人気ブログランキング | 話題のタグを見る

建築家、安藤忠雄氏の講演会

6月28日、Jerwood Hall(LSO St.Luke’s)にて。

City of London Festivalの一環として企画されたイヴェントです。イギリスのArchitecture Foundationも共同主催者となって、そこの理事が司会者を勤めました。講演は日本語で、通訳付です(通訳:Kyoko Kikuchiさん)。切符は売り切れで、リターンを求める行列まで出来る人気でした。日本人聴衆が駐英日本大使も含めて3-4割ぐらいです。

公演内容は、彼自身の生い立ちと建築家になった経緯、大阪市に代表される「若い人たちの提案を全く受け付けない頭の固い役所」への批判、彼の代表作の紹介、神戸地震後の新規プロジェクト(34件もあったそうです)、建築以外の活動分野の紹介(経済優先主義のために破壊されてきた日本の自然の回復運動など)、美術館への思い入れ、などです。

通訳をする時間も必要なため、あまり内容の濃いものとはいえませんでしたが、所々彼のポリシーみたいなものを述べて、なるほどと思うこともありました。
例えば、
・日本は四季の折々が美しくその影響を受けて先人たちが創造してきた美を大切にしなければいけない。自分は、例えば金閣寺や竜安寺に雪が積もった景色などをしっかりと心に留めて仕事をしている。
・それをベースに、これほど美しいものが世の中にあるのか、というような建築を作りたい。
・現代の日本は人々の寿命が延びて80歳90歳が当たり前になっているが、都市というものはそういう人たちの好奇心をも刺激するような形態でなくてはならない。

最後の文脈に関連する他の話もありましたが、人間好奇心をなくしたら終わりというニュアンスは、私の日常的考えと相通ずるものがあり、大いに同感です。
建築家、安藤忠雄氏の講演会_c0057725_0241817.jpg

公演後は関係者たちと挨拶されていましたが、カメラを向けた私に「一緒に撮りましょうか?」と声をかけてくれるくらい気さくな人です。写真は求めに応じてサインする安藤忠雄氏。
by dognorah | 2006-06-29 23:55 | Comments(6)
Commented by 助六 at 2006-06-30 08:36 x
材木商から一代で身を上げ、ブランド品グループ「ピノー・プランタン・ルドゥット」を築き上げたシラクに近い仏実業家ピノー氏が、自身の現代美術コレクションを展示する美術館を、パリ近郊ブーローニュ市のセーヌ河中の島のルノー工場跡地に建設する計画がいったん決定され、安藤氏の建築案が採用されたのですが、ピノーは市とケンカして計画撤回、替わりにヴェネツィアのパラッツォ・グラッシを購入して、コレクション展示に充てることに相成りました。グラッシの改築も安藤氏だそうで、18世紀建築の改装も刺激的仕事でしょうが、氏はやはり自分設計の美術館を建てたかったことでしょうね。
安藤氏の建築は現物に接したことはありませんが、写真を見ると鋭さと優しさのある建築みたいですね。パリにもユネスコ敷地内に小さなものがあるらしいのですが。正規の大学教育を受けず独学に近いという(武満もそうでしたね)エネルギーもすごいですが、「旅を通じて建築を学んだ」という態度には共感を覚えます。
Commented by dognorah at 2006-06-30 18:56
ルノー工場跡という言葉でそういうニュースがあったことを思い出しました。キャンセルになったとは残念ですね。欧州に代表作の一つが実現したかもしれないのに。安藤さんは大阪の中之島に関して同じような提案を大阪市にして拒否されるのですが、その後瀬戸内海の島でそれを実現しています。島のオーナーが依頼したそうです。全く緑のなくなった島にそれを復活させるために美術館はほとんどが地下に作られています。
Commented by sottovoce at 2006-07-03 04:31 x
dognorah様、こんにちわ。ルノー工場跡の美術館建設がオジャンになったのは、返す返す残念でした。もうプロジェクトは煮詰める段階に入っていて、安藤さんはパリへいらっしゃり、美術館のミニチュア模型も公開されたほどでしたのに・・・島の先端のとんがりにぴったり形を合わせた建物で、セーヌに浮かぶ真っ白い船のようでした。こんな素晴らしいデザインの美術館が日本人の設計でフランスに実現するなんて・・・日本人として誇りだ、何て思っていたのに・・・ホントにがっかり。頭の悪い、いえ固いパリ市には付き合いきれない。世紀の建造物となったかもしれない美術館のみならず、ピノ氏の値段もつけられないほどの近代美術品もごっそりイタリアへ。私に言わせると、もう馬鹿もいいとこ。
Commented by dognorah at 2006-07-03 06:54 x
sottovoceさん、地元にいらっしゃれば残念さも倍増ですね。どこでも行政側というのは融通の効かないことが多いのでしょう。安藤さんのみならずフランスの損失も計り知れないですね。
Commented by Bowles at 2006-07-03 10:12 x
実家が阪神間なので安藤氏の作品は目にする機会が多いです。茨木だったかな、光の教会などはとても好き。ご本人は一度、いつも行く神戸の中華料理屋で「ダミ声で大きな声の人だなあ」と思ってふりかえったら、安藤氏でした。

パラッツォ・グラッシは5月から無事展示スペースとしてオープンし、秋までWhere Are We Going?と名付けられた企画展が開催されています。ヴェネツィア、カナル・グランデ沿いの近現代美術館、これで三つ目ですね。

スガン島のルノーの廃墟は、ゴダールの『愛の世紀』(Eloge d'amour)に登場していました。ちょうど安藤氏の案がコンペに通る前に撮影されたものだと思います。ちょうどそのシーンのすぐあとに登場する「ドランシー・アヴニール駅」とともにとても印象的なシーンです。
Commented by dognorah at 2006-07-03 18:58
Bowlesさんは実物を見ていらっしゃるのですね。私も関西ながらまだ見たことがないです。パラッツォ・グラッシはもう開館したのですか。意外に早いですね。今夏はヴェネチアまでは足を伸ばさないので見れませんが。
ゴダールの最近の映画は全然見ていないです。最後に見たのが確か「カルメンという名の女」でした。
<< カンディンスキー展 ドン・ジョヴァンニ(コンサート形式) >>