![]() Mr and Mrs Clark and Percy 1970-1 Acrylic on canvas 2134 x 3048 mm Tate 現在National Portrait Galleryで「David Hockney Portraits」という特別展が開催されています。それと呼応するかのように、Bond Street駅近くのAnnely Juda Fine Artなるギャラリーで「David Hockney: A Year in Yorkshire」という風景画展開催の情報をコメントとして守屋さんにいただき、あわせて鑑賞しました。 ホックニーという人の作品はあちこちで散発的に見たことはあるものの、今までまとめて見たことはありません。特段の興味がなかったことにもよります。彼の絵に対する印象は、例えば左の写真のような明るいカリフォルニアを題材にしたイラスト的なものでした。今回の経験でも彼を理解したとは言いがたいのですが、結構奥の深い作家であることはわかりました。ペンで描いた肖像のスケッチ画でも的確に対象の個性を捉える目と技術はやはり一流画家のものです。冒頭に掲げた写真は、学生時代からの友人達を描いた大作ですが、制作に1年かけただけあって丁寧に描かれ、かなり訴えるものがあります。今回一番感銘を受けた作品です。本人の言葉では最も自然主義的作品というだけあって色使いも含めて極めて写実的です。二人の間にバルコニーに出るドアがあって外の風景が描かれていますが、この距離を置いた構図が夫婦の現在の状況を現わしているのだという解説は面白いと思いました。この絵の完成後程なくして二人は離婚したそうです。このほかにもカップルを描いた作品がありますが、全て二人の精神的状況がわかるようになっているとの解説は説得力があります。 ホックニーはロサンジェルスに居を移してからも頻繁に故郷のヨークシャーに帰ってきて絵を描いています。その中で少年時代の自分を育んだ風景画も数多く描いていますが昨年から今年にかけて仕上げたものを数十点展示しているのが上に述べたギャラリーです。次の写真はその中の一枚です。 ![]() かなりおとなしい色使いの作品もありますが、大体がちょっとイギリスの風景とは思えないような派手な色が使われています。 これがカリフォルニアの風景なら例えば左の作品(Nichols Canyon)のようなものでも、あの太陽の下では印象的にありえると思ってしまいますが。恐らく少年時代の思い出を重ね合わせてこういう表現になったのでしょう。守屋さんは描かれた木々のフォルムを見てセザンヌを思い出されたようですが、私はむしろゴッホを思い浮かべるようなものを何点か発見しました。しかし、今年69歳ですがまだまだ制作意欲は続くようです。David Hockney Portraits National Portrait Gallery 12 October 2006 – 21 January 2007 David Hockney: A Year in Yorkshire Annely Juda Fine Art 15 September 2006 – 28 October 2006 こんばんわ。楽しまれたようで、よかったです。ゴッホを思い浮かべられた、というのは判ります。早春の木々の幹のなまめかしい緑色に、画家の情念が感じられて。実は、ホックニーの肖像画はあまり好きでは有りません。何かしら、神経を逆撫でされるような焦燥感を感じてしまうので。 この風景画は、楽しめました。今日も観にいった折、受付の女性に、この展示が終わったらどうなるかを尋ねました。危惧していた通り、まとめての展示はこれが最初で最後だそうです。既に大方は買い手が決まっているとのこと。今回のように、一つのテーマに沿ったコレクションを誰か一人が買い取って、いつでも全部を観ることが出来れば、と思っていたのですが。 瞬間、一番上の絵はホッパーと思いました。エドワード・ホッパー見るといつも「フェルメール+デ・キリコ+ダリ+ウォーホール」(日常+光+空間+沈黙+孤独)とか思うのですが、この絵もその直系に思えます。私もホックニーを纏めてきちんと見たことはありませんが、イラスト風のイメージを持ってました。彼はこの種の自然主義的スタイルを時々実践しているのでしょうか、それとも比較的初期に限られているのでしょうか? ポップ・アート系の人でホッパーと接点ゼロの人はいないでしょうが、ここまで露骨とは! 現代絵画で夫婦や家族が描かれると、仲睦まじい感じなのはほぼ皆無でみんな虚ろですよね。いやルネサンスだって楽天的なのは聖母子だけで、世俗肖像画は冷たいし、そう言えば源氏物語絵巻だって・・・。結局人間の関係って奥底ではそういうものなんでしょう。 ホックニーは舞台美術もかなりやっていて、私も91年にシャトレでインバル指揮、彼の美術・衣装でサティー「パラード」、ラヴェル「子供と魔法」、プーランク「ティレジアスの乳房」3本立てを見たことがあります。まるで「イラスト風」でした。 守屋さんはまた風景画を見にいらしたのですね。人気があるらしく、私が行ったときも熱心に品定めをしている人たちがいましたから、結構売れるんだなぁと思いました。私は今回は心の中ですごく共鳴するという印象がなく、割と表面的な鑑賞に終わってしまいました。肖像画も友人たちを丁寧に描いたものは面白いと思いましたが、全般的にはあまり入り込めませんでした。でも今後機会あるごとに気にしていく存在ではあります。 ホッパーは実は2004年にテートで回顧展があったのを見逃していて、それゆえ多分全く見たことがありません(この国では作品が少なく、テートにも一枚もコレクションがありません)。しかし、写真でいくつか見ると全く仰るとおりですね。ただ、ホックニーの場合はもう少し世俗的ドラマが出ている感じではあります。上に挙げた作品と似た内容のものは全て70年代のものですが、一番新しいものでも1977年の父親が死ぬ直前に描いた両親像です。他にはこの肖像画展ではあまりなかったような気がします。 画家がある対象を描こうと思ったときにはそれなりの絵になるぞという直感を感じるときなんでしょうね。あるアメリカ人夫妻が「描いて欲しい」と言っていたのをずっと断り続けていたのですが、ある日彼らの家に招待されて夫婦を庭で見たときにひらめいたものがあるらしく、これを背景に描こうと提案したそうです(American Collectors-Fred and Marcia Weisman,1968)。この絵もdominantな奥さんが前面に出ていて面白いものになっています。 ホックニーの舞台美術も有名ですね。私もMETの魔笛のDVDについて書いたことがあります。会場でも「Rake’s Progress」の下絵シリーズが展示されていました。 初めて観にいった日にカタログを購入し、その足で、高齢の友人を訪ねました。彼女は、ホックニーよりちょっと歳上ですが、からだが弱っていて、よく話し相手をしに訪ねています。彼女が第二次世界大戦中に、ヨークシャーに疎開していたのを知っていたので、カタログを見せたら喜ぶかな、と思っていたのですが、目の輝きが変わりました。「疎開していた頃、毎日こんな風景を見ていたわ」、とのことでした。 友人が、どうしてもカタログを手元においておきたい、とのことだったので、金曜日に買いに行き、ついでに再度じっくりと見てきた次第です。 ヨークシャーを始めイギリスの田園風景に馴染のある方にはこたえられない絵なんですね。きっとあの色使いも何か心の奥を揺さぶるものがあるのでしょう。守屋さんはずいぶん高齢のご友人をお持ちなんですね。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。 検索
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