ミハイル・プレトニョフのピアノリサイタル

6月10日、バービカンホールにて。

Piano: Mikhail Pletnev

プログラム
チャイコフスキー:The Seasons, Op.37b
シューマン:Arabeske in C major, Op.18
シューマン:Kreisleriana, Op.16

アンコール2曲
ショパン:Nocturne Op.9-2
もう一曲は不明。

開始時刻の7時半を過ぎても会場は閉じたまま。最後の仕上げに手間取っているらしい。ようやく7時40分にドアが開き、聴衆がほぼ席に着いた10分後に彼は出てきた。えらく不機嫌そう。
軽くお辞儀してすぐに椅子に座るも、神経質そうに指で椅子のサイドをコツコツ叩いている。聴衆との呼吸を計っているのだろうか。

最初の曲はチャイコフスキーのピアノ曲の中ではポピュラーなものらしいが、私は初めて聴く作品である。ペテルスブルグの出版社から依頼されて毎月の季節にふさわしいテーマの詩に基づいて作曲したもので、1月から12月までの12曲で構成される。演奏時間は45分くらい。それぞれが独立した小品で、全体としての統一感は特に感じられないが、プレトニョフは緩急も織り交ぜて魅力的な音を紡いでいく。一音一音を大切に演奏する人である。

休憩後はシューマン。彼は拍手の中舞台に出てきながら客の方に「ウンウン」と会釈するだけで椅子に座って直ちに演奏を始める。アラベスケという曲も初めて聴くものであった。7-8分の小曲である。これも一音一音が磨き上げられたような輝きを持った音で構成される。終了後の拍手には座ったままちょっと会釈するだけですぐに次のクライスレリアーナを弾き始める。何かにつけて気難しさを発散させるがリサイタルではいつもこうなんだろうか。今年の1月に彼の弾き振りを聴いたときにはとても機嫌がよくてニコニコしながら聴衆には挨拶していたのに。大好きな指揮をさせてもらって気分がよかったのか。

そのクライスレリアーナはさすがと言わせる説得力ある演奏であった。ここでも一つの音符に込める意味が音を通じて伝わるような印象を与える。ダイナミックに弾く部分はあってもそれを貫いてがんがん弾くことはなく狭いレンジでの微妙な音の強弱とテンポの変化で曲の本質を伝えようとしている。非常にロマンティックともいえる。詩情と気品が漂う。今まで聴いたこの曲の中では最良の演奏という印象を持った。

写真はニコリともしないで拍手に答えるプレトニョフ。
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アンコールの1曲目はとても有名なノクターン。ゆっくりしたテンポで思い入れたっぷりという感じの美しい演奏であった。
2曲目は、聴いたことがあるような気がするものの曲名は出てこない。リストかしら。かなりテクニックを見せるような曲で高音のトレモレが美しい。

彼はいつも同じピアノを使っているのかどうか知らないが今夜のピアノはBlüthnerのものであった。同じピアノをArtur Pizarroが使ってリサイタルをしたときの模様は昨年10月今年1月に記事にしているが、スタインウエーに比べて高音部がまろやかな気がする。音そのものはピザロが弾いたときの方が美しかったが。このピアノはドビュッシーが好んで使ったものだ。
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by dognorah | 2006-06-12 18:21 | コンサート
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