2006年12月18日、ヴィーン国立歌劇場にて。イタリア語版の4幕ものなので休憩一回込みで3時間半と長くはない構成です。
Don Carlo Oper in vier Akten nach Friedrich Schiller von François Joseph Pierre Méry und Camille Germain Du Locle Music: Giuseppe Verdi Dirigent: Marco Armiliato Inszenielung, Lichtarchitektur und Kostüme: Pier Luigi Pizzi Chorleitung: Janko Kastelic Philipp II: Matti Salminen Don Carlo: José Cura Rodrigo: Simon Keenlyside Der Großinquisitor: Kurt Rydl Ein Mönch (Kaiser Karl V): Goran Simić Elisabeth von Valois: Olga Guryakova Princzessin Eboli: Luciana D’Intino Tebaldo: Laura Tatulescu Graf von Lerma/ Herold: Vladimir Moroz Stimme vom Himmel: Ileana Tonca 今回ヴィーンに来た主目的であるこの公演、こうして配役を書いていても改めて凄い顔ぶれだなぁと溜息が出ます。コヴェントガーデンではちょっと真似が出来そうもない感じがしますし、恐らく将来的にも当分これに匹敵するプロダクションも経験できないでしょう。 その歌手陣ですが、期待に違わず圧倒的な歌唱であり声でした。贅沢を言えば、大審問官と先帝カール5世の声がもう少し低音部で迫力があれば何も言うことはないというところです。男声陣ではサルミネンもキーンリサイドもクーラも好調でした。まずちょっと太目のテノールが舞台に響き、おお、クーラの美声だと頬が緩みましたが、次いで登場したキーンリサイドのど迫力の声で更にうれしくなります。最初から第3幕で射殺されるまで緩むことのない歌唱で、ややクーラが食われ気味。 サルミネンも持ち前の迫力ある低音が冴えます。彼の声が果たしてフィリッポ2世の役にふさわしいのかと言う巷の前評判もあったようですが私的にはすばらしい出来です。第3幕冒頭での独白シーンは悩める王の姿を感動的に歌って長い拍手を貰っていました。 女声陣ですが、エボリを歌ったディンティノが全く期待通りの歌唱でしびれました。演技も上手く凄い存在感があります。この夏にヴェローナ歌ったカルメンもすばらしいものでしたが、この小さな歌劇場では声をぐっと絞っても十分迫力を出せる歌手です。これに対してグリヤコワも一歩も引けを取らず凛々しく気品のある声を響かせて見事なエリザベッタ役を披露しました。私は初めて聴く人ですが細面の美人で、この役にはぴったりです。左の写真はクーラとグリヤコワです。 存在感的に一番アピールしたのは僅差ながらキーンリサイドとディンティノでしょうか。逆に5人の主要役者の中ではクーラがやや薄い存在感という印象です。 舞台は、宮殿などのフェンスでよく使われている金飾り付きの高い鉄柵を多用したやや象徴的な装置に古典的な柱を組み合わせたもので、衣装は古典的です。演出的にも特に変わった点は認められない素直なものです。最後はカール5世がカルロを引き離し、王との間に鉄柵が出現する仕組みになって終了。 演奏ですが指揮のアルミリアートを高く評価します。ヴェルディらしい劇性と叙情的な美しさを余すところなく表現した格調の高い音楽でした。管弦楽もさすがと言わせる美しいアンサンブルで、昨日のグノーとは大違い。国立歌劇場管弦楽団らしい甘美な音に酔いました。 本当に感動した公演で、途中何度か感動の余り涙が出るほど。カーテンコールでブラヴォーを連発しすぎて帰宅時には喉がガラガラでした。 トップの写真は第2幕終了時のもの。カーテンコールで珍しく舞台を見せてくれました。 次の写真は最後のカーテンコール時のもの。左からクーラ、グリヤコワ、アルミリアート、ディンティノ、サルミネン、キーンリサイド、リドル、シミッチです。
by dognorah
| 2006-12-22 22:51
| オペラ
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Comments(19)
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助六
at 2006-12-23 08:06
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アルミリアートも素晴らしい職人さんですね。これだってオケ練習ゼロを疑いますが、仮にそうでも、オケ練習なしでも指揮者による違いは出るのが面白いところです。人間対人間の関係だし、棒の振り方だけでも変わるのでしょうね。昔フレーニとドミンゴの「ボエーム」で、ヴィーンのオケがパターネの指揮でいつになく鮮やかなカンタービレで浪々と鳴ったので喜んだのですが、現地新聞にご当人は「練習ゼロだった、大歌劇場として何というキャンダル」とか怒りをブチまけていてズッコケたことがありました(笑)。
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hummel_hummel at 2006-12-23 08:14
これだけの歌手陣で、指揮&オケが良いドンカルロとなれば、大満足ですよね!羨ましいです。
ヴィーンには何日滞在されたのでしょうか?翌日のアラベラ(でしたか?)も気になります。レポートを勝手に期待していますね(笑)。
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dognorah at 2006-12-23 09:32
今回の「ドン・カルロ」は5回ある公演の4回目ですので指揮もかなりこなれているのでしょうね(練習なしとすれば)。聴いている方はラッキーでした。
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dognorah at 2006-12-23 09:38
以前フンメルさんのところで話題になりましたよね?あれを読んだときは凄いのがあるなぁと感心しただけでアクションは取らず、切符を取ったのは11月末でした。アラベラも見ました。
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Sardanapalus
at 2006-12-23 11:05
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わ、やっぱりこの公演もご覧になったのですね(^^)いいな~。ウィーン国立歌劇場、この冬の目玉はこれと「アラベラ」だと思うので、両方鑑賞されたdognorahさんが羨ましいです。「アラベラ」の感想もお待ちしています!
