5月3日、新演出によるヴェルディのオペラの初日を見てきました。
Direction musicale:Sylvain Cambreling Mise en scène:Johan Simons Décors:Bert Neumann Costumes:Nina von Mechow Lumières:Lothar Baumgarte Dramaturgie:Koen Haagdorens Chef des Choeurs:Peter Burian Simon Boccanegra:Carlos Alvarez Jacopo Fiesco:Ferrucio Furlanetto Maria Boccanegra (Amelia Grimaldi):Ana Maria Martínez Paolo Albiani:Franck Ferrari Gabliele Adorno:Stefano Secco Pietro:Nicolas Testé Un araldo:Jason Bridges このオペラはロイヤルオペラで何度か聴いていますが、恐らく最後に見たのが10年以上前のことで、キャストは忘却のかなたです。(修正:その後調べたら2002年にも見ていることが判明。記憶の悪さには困ったもの)複雑な筋もあまり覚えていなくて、オペラの進行と共に少しずつ思い出しましたが、イタリア語の歌でフランス語字幕というのはちょっとつらいものがありました。切符が取れるかどうかわからなかったこともあって予習をサボったのです。 演出は現代風で、男性登場人物はほとんどすべて背広姿なので、最初は誰が誰だかとてもわかりにくい。唯一の女性はほとんどの場面でこれから服を着ようという下着姿なのはよくわかりません。 舞台はきらきら反射するたっぷりドレープを取った床から天井までのカーテンのようなもので3方が囲ってあり、中央には1mぐらいの高さの台の奥の方にフィエスコの顔を選挙ポスターのように大きく印刷した看板状のものが立っているだけの装置。フィエスコの屋敷を表しているようです。第2幕以降はこの写真がボッカネグラのものに変わるだけ。総督に選ばれたシモンの屋敷なのですが、全体としては低予算型の舞台です。合唱隊が扮する群衆も現代の若者のラフな格好そのまま。ロイヤルオペラでトラディショナルな舞台しか見たことがないものにとっては、かなり戸惑います。それは私だけではなかったらしく、終演後登場した演出家たちは盛大なブーを受けていました。コヴェントガーデンでのやさしいブーに比べるととても厳しいものでした。 カンブルランの指揮はとてもすばらしいと思います。管弦楽の音もよく、美しく劇的なヴェルディの世界を余すところなく表現していて感動的でした。バスティーユのオペラ座はとても大きい空間ですが、音響装置的な表現をするととても音の抜けのよい状態で、全く飽和することがないけれど小さな音の細部までクリアに聞き取れるきわめて質の高い音響空間です。ちょっとコヴェントガーデンでは体験できないものですね。とても好きになりました。 今回の出演歌手で過去に体験したことのある人は、バスのフェルッチョ・フルラネットとソプラノのアナ・マリア・マルティネスだけです。あとの歌手はステファノ・セッコがテノールで残り全てがバリトンですが、全てすばらしい歌唱を聴かせてくれました。 タイトルロールのアルヴァレスはスペイン出身のバリトンで40歳、声量もあるし歌も上手かった。 バスのフルラネットはものすごい声量というわけではありませんが、十分魅力的な低音です。演技もよかったと思います。 マルティネスは最近ロイヤルオペラでヴィオレッタをやった人で、私はリハーサルのときに聴いてすばらしい声と歌唱を体験していますが、ロンドンの椿姫さんをはじめ他の方々が行った初日は調子が悪くて散々な批評を貰っていましたので、今回の初日もちょっと心配ではありました。しかしそれは幸いにして杞憂で、最高音でちょっとかすれる場面が何回かあったものの全体的にはとても満足のいく歌唱でした。ビロードのような美しい声は何度聴いても心地よい。 フェラーリはバリトンとしての音質はあまり好きではないけれど歌は悪くはなかった。 テノールのセッコはこれまたすばらしい歌唱を聴かせる人で、例によって背が低くて頭の前がちょっと禿げ上がっていますがまだ30代半ば、注目すべき歌手と思いました。マルティネスとの2重唱などうっとりしてしまいます。 合唱はびっくりするぐらい大人数が群集として舞台に登場したのですが、その歌の上手いこと、感嘆しました。ヴォリュームは当然あるわけですがアンサンブルがすばらしい。コヴェントガーデンは負けるのでは?と思いました。 終了後の歌手に対するブラヴォーは一人一人に対して盛大なものでしたが、先に書きましたように演出、衣装、舞台装置の3人が登場したとたんそれが全てブーに変わりました。 写真の茶色のジャンパー姿が演出のヨハン・シモンズです。 というわけで、演出面ではやや不満ながら音楽的には非常に質の高い公演でした。パリに住んでいれば後何回か行ってしまうでしょう。 