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コンスタブルの風景画展

Tate GalleryとWashington National Galleryの共催でイギリスを代表する風景画家コンスタブルの約60枚の油彩画が集められて展示されています。当然かなりアメリカで集められた作品も来ています。

コンスタブルの風景画展_c0057725_7131722.jpgJohn Constable (1776-1837)はロンドンから東北方面に列車で2時間ぐらいの距離にあるSuffolk州の小さな村で生れました(左のデッサンは1806年の自画像)。家は農産物の取引をしている商人で比較的裕福であったため、彼は家業を継ぐことなく希望の画家になることがすんなり認められました。ロンドンのRoyal Academyに入学して腕を磨きますが、画家として生きようと決心したのは30歳ぐらいのときといわれています。40歳(1816年)で11歳年下の女性と結婚しますが、52歳のときに妻は肺結核で他界。その後も絵を描き続けますが9年後には彼も亡くなります。
生涯にわたってほとんど風景画しか描かない人でした。その多くは生れ故郷の日常ののんびりした一瞬を捉えたものです。手ごろな大きさのキャンヴァスを外に持ち出して下絵を描き(油彩)、それをもとにアトリエでより大きな作品を仕上げるというやり方をしていました。そうして仕上げた作品はしかしながら細部が当然のことながら精緻ではなく、批評家の格好の的になったりします。彼の仕上げる作品を6フィート幅の大きなキャンヴァスにすることにしたとき、そういう批評をかわすためにも現場に同じ大きさのキャンヴァスを持ち込んで下絵を描きました。従って今日多くの下絵と本番絵が存在します。今回はかなり多くの作品が下絵と共に展示されています。研究家ならともかく一般の鑑賞家にとってはあまり面白くないですが。
コンスタブルの風景画展_c0057725_7145830.jpg

ほぼ時代順に展示された画業を追っていくと、結婚直後の1817年辺りから1824年辺りまでの作品が特に充実していることが感じられます。絵が生気を漲らせているのです。上の絵はその当時に描かれたものです。実は1824年に妻の病気が発覚しその時点から彼自身もかなりネガティヴな影響を受けていると感じました。それ以降の作品は絵自体は相変わらず上手いのですが、あの当時のエネルギーはあまり感じられません。

The Great Landscapes – CONSTABLE 
Tate Britain、6月1日-8月28日
by dognorah | 2006-06-03 07:21 | 美術 | Comments(4)
Commented by 守屋 at 2006-06-04 04:09 x
昨日のテレグラフかガーディアンのどちらかに、コンスタブルが描いたサフォークの村の風景が、今も変わらずに残されているとの記事がありました。現在の風景と絵を並べて掲載していましたが、9割くらいそのままでした。今日から夏、テイトの屋外カフェでの食事が楽しみな時季ですね。
Commented by dognorah at 2006-06-04 09:36
守屋さん、National Gallaryのガイドさんからも同じ話を聞きました。Suffolk州には行ったことがありませんが、Constableが描いた場所に行ってみるのも一興でしょうね。
夏が戻ってきてホッとしましたね。昨日までヨーロッパ全体が寒かったようですが、さすがに今日のフレンチオープンテニスはコートを着ている人はいなくなりました。
Commented by 守屋 at 2006-06-05 02:32 x
友人が、サフォークとノーフォークの境界辺りに住んでいるので、よく行っています。海岸線も綺麗ですが、サフォークの別名、ビッグ・スカイ・カントリーの名の如く、大空の下に広がる内陸部の景色には、いつもホッとさせられます。
Commented by dognorah at 2006-06-05 06:13
ああ、そうなんですか。そういうところに知り合いがいらっしゃるというのは素敵ですね。羨ましいです。ますます行きたくなりました。
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