>改めて凄い顔ぶれだなぁと溜息 そうですよ~。私も都合がつくなら行きたかった…。こういうキャストが揃うところは、流石ウィーンですね。 >グリヤコワ 声も出るし、細くて美人でいいでしょう?(^^)私もエリザベッタで見てファンになりました。 >存在感的に一番アピールしたのは僅差ながらキーンリサイドとディンティノ キーンリーサイドのポーザはそのうちROHでも登場予定ですね。ポーザは元々印象に残りやすい(オイシイとも言う^^)役ですが、エボリをしっかり歌ってくれるデンティーノは貴重な歌手だと思います。この人も一度は生で聴きたいなぁ。エボリだったら尚良いですが。
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dognorah at 2006-12-23 20:36
本当は「バラの騎士」も見たかったのですが日程が合わなかったのです。でも、どの公演もそれなりに魅力がありますよね、ここの公演は。
Sardanapalusさんはどこでグリヤコワのエリザベッタをご覧になったのですか?
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Sardanapalus
at 2006-12-23 21:09
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>本当は「バラの騎士」も見たかった
パリで見たから良いじゃないですか、って見たかったのは逃げられちゃったガランチャでしたっけ? あ、ちなみに私がグリヤコヴァを聴いたのは2005年マドリッドです。キーンリーサイドのポーザを見に行ったらグリヤコヴァがエリザベッタでした。そのときの感想は↓に。 http://blog.so-net.ne.jp/sardanapalus/2005-06-17
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dognorah at 2006-12-23 22:24
そう、ガランチャです。でもヴィーンで見るとしたら最終公演の7日(ガランチャが入院)だったでしょうから、いずれにしても彼女は聴けなかったはず。
マドリッドの記事読ませていただきました。豪華な舞台だったんですね。それにしてもグリヤコワはあちこちでエリザベッタを歌っていますね。当り役なのかな。
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Bowles
at 2006-12-24 04:19
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グリャコワは私にとって最高のタチャーナです。
ずっと昔にヴィシネフスカヤのタチャーナも聴きましたが、いろんな点を総合して、やはり彼女がいちばん。 この指揮者は...苦手。ヴィーンのオケは指揮者がいなくても普通にドン・カルロぐらい演奏できると思います(爆)。もう一人苦手な人が。
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dognorah at 2006-12-25 06:42
Bowlesさん、このコメントを見逃していました。
ということは彼女はずいぶんいろんな役を既に歌っているんですね。ロンドンにいるとそれがなかなかわからないのが悲しいです。 なんか苦手な人が多いというか好き嫌いがはっきりしていらっしゃるんですね。もう一人はサルミネンですか?
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alice
at 2006-12-27 03:09
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>グリャコワは私にとって最高のタチャーナです。
同感です!!パリで一緒に観ましたね。DVDにもなりましたが、彼女は生のほうが格段に良いと思います。 今年の春Metの「マゼッパ」で久しぶりに聴きましたが、変わらず歌も芝居も姿も良くて花◎でした。 >なんか苦手な人が多いというか好き嫌いがはっきりしていらっしゃるんですね。もう一人はサルミネンですか? テノールじゃない?←私も同じ。でもキーンリーサイドだったら怒る!! dognorahさん 良い公演ばかりそろっているこの時期のウィーン滞在羨ましいです。 クリスマスの街の飾りも日本と違ってまだ終わらないのでしょうね。こちらは26日朝にはさっとお開きで、はい次はお正月って感じです。 新年はロンドンでですか?どうぞ良いお年をおむかえくださいませ。
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dognorah at 2006-12-27 04:10
aliceさんもMETの「マゼッパ」をお聴きになったんですね。他にも絶賛している方がいました。
そうかテノールの方だったんですね。私は好意的ですが。 年末年始はどこにも行かず家にいます。aliceさんもよいお年をお迎えください。来年もよろしくお願い致します。
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Bowles
at 2006-12-27 05:26
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>テノールじゃない?
違います(笑)。彼はあれでもちゃんと歌えば、それなりの歌手です。もう一人の女性歌手のほう。中学時代から50年もオペラを聞いていれば、好みもはっきりしてきます(笑)。失礼しました!!
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Bowles
at 2006-12-27 16:25
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やっぱり間違っていた!!
>中学時代から50年もオペラを聞いていれば やっぱり間違っていた!!気になったのでのぞいてみたら、案の定!! 現在54歳ですので、「40年」の間違いです。10年余分に歳をとる必要もありませんね(爆)。 某女性歌手はムーティが起用している当時から、苦手でした。しかし彼女、イタリアであのアリアを歌ったら、苦笑する観客もいることでしょうね←自分のことは棚に上げての発言です(^^;。
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dognorah at 2006-12-27 20:59
私はイタリア語もさっぱりわからないのですが、ディンティノの発音はかなりひどいのですか?
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Bowles
at 2006-12-28 04:48
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dognorah at 2006-12-28 10:22
あ、なるほど。「私の美貌が・・・」というところですね。ディンティノだったら確かに納得(笑)
予習したコヴェントガーデンのDVD(ハイティンク盤)でも夫婦で笑っちゃいました。
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Sardanapalus
at 2007-01-07 11:55
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遅くなりましたけど、私のブログ記事でリンクをはらせていただいたのでご報告しに来ました。記事のURLは↓です。
http://blog.so-net.ne.jp/sardanapalus/2007-01-06
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dognorah at 2007-01-07 21:54
Sardanapalusさん、どうもありがとうございます。多くの方があの公演の記事を書いていらっしゃるのですね。実は昨晩全て読ませていただいていたのでした。やはり、各歌手は日によって出来不出来があったようで面白いものですね。
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