バスティーユは初めての体験だったのですが、観客の服装がさすがにロンドンと比べておしゃれです。見ていて楽しい。ロンドンでもおしゃれな人はいますが注意して見るとそれはイタリア人だったりします。 劇場の内部はとてもよく設計されていますが、ロビーなど収容人員に比べて狭すぎるような。それと、終わってから外へ出るまでに多大な時間を要するのはコヴェントガーデン並で、近代的な設計にしては人の流れに対する考慮が足りないと思いました。終わったとたん、ばたばたと慌しく帰る人が多いのはこのせいでしょうか。 今回、7時半始まりの10時半終了というスケジュールでロンドンと全く同じですが、6時ごろにサラダニソワーズを食べ、終了後にオペラ座隣のレストランで大きな岩牡蠣6個を白ワインで流し込んだところ、あまり腹が膨れることもなく、寝る頃の空腹感もないちょうどいい腹具合でこれは癖になりそう。
by dognorah
| 2006-05-05 21:35
| オペラ
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Comments(28)
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助六
at 2006-05-06 02:30
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お忙しい滞在お疲れ様でした。早速のエントリ・アップにも脱帽です。メーデーの連休は2日とも雨で寒く、今日ももう曇り気味ですから気候も最高の時にいらっしゃったと思います。メーデーに来た方は散々で、日頃の行いがモノをいいますな。
フリで来て入場してしまうのはさすが通ですね。私も「シモン」好きなので初日駆けつけたかったですが、「ボナール展」当日夕方しか行く時間がなくなってしまい、その後美術館の側で行われたキルヒシュラーガーのリサイタルになりました。 演出家はもう60過ぎのオランダ人で芝居ではまあ知られてる人らしいですが、オペラは初めてとかで、仏紙評は揃って現代化も意味がないし演技指導も存在してないといった趣旨でコキ降ろしてます。フィガロ紙は歌手にも厳しいのですが、ルモンド紙のウルサ方批評家氏はセッコを誉めてました。私もシーズン初めに「ロベルト・デヴェルー」で聞いて好感を持ちました。
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助六
at 2006-05-06 02:30
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>盛大なブー
パリは演出家へのブーはハデですね。逆にテノール以外の歌手にはエライ寛容、指揮者には結構ブーが出ますが。これは世界中どこの劇場でも共通の傾向でしょうけど。やはり仏聴衆は一般に独英に比べて熱しやすく冷めやすいと思います。ロンドンの聴衆はオペラではおとなしいなぁと思いましたが、室内楽では熱心で反応も静かに心がこもっている印象を受けました。 >質の高い音響空間 会場当初は音響酷かったですが、その後舞台枠やピット等かなりいじって、今はかなりマシになりましたね。 >ロンドンと比べておしゃれ 初日ということもあるかも知れません。ジョスパン元首相夫妻も来てたとか。 >外へ出るまでに多大な時間 特に平土間は火事になったらアウトだなといつも思います。私は大体上階ですので大丈夫ですが。
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dognorah at 2006-05-06 04:44
助六さん、早速のコメントありがとうございます。お陰さまで滞在した3日間とも快晴で完全に夏状態でした。この時期ロンドンと天候は連動しているようで、不在中はやはり夏が来ていたようです。明日からの週末は雨の予報で、先週末と同じようになるかもしれません。
助六さんもセッコを聴いて好印象を持っておられるのですね。新聞の批評というのはかなりいい加減なことを書く人も多いのであまり信用していませんが、同好の士と意見が合うのはうれしいものです。 ロンドンの聴衆は一般にシャイで陽気な人が数人混じっていると付和雷同して盛大なブラヴォーになりますが、そうでないときは静かで、同じパフォーマンスでも日によってずいぶん反応が違います。 バスティーユも当初は音が悪かったのですか。でもここまで改善されたということは、いいポテンシャルがあったということですね。
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dognorah at 2006-05-06 04:44
ボナール展は4日に見るチャンスがあったのですが、相方に引っ張られて遊覧船のランチとなり、見損ないました。アングル展は前売り券が完売であきらめました。
今回はコンサートまでは手が回りませんでしたが、キルヒシュラーガーのリサイタルがあったのですね。私が彼女を聴くのはだいぶ先ですが、リサイタルの出来はいかがでしたでしょうか?
