8月27日、ロイヤルアルバートホールにて。
演奏 ソプラノ:キャロリン・サンプソン(Carolyn Sampson) メゾソプラノ:インゲボルク・ダンツ(Ingeborg Danz) テノール:マーク・パドモア(Mark Padmore) バス:アルフレード・ライター(Alfred Reiter) 合唱:Collegium Vocale Gent 管弦楽:Orchestre des Champs-Élysées 指揮:フィリップ・ヘレヴェッヘ(Philippe Herreweghe) プログラム モーツァルト:男声合唱と管弦楽のためのMeistermusik モーツァルト:交響曲第39番ホ長調 K543 モーツァルト:レクイエム ニ短調 K626 ヘレヴェッヘという指揮者は1947年ベルギー生まれで、古楽器演奏とバロックを主体に活動している人である。今回の合唱団はベルギーで彼が創立した団体で、管弦楽はパリで創立したもの。他にも演奏団体を設立して分野に応じて使い分けているらしい。独唱のソプラノとテノールはイギリス人で、メゾとバスがドイツ人である。今日の演奏者は名前からしてパリから来たと思っていたが、それは管弦楽団だけだった。 ヘレヴェッヘのモーツァルトはイギリスや独墺系の演奏に慣れた耳にはちょっと戸惑った。リズムの取り方やフレージングの処理がかなり異なるスタイルである。39番の交響曲では、テンポはやや速めで、旋律をたっぷり鳴らすことなくせかせかと無機的に進めていく。スタイル的にはある程度古楽器の影響を受けていると思われるが、彼の解釈がこうなのだろう。弦弦楽は少人数の割にはそれほど透明感は感じられないが、ウインド系は結構上手い。 レクイエムはジュスマイヤー補筆版。これもこれまで慣れ親しんだ演奏とはずいぶん印象が違う。管弦楽の規模も小さいし、合唱も32人と比較的小規模なので、それに見合った音である。ダイナミックに畳み掛けるような迫力はないが、しっとりとしみじみ歌わせる演奏で、これはこれでなかなかのものと思った。独唱陣と合唱のレヴェルの高さは特筆に値する。ヘレヴェッヘとは何度も共演してきた人たちらしいからお互いに心が通じ合っているのだろう。その中でも特にソプラノのサンプソンが印象的である。声も歌も美しく気品が満ち満ちている。 写真は終演後挨拶する指揮者と独唱者たち。
by dognorah
| 2006-08-28 22:20
| コンサート
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Comments(13)
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助六
at 2006-08-29 08:21
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彼は合唱団はコレギウム・ヴォカーレの他、シャペル・ロワイヤルと欧州ヴォーカル・アンサンブル(これは今は解散みたいです)というのを組織してましたが、メンバーは互いを行き来してるそうで、補助金を受ける都合とからしい。シャペル・ロワイヤルは名前の通り当初はヴェルサイユが本拠でしたが、今は主にポワトゥ・シャラント地域の補助金を受けてて、一応サントとポワチエが本拠らしいけど、事実上旅がらすみたいですね。
シャンゼリゼ管も元々90年頃にオケ指揮に意欲を燃やしていた彼のために、パリのシャンゼリゼ劇場が組織した団体でしたが、同劇場の監督交替後、今はパリではなくやはりポワトゥー・シャラントが一応の本拠のようです。何れにせよメンバーは流動的でフランスの他の古楽器オケと掛け持っている人も多いようです。
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助六
at 2006-08-29 08:24
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彼は合唱指揮者としては天才的な人で、80年代にドイツの伝統的合唱団とはまるで違う柔らかいけれど腰は強く、どこまでも透明で均一な響きで歌われるバッハやモンテヴェルディやラッススには驚嘆しました。一部古楽系奏者のような人為的強調は一切なく音楽的ジェスチャーは大変ナチュラルなのに、響きの表現性は純粋で強力なのが彼の合唱指揮の身上と思います。一時は夢中で聴いてましたが、上の理由で最近はパリでの演奏会は大変少なくなっています。本人も19世紀音楽やオケの指揮(20年経っても上手くないですよね。チェリビダッケの講習に出たとか言うのですが、逆効果かも)に重点を移してしまい、個人的には残念です。
レクイエムは古楽系では、ヘレヴェッヘの他クリスティー、ヤコープスでも聴きましたが、皆ジュッスマイヤー版でした。一人だけマクリーシュが、ラディカルなダンカン=ドルース版を使ってました。私は大変面白かったけど、パリの客からはかなりブーが出てましたね。聴き慣れてるのと違うから当惑しただけの話でしょうけど。
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supikametti
at 2006-08-29 08:57
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こんにちは。私はこのpromsはラジオで聞きました。LSOのモーツァルトに慣れた耳には、やはりすこしおどろきました。とつとつとすすむわりに、音が重いような印象を受けました。
レクイエムは歌がすばらしかったですね。ただ、promsはラジオで聞くと、弦の音がきこえすぎてしまうので、独唱と合唱のあいだの、ステージの物理的な距離を感じてしまい、残念でした。
