ含む4楽章構成です。明るいながらどこか哀愁を感じさせる美しい曲。今にも壊れそうなガラス製品をいつくしむような丁寧な表現が素敵でした。
次の8つの変奏曲は特に魅力的というわけではないですが楽しめます。演奏時間はやはり12-3分。その次のベートーヴェンのものは約半分の長さです。モーツァルトのまろやかな音で紡いだものと違ってこちらは溌剌さと才気煥発さを感じます。変化に富んでダイナミックでもあります。演奏会としてはこちらの方が映えるでしょう。

最後のヴァルトシュタインはテンポを揺らしながらも速めのテンポで非常にダイナミックな演奏で始まりました。ややせわしないという印象を受けるもののユニークなスタイルで聴いていて惹きつけられます。第1楽章は何よりも躍動感がすばらしい。つい体で拍子を取りたくなる感じです。楽章最後のフォルティッシモでは思い切り鍵盤を叩くものだからピアノがゆらゆらっと揺れましたね。
第2楽章はさすがに打って変わって遅めのテンポでゆったりと鳴らします。がっちりした低音部の上で高音が美しくやはりダイナミックに演奏され、深みを感じさせます。
第3楽章はまた飛ばすのかなと思いきや、ごく常識的な緩急とダイナミズムでした。ちょっと第1楽章に比べるとユニークさは出せなかった感じです。
欲をいえば全体にもう少し情感が欲しいというかロマンティックな味付けを濃くして欲しいかなとは思いましたが、ダイナミックで歯切れの良いある意味若々しい演奏はそれはそれで感銘を与えてくれました。満足感のあるコンサートでした。
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by dognorah | 2007-01-09 10:25 | コンサート
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