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Mattew
at 2006-05-06 06:36
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シモン・バッカネグラ行かれたんですね。
最近帰国したオペラ好きの上司がロンドンに神々の黄昏を見に来て パリに行って、初バスチーユでシモン・ボッカネグラに行きました。 バスチーユはトイレの小ささが問題だと思いませんか? 女性トイレの行列が大変なため、女性が男性トイレに入ってくるのが ちょっと閉口します。
パリにいらしたんですね。羨ましいです。年に1、2回日本には行くのにパリには10年以上行ってない私です。いつかオペラ観てみたいとずっと思いつつ。
シモン・ボッカネグラは2002年と2004年にROHでやってましたが、ご覧にならなかったのですね。Aゲオルギュー、Nシコフ、Aアガケとか出てセットも洒落ててなかなかよかったですよ。もうちょっとしたら又来ますね、きっと。 トイレと言えば、こないだのROHの神々の黄昏で初めて男性トイレの行列の方が長いという状況を目撃しました。それだけワグナーは男性ファンが多いということでしょうか? 嗚呼でもトイレが混んでてもいいから、私もパリでオペラが観たい!ってこんなに近いのだから行けばいいのに。でもフランス語もわからないし。
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dognorah at 2006-05-06 08:56
Matthewさん、その通りです。うちのかみさんが「信じられない!」とこぼしていました。男性用だって2-3人でいっぱいになる大きさですよね。当初から問題が露呈しているはずなのに改善されないというのも不思議です。
Matthewさんの旧上司の方も同じ日にいらしていたんですね。
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dognorah at 2006-05-06 09:20
ロンドンの椿姫さん、シモンは以前に2回ほど行っていたので最近のはパスしてしまったのです。今は視点も違うので今度来たらまた行くつもりです。
パリのオペラは一流どころが3箇所もありますから演目選択の余地が多いですね。今回はメインの目的がオペラではなかったので切符は現地で買いましたが、オンラインでも取れます。英語のページもありますし。私の場合はユーロスターの駅も近いので行き易いですが。
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Matthew
at 2006-05-07 07:21
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本日教会で、ミュンヘンやストックホルムって誰かいい人でるのと
言われたので、まずはミュンヘンの運命の力は 指揮 Fabio Luisi Mark Delavan, Violeta Urmana ストックホルム Trubaduren 作品自体が不明。。。。 指揮Christian Badea Hillevi Martinpelto Karl-Magnus Fredriksson
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Matthew
at 2006-05-07 07:33
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失礼、やはりIl Trovatoreでした。 イタリア語で歌われてスウェーデン語字幕だろうから 昔の記憶と予習をしていかなければ。 TRUBADUREN Il Trovatore Opera i fyra akter
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dognorah at 2006-05-07 08:39
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助六
at 2006-05-10 05:48
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>トイレの小ささが問題
あの行列な何度見ても圧倒的と言いますか。それに加え右サイドのエレベーターが開場来17年を経てもうまく動かないままというのも驚異。トイレだって苦情はたくさん行ってるはずだし、エレベーターの不調は前監督自身ブツブツ言ってたそうですが。 ガルニエのリフティング、遂に計画放棄されたバスチーユの可動式舞台ホールのためのスペースの練習場への改装、外皮剥落・雨漏りなどの老朽化が予想より遥かに早かったバスチーユなど色々カネが掛かったのは分かりますが、トイレみたいな基本的接客部分に予算が回らないのは、訴訟につながりかねない安全面の改修を優先する官僚的意思決定が関係してるのかも知れません。まあトイレはもちろん空いてる「穴場」もありますが、常連客以外には当然分かりずらいですね。
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助六
at 2006-05-10 05:50
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カルロス・オットの建築はミッテラン時代の大プロジェクト中でも、美学的にも実用的にも最大の失敗作とされており、そうなった理由は、
1)駅跡地の三角形という変則的敷地に、仕様書に定められた床面積と複雑多様な諸施設を詰め込まなければならなかった物理的制約。R・メイヤーのもの含めこれはという案は皆無だったと言われる。 2)劇場のプロジェクト、建築コンクール組織、建築選定を主導した「4人組」が、高級官僚、公団住宅建設官僚、レパートリー・システムの独中小劇場を渡り歩いてきた独人X流劇場監督、音楽とは関係ない建築家という仏オペラ劇場の知識に乏しい驚くべきメンバーであったこと。 3)コネがモノをいう人事、音楽関係者ら現場の声が上がりにくい縦割り型上意下達といった仏役所式意思決定システムの悪い面ばかりが出た。 といった事情があると思います。この点日本の新国の方が遥かに音楽最優先の理想に近い劇場ができた野ではないかという気がします。
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Bowles
at 2006-05-10 06:07
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ガルニエもバスティーユもTCEもシャトレも、どこもトイレが少ないですね。それに比してロンドンはコヴェント・ガーデンもENOもトイレがたっぷり(?)ある...。イタリアのように建物自体が古い場合はどうしようもありませんが。
バスティーユというのは、ホント、どうしようもないオペラ・ハウスだ思います。あそこへ行くと、渋谷の某人民大会議場に行っているような気になります。 >椿姫さん ヴァーグナーの時は日本でも圧倒的に男性用トイレが混んでいますよ!