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dognorah at 2006-08-29 19:29
ヘレヴェッヘの活動状況はほとんど知りませんでしたが詳細を教えていただきありがとうございます。大陸では補助金がいろいろの面で影響するんですね。彼は合唱指揮でそれだけ成功したのでオーケストラもと意欲を燃やしたのでしょうか。しかし助六さんのコメントをもとにあの演奏を反芻してみますと確かに合唱の表現力は抜群でしたね。オケの弦セクションがいまいちだったのは指揮に問題ありということなんですね。
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dognorah at 2006-08-29 19:37
supikamettiさん、あのスタイルは驚きますよね。
レクイエムのときは独唱陣は管弦楽の後方、すなわち合唱隊とほぼ同じ位置で歌っていましたので、物理的な距離を感じられたとすればBBCマイクのミキシングのせいですね。何十本とあるマイクのレヴェル調整はミキサーの勘と趣味で決まりますから。生中継なので大変な仕事とは思いますが。
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Sardanapalus
at 2006-08-29 19:38
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ラジオのオンデマンドを聞きながらコメントしてます。本当だ、かなり聞きなれないモーツァルトって感じですね。特にレクイエムはけっこう好みかもしれません。ヘレヴェッヘといえば、仏Harmonia Mundiで出しているブルックナーの交響曲もちょっと特殊な演奏してますよね。今度CDでモーツァルトを聞いてみようかな。
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dognorah at 2006-08-29 19:53
Sardanapalusさんも今PCの前にいるんですね。レクイエムはなかなかの演奏ですよね。こういう曲を大編成のオケと合唱でやるのはぶち壊しだ、みたいなコメントをしていましたから、このスタイルはずっと通していくのでしょう。ブルックナーは果たしてどんな編成のオケかなと一瞬思いましたが彼のことだから多分小編成でしょうね。
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助六
at 2006-08-30 07:57
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ネットラジオで「レクイエム」一部聞いてみました。ウ~ン大分前コンサートで聴いたときの記憶が如実に蘇りましたが、古典派だとバロックみたいに「大変ナチュラル」とは行かず、前のめり気味のリズムに好き嫌いが生じ得る演奏でしたね。彼の指揮姿ともども思い出しました。合唱の響きの輝かしさはネット音声でも充分想像可能ですね。
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dognorah at 2006-08-30 22:41
>前のめり気味のリズム・・・
言い得て妙ですね。まさにそういう感じです。
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助六
at 2006-11-18 08:38
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昨日、久しぶりにヘレウェッヘのバッハのカンタータを教会で聴いてきました。教会の演奏会は音響が悪くて嫌いですが、彼はパリでの演奏会は少なくなってしまい、バッハは教会でしかやらないので仕方ありません。
合唱の響きのピュアで均質な輝き、フレージングの自然さ、内面的な力強さは全く昔通りでした。幸せな気持ちで帰途につけました。
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dognorah at 2006-11-18 21:06
ヘレウェッヘは健在でしたか。パリでの演奏会が少なくなったのは残念ですね。教会は私も残響が多すぎてあまり好きではありません。聴くならなるべく演奏者に近いところで直接音がクリアに捉えられるところを選びます。
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助六
at 2006-11-19 09:53
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書き忘れましたが、サンプソンはバッハでもソロに出てました。初めて聞く名前でしたが、ヴィブラートの少ない上から下まで均一で透明な声、繊細な感受性と大変気に入りました。結構美人さんだし、昔ヘレヴェッヘのソロをよく務めていたアニェス・メロンもそうでしたけど、ソロ以外の部分でも合唱に加わって歌っているのも素敵と思いました。私も名前、記憶しておきます。
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dognorah at 2006-11-20 03:13
そういう場でも出演しているということはヘレヴェッヘはかなり彼女を気に入っているのでしょうね。私もまたどこかで聴いてみたいです。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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