エクス・フェスティヴァルの「魔笛」公演

7月14日、Aix-en-ProvenceのThéâtre de l’Archevêchéにて。
オリジナルは今年のヴィーン芸術週間で公演されたもので、Theater an der Wien他いくつかの劇場の共同制作です。
以下のキャスト、面倒なのでフランス語のプログラムから丸写しです。

Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791)
La Flûte enchantée (Die Zauberflöte)

Direction musicale: Daniel Harding
Mise en scène, décors, lumière: Krystian Lupa
Costumes: Piotr Skiba
Vidéo: Zbigniew Bzymek

Sarastro: Gunther Groissböck
Tamino: Pavol Breslik
Récitant / Second Prêtre: Olaf Bär
Premier Prêtre: Andreas Conrad
Reine de la nuit: L’ubica Vargicová
Pamina: Helena Juntunen
Première Dame: Sabina Cvilak
Deuxième Dame: Barbara Heising
Troisième Dame: Julia Oesch
Une vieille femme: Margit Gara
Papagena: Malin Christensson
Papageno: Adrian Eröd
Monostatos: Loïc Félix
Premier Homme d’armes: Roman Sadnik
Second Homme d’armes: Tijl Faveyts
Trois garçons: St. Florianer Sängerknaben

Chœur: Arnold Schönberg Chor
Directeur artistique: Erwin Ortner
Chef de chœur: Jordi Casals
Orchstre: Mahler Chamber Orchestra

歌手
c0057725_13994.jpg歌手の中では、夜の女王を歌ったヴァルジコヴァ(左の写真)が抜群の出来。コロラトゥーラの声がとても美しく、あの高音が続く有名なアリアも全く澱みなく清澄な声が余裕で出て歌唱もすばらしい。至福の時間でした。容姿端麗すぎて、娘のパミーナより若く見えるのが難点か。3人の侍女もなかなかの歌手揃いです。タミーノとパミーナは並みの歌手で、演技もあまり上手くない。パパゲーノは歌も演技もなかなか上手かった。他の男性歌手もザラストロをはじめ水準が高い。パパゲーナもまあまあ。合唱はヴィーンから来ていますが非常に上手い。


指揮と管弦楽
ハーディングの指揮するオーケストラは美しい音色で流れるような音楽を奏で、うっとりと聴いていられました。屋外とはいえあまり広いスペースではないし、かなり周りを建物に囲まれているので室内とあまり違わない良い響きでした。

演出
歌手たちは概ね伝統的な衣装ですが、タミーノはTシャツにカジュアルパンツ、パミーナは白い下着姿なのはどういう意味かあまりよくわかりません。パパゲーノは笑いを取りながらも結構大きな顔をしてタミーノを馬鹿にした演技です。
舞台はシンプルながらもいろいろ手の込んだメカニズムを使いこなしています。時折ヴィデオ映像やPAを使った音響を織り交ぜます。人物の顔とか現代的な風景など。俳優たちが現代的ないでたちで現れることもありますが、舞台は基本的にエジプトを思わせる造形です。動物たちが登場する場面は、マイクロソフトの宣伝のように頭だけ動物の姿で女性は上半身ヌードにして、もともと退屈な場面をちょっと魅力的にしています。人物もメカも結構動きがよくて楽しめる舞台です。
最後は、タミーノ+パミーナ、パパゲーノ+パパゲーナのカップルだけでなく、ザラストロ+夜の女王のカップルも出来て3組が幸せそうにめでたしめでたしで終わりました。こういう結末は、今まで見た舞台でもDVDでも初めての経験です。でも、すっきりして納得できます。モノスタトスがどうなるのかはよくわかりませんが。例によって字幕がフランス語なので何か従来とは変えていても私にはわかりませんでした。わからないといえば、第2幕冒頭でザラストロが坊主たちを集めてタミーノたちに試練を与える話をするところで、男女2体の死体(たぶん作り物)が並んだ台車が運び込まれます。プログラムの中に演出家によるスケッチが紹介されているのですが、それは全裸の男女です。しかし舞台では下半身は布で隠されていました。これを基にザラストロがどういう説教をしたのか。
プログラムに演出家のコメントが英語で掲載されていたのを読むと、
・タミーノとパパゲーノは人間の両面をあらわすためにカップルで行動するようになっていて、モーツァルトはより人間的なパパゲーノを重視している。
・パパゲーノは権威に服従する野心家のタミーノを内心軽蔑している。
・欧州人は欧州以外の社会に住む者を人間として認めず、彼らを奴隷として取引してきたほどである。モーツァルトはパパゲーノにそういう人種をも代表させて自分の人間観を表現している。

最後のくだりは、最近見た「ツァイーデ」で取り上げられたテーマなので、なるほどと思いました。パパゲーノが伝統的な、全身を鳥の羽だらけの姿にしている反面、タミーノがTシャツ姿なのもこの辺りを表現しているのかも。
c0057725_122341.jpg

写真は、カーテンコールのものです。向かって左から、夜の女王、タミーノ、パミーナ、指揮者、パパゲーノ、ザラストロ、3人の侍女。バックにいるのは合唱隊です(クリックするともう少し拡大します)。

その他
エクスにはセザンヌ展を見る目的で行きましたが、あわよくばこの魔笛も見てやろうぐらいのスタンスでした。出発前には切符は既に売り切れだったので、開演1時間前に会場に行き、リターンを狙うつもりでいましたが、運良く手持ちの切符2枚を売り捌きたい婦人にめぐり会いました。リターンの列はあまり長くはなく、全員入れたようです。劇場への道順を聞いたイタリア人が追いかけてきて、この公演は見る価値があるか?と尋ねて来ました。ハーディングの指揮だし、いいと思うよ、と答えたら彼も並んで入場したようです。オペラは好きだけど魔笛は以前にも見たので躊躇していたらしい。この後ヴェローナに行くんだといったら、「あれはいいよー。マイクなしですばらしい歌声が聴けるんだよ」とコメントしてくれました。

エクスも非常に暑いものの夕立があるようで、この日も降ったので公演中のことが心配でしたが開始の9時半には晴れる方向でした。第1幕終了時には星も出ていたので一安心。
終演は午前1時ごろ。その後近くのレストランで軽く食事をしたので、宿に帰って寝たのは午前3時でした。翌日のセザンヌ展の鑑賞時間が11時指定だったのでちょっときつい感じです。このスケジュールで二晩連続は老体にこたえそうだったので翌日夜の「アルジェのイタリア人」は割愛しました。
ここでも観客の服装はとてもおしゃれなものでした。
[PR]
by dognorah | 2006-07-29 01:06 | オペラ
<< Cézanne en Prov... ヴェローナの街 >>