PROMS:アンドラーシュ・シフのピアノ

8月17日、ロイヤル・アルバート・ホールにて。
このホールで開催されるPROMSでピアノ独奏というのは珍しいことですが、本日は夜10時から遅番のプログラムとして用意されました。
シフ(András Schiff)は1953年ハンガリー生まれで、ロンドン在住のピアニストです。夫人はヴァイオリニストの塩川悠子さん。シフは頻繁にウイグモア・ホールでリサイタルやワークショップを開催していますが、切符の入手は困難なくらいの人気があります。今夜も遅い時間にも拘らず、ストールやボックス席は8割以上埋まっていました。
ピアノは彼自身が40年間使っているベーゼンドルファーを持ち込んだものらしい。

オールモーツァルトプログラム
ロンド イ短調 K511
ソナタ イ長調 K331

ファンタジア ニ短調 K397
アダージョ ロ短調 K540
ロンド ニ長調 K485

ソナタ イ短調 K310

このように3つのグループに分け、2回の小休止をはさんで、それぞれ連続して演奏されました。かなり考えられたプログラミングでしょうか。イ短調に始まってイ短調に終わる。彼はモーツァルトの悲劇的な感情を抱かせるイ短調には特別な思い入れがあるようです。また、彼はモーツァルトの全音楽で最高のものはピアノ協奏曲である、とも言っています。オペラのテーマも全てその中に出てくるそうです。しかし、敢えてオペラの中から1曲選べといわれるなら、コジ・ファン・トゥッテだ。それを2001年のエディンバラ音楽祭で指揮した後は、少なからず自分のピアニズムに影響を与えた、ということです。

シフは舞台に出てくるときも演奏中もいかにも温厚そうな印象を与えます。演奏中は曲に合わせて表情をいろいろ変えますが、動作も含めて控えめながら、K331の第3楽章のトルコ行進曲では弾きながら聴衆を見渡して「どうです、楽しいでしょう?」みたいな表情を浮かべるのでとても親しみを覚えてしまいます。こういうリラックした雰囲気だと、少々会場内がざわめいていてもほとんど気にならなくなるのが不思議です。

演奏は特に自己主張しないで淡々と音を紡ぐように見えますが、とてもこなれていて味わい深く、安心して音に浸れるものです。なんと心が落ち着くことか。落ち着きすぎた人もいるらしく、後方から安らかな寝息が聞こえてきましたが。
プログラム最後のソナタへの集中力はすごく、速めのテンポで、悲壮感を漂わせたモーツァルトを髣髴とさせる迫力がありました。

アンコールは小品を2曲演奏。1曲目はEine Kleine Gigueと聞こえましたが、2曲目はわかりません。この人は丁寧に会場の3方向に向かってお辞儀をします。
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by dognorah | 2006-08-19 00:22 | コンサート
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