東京弦楽四重奏団(Tokyo String Quartet)演奏会(その2)

7月5日、Carpenters’ Hallにて。最終公演。このCarpenters’ Hallは、名前の通り大工さんたちが15世紀に出資して作ったギルドの本部で、現在は貸しホール的存在である。さすがに各種大工道具がガラスケースの中に展示されていて、往時を偲ばせる。ミニチュアのようなカンナがたくさんあるのが印象的である。下の写真にホールの内部を示す。文房具屋さんより大工の方が実入りが多かったと見えて、先日のStationers’ Hallよりも贅を凝らして立派である。このCity of London Festivalはこのように同じ団体の演奏会でも各回の会場が異なっており、シティの普段はあまりお目にかかれない建物を体験できるのも一つの楽しみである。伝統的なシティには実に豊富な古い建物が現代に至るまできちんと手入れよく保存されており、豊かさと歴史の重みを感じることが出来るし、またその奥深さを実感できるのである。
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本日のプログラム
モーツァルト:クラリネット五重奏
細川俊夫:弦楽四重奏第2番 “Urbilder”
ブラームス:クラリネット五重奏

クラリネット:Joan Enric Lluna
クラリネット奏者はスペイン生まれで国際的に活躍している人であるが、この弦楽四重奏とは技術的にも音楽的にもぴったしのパートナーであった。

モーツァルトとブラームスの古典的名曲2種類はアンサンブルにおいても表現の深さにおいてもレヴェルの高い演奏で音楽的に充実した名演といえる。私はブラームスの方が断然好きなのでここでもそれをより楽しんだが。

細川の音楽は以前本人の口から自分の音楽の作曲手法について聞いていたので、この音楽が始まってももう違和感はないが、初めて聞く人たちはさぞかし戸惑ったことだろう。モーツァルトの心地よい音楽で催される眠気など雲散霧消するくらい聴く方にも緊張が要求される。耳を澄まさないと聞こえないほどの細く弱いしかし緊張した音で開始されるも豊富な音に発展することなく終始無調的というか無機的という奇妙な音が続く。その垣間に日本人である私には日本の伝統的なリズムを感じることが出来てなるほどと思うのであるが。演奏時間は約15分。題名のUrbilderというドイツ語は、「原型の」という意味か。彼は主にドイツで活動しているのでドイツ語で名づけられたものと思う。

今日の客の入りはあまりよくなく、特に高い席は空席が目立つ。日本人は非常に少なかった。先日のコンサートで隣に座っていたアジア人が今日も近くに座っていたので話しかけたら香港出身の中国人だった。昨年オクスフォードからロンドンに移ったばかりで、私と同じようにコンサート狂いをしているらしい。彼はこのカルテットの全シリーズを聴いておりかなり熱心な人だ。各回一人ずつ日本人作曲家の作品が演奏されたが(武満、林、間宮、細川)、4人の中では誰が一番よかったかと訊くと、武満という答えが返ってきた。どう考えても彼が一番インターナショナルなので多数意見だろう。
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by dognorah | 2006-07-06 20:57 | コンサート
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