モーツァルトのオペラ: 偽の女庭師

9月26日、ROHにて。
Wolfgang Amadeus Mozart: La finta giardiniera
Libretto: Marco Coltellini(イタリア語)
初演:1775年ミュンヘン

出演者
指揮:John Eliot Gardiner
演出:Annika Haller (based on Christof Loy)
舞台:Herbert Murauer
照明:Reinhard Traub
管弦楽:English Baroque Soloists

Sandrina: Genia Kühmaier
Serpetta: Patrizia Biccirè
Arminda: Camilla Tilling
Ramiro: Sophie Koch
Don Anchise: Kurt Streit
Count Belfiore: Robert Murray
Nardo: Christopher Maltman

取るに足らない筋のため劇としては退屈そのものでブッファとしても笑いどころは少ない。生誕250年記念でもない限り上演されることは稀であるのも納得です(今月21日のプレミエがROHでの初上演)。したがってモーツァルトの音楽を楽しむオペラで、今回は簡素ながら美しい仕上がりの舞台を背景に各歌手のすばらしい歌唱をたっぷり聴かせてもらいました。

歌手の一押しはソフィー・コッホ。すばらしい歌にうっとりしました。2年前のROHのファウストでシエベル役を歌ったのを聴いたのが初めてです。今回も含めて彼女のズボン役ばかり聴くことになりましたが、すらっとした体型が男装にはよくお似合い。先日パリで聴いたガランチャとはライヴァルになりますね。声質もガランチャによく似ています。しかし、どちらかを選べといわれたらガランチャを取りますが。
ところでこの人はスペルからしてドイツ人かと思ったらフランス人なんですね。フランス語読みでもこの表記でいいのでしょうか。

3人のソプラノもそれぞれ持ち味を出していて良い歌唱でした。一番印象的なのはカミーラ・ティリングです。昨年4月にROHで観た「仮面舞踏会」でオスカー役をやって好印象を持っていましたが今回の公演でまた記憶が深まりました。演技もなかなか上手いし。

タイトルロールのゲニア・キューマイアーもさすがと思わせる声です。演技的にはあまりインパクトがありませんが。もう一人のソプラノ、パトリチア・ビッチレは声が細く、3人の中ではちょっと見劣りするものの演技は非常にうまい人です。昨年12月にROHで観た「仮面舞踏会」でオスカー役をやった人でそのときもカミーラ・ティリングの方がいいと思ったものでした。

テノールではクルト・シュトライトが太めの声ながら朗々とした声が好印象です。これに比べるとロバート・マレーはやや弱い。美声を響かせる場面も結構あっていいのですが、何か一本芯が通っていないような軟弱さを感じてしまいます。バリトンのクリストファー・マルトマンは終始安定した歌唱でこれも好印象。2年前にROHで観たコジでグエリエルモを好演した人です。

ROHのプロダクションとしては珍しく管弦楽は外部の団体ですが、古楽器による演奏ということで特別なのでしょう。ガーディナーの指揮は主兵を駆使してレヴェルの高いモーツァルトでした。劇の進行に応じたニュアンスの表現が実に細やかです。

舞台は現代に読み替えてあります。舞台左手から手前にかけてL字型の池が作ってあり、ライオンの口からジャージャーと水が出ています。池にははすの花らしきもの浮いています。舞台右側には板の橋のようなものがオケピットの上をまたいで観客席最前列近くまで張り出していて、歌手はここまで出てきて歌ったりします。よく出来ています。

写真は、左からマルトマン、ビッチレ、マレー、キューマイアー、ティリング、コッホ、シュトライトです。
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あらすじ
市長は女庭師のサンドリーナに恋心を抱いて、しきりにモーションをかけるが彼女の気を引くことが出来ない。召使のセルペッタは市長に惚れて奥の座に納まろうと目論むが相手にされない。サンドリーナ配下のナルドはそんなセルペッタに恋をしている。市長の姪アルミンダと婚約者ベルフィオーレ伯爵は結婚するためにここに来るが、居合わせた騎士ラミロは昔アルミンダと付き合っていた仲で、屋敷でばったり会ってよりをもどしたいと彼女に迫る。一方、伯爵を見たサンドリーナは驚きで失神する。昔痴話喧嘩の末に自分を刺して負傷させた男ながら、かすかに恋心を残しているからだ。こうして男4人と女3人のドタバタが始まり、最後は昔好きだったカップル2組がよりを戻す。原作ではセルペッタはナルドの攻勢に負けて3組目のカップルになるが、この舞台ではあやふやで市長とセルペッタのカップルのように見える。
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by dognorah | 2006-09-27 22:54 | オペラ
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