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Matthew
at 2006-05-10 07:08
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Bowlesさん、
ガルニエのトイレではあまり問題の経験はないのですが。。。 そもそもキャパが小さいので、バスチーユより多いトイレ数は まだましかと。 そもそも皆お酒飲んじゃうからトイレ混んじゃうんですけどね。 ワーグナーのときはお酒を控えます。
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dognorah at 2006-05-10 08:17
助六さん、一回の旅行者にはわからない複雑な事情があるんですね。すごくフランス的な問題点のようですね。日本以上に官僚が威張っている国という印象は前からありましたがここまで弊害があるというのもやりきれないですね。トイレ問題は永久に解決しないような気がします。
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dognorah at 2006-05-10 08:25
Bowlesさん、渋谷の某人民大会議場って文化村のことですか?
ワーグナーのときにトイレが混む?よく理由がわかりませんね。ROHの場合休憩時間がたっぷりあるから外へ出ちゃうので。 Matthewさん、私はお酒が入るとワーグナーの音楽があまりにも心地よくなるという理由で飲みません。一度、名歌手のときに大半を寝てしまった苦い経験があります。
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Bowles
at 2006-05-10 08:47
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Matthewさん
ガルニエの女性用はキャビネットの数が少ない上に、たいていひとつは壊れているので、結構いつでも列ができます。 dognorahさん いえいえ、N○Kホールのことです。まあ確かに、よほど注意深く席をえらばなければいけない点では似ていますが。普通は女性用に較べて圧倒的に空いている男性用がヴァーグナーの時に外まで行列が出来る理由はただひとつ、男性客の割合が高いからです(笑)。 休憩時間に関しては、ロンドンもパリも東京も、演目で考えるとこの20年ほどはまったく同じだと思います。たいてい2,30分でヴァーグナーの時は最低40分から1時間、といったところですね。
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dognorah at 2006-05-10 18:41
Bowlesさん、なるほどNHKのことを忘れていました(^^;
ヴァーグナーというのはやっぱり女性には不人気なんですね。コヴェントガーデンではあまり実感したことがないですが。
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助六
at 2006-05-17 09:47
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やっと観てきました。「シモン」は何度聴いても素晴らしい。ボンヤリ座ってても最初の和音が鳴った瞬間から精神的緊張を強いられ、気が付いたら終わってしまうというのは、私にはヴェルディの中でも「オテロ」と「シモン」だけかも知れません。
やはり高音に僅かに難がある以外は、セッコのガブリエーレが良かった。この役、改訂初演は後にオテロを創唱するタマーニョが歌っただけあって脇なのに難役ですけど、今まで接した5人のガブリエーレの中で一応ほぼ全音符がまともに聞こえたのは今回が初めてです。予定されていたシコフも良い歌手だけど声は下り坂だから、正直なところ降りてくれてよかったくらいです。 あとアルバレスのシモンも今回役デビューを考えれば立派と思いました。98年にサルツで観た「ドン・カルロ」のロドリーゴも既に彫りの深い優秀な声と歌唱でした。ただ私はこのオペラに関してはやはり4半世紀前のアバド・カップッチルリ・フレーニ・ギャウロフの呪縛を抜け出せないなぁと改めて思わされました。
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助六
at 2006-05-17 09:49
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演出はベルリンのフォルクスビューネあたりのお芝居のスタイルをそのまま持ち込んだものの、音楽による条件付けに縛られて手も足も出なくなってしまったのかなというところ。政治化・現代化も整合的な読みなど存在してないどころか、意図的に避けてるフシさえ窺えますから、アメリアに下着姿が多いのも統一的な意味があるとは思えませんねぇ。彼女の揺れ動くアイデンティティを示唆しようとしてるのかも知れませんが。
音楽は美しいのでもう一度聞いてもとも思ってますが、来シーズンも再演されるんですよね。
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dognorah at 2006-05-17 19:25
助六さんもお聴きになりましたか。セッコはいい歌手ですよねぇ。シコフの代役とは知りませんでした。
25年前に最高の上演を経験されて、それが基準になっているんですね。私は音楽的には今回のものが一番よかったです。舞台はROHのモシンスキーの演出の方がいいですが。装置もとても美しいし。 この演出はやはりお好みではないようですね。 >彼女の揺れ動くアイデンティティ・・・ さすがに鋭い分析ですね。なるほどと思いました。 来シーズンの再演は、タイトルロールがホロストフスキーになりますね。アルヴァレスのほうがいいのじゃないかと思いますが。ガブリエーレはアラーニャとセッコのダブルキャストですね。最近アラーニャはロンドンに全く来ないのですが、現在は調子的にはどうなのでしょうか。一時ちょっと声を悪くしたような噂を聞いたことがありますが。
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助六
at 2006-05-20 09:20
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ホロストフスキーよりアルバレスの方がずっと良さそうですね。私にもアルバレスのシモンはカップッチルリを別にすれば一番良いものでした。他はチェルノフ、アガーケ、ポンスなんかでしたから。
アラーニャは私もバスチーユで03年に「トロヴァトーレ」、04年に「マノン」を聴いたのが最後です。マンリーコは彼にはちょっと重たい気はするけれど、両役とも声そのものの状態には全く問題はありませんでした。去年の大晦日のガルニエのギャラは直前キャンセル、今年一月トリノのマノンも練習まで出てきてキャンセルで、代謝機能の調整に苦労してるとかいう話です。今年3月のモンプリエの「シラノ」も2回目の公演は気管故障で途中放棄だったそうです。でも3回目は見事な出来で、声自体には問題はないようです。あとこの頃はミュージカルなんかの仕事を増やしてますね。今夏はオランジュで「アイーダ」とモンプリエでラロの珍しいオペラを予定しているようですが。ガブリエーレも彼には少し重そうだし、あの演出では出ないだろう何て声も早くも出る始末。
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dognorah at 2006-05-20 20:29
助六さん、過去の記録を詳細に調べたら私は2002年にアガーケで聴いていました。自分の記憶の悪さに愕然です。
アラーニャの最近の活動について調べていただきありがとうございます。声は大丈夫そうなんですね。フランスでの頻度は高いですね。ロンドンはゲオルギューがよく来るので避けているのかもしれません。 >あの演出では出ないだろう・・・ 彼が演出を気にする人だったらありえますね。
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助六
at 2006-05-25 08:15
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前回聴いてから1週間経ったらまた曲が懐かしくなってしまい、もう一度聴いてきました。
アルバレスは40歳とのことで歌手としてもピークに差し掛かりつつあるところでしょうし、今回役デビューという彼のシモンは、やはり前回に比べても進境が明らか、音楽と役の形を決めていく「声さばき」がさらに確信と品を増してる気がしました。 スペインには「情熱的」のイメージとは裏腹に、クラウス・カレーラス・ベルガンサ・ロレンガーとかむしろ知的に抑制の効いた歌を歌う人が少なくないけど、彼もその一人かななどと思いました。ベルディ・バリトンは払底状態だから貴重な人材でしょうね。ただ昨年バスチーユで歌ったイヤーゴはまるで印象に残ってないのですけど。 今回はTV中継があったせいか演出家も出てきましたが、盛大なブーに混じってブラヴォー掛けてる客もそこそこいましたね。
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dognorah at 2006-05-25 21:58
助六さん、私もあの音楽はもう一度聴きたいくらいです。アルヴァレスは1週間で進歩しているのですか。しかしそのあたりの微妙な変化を的確に把握されるのはさすがですね。このようにして彼のことがしっかり脳裏に刻まれるわけですね。
>音楽と役の形を決めていく「声さばき」・・・ このようなレベルの高い評論は残念ながら私の能くするところではありませんが、仰っていることはなんとなく判るような気がします。
dognorah様コメント有難うございました。コメントのお返事、失礼してこちらへ直接書かせていただいております。オペラの知識が豊富で、ホントにお詳しくて感心しながらいくつもの記事を読ませていただきました。シモンボッカネグラは、やはりちょっと安上がりな舞台装置でしたよね。でも演奏は素晴らしかったです。私が見たときは、最終幕でボッカネグラが少しバテ気味でしたが・・・来シーズンのパリは今シーズンよりもっと充実しています。今のところルチア、コシファンテゥッテ、歌舞伎、ローエングリン、サロメ、道化師を確保しています。dognorahさんのblog,とても勉強になります。度々ご訪問させていただきたい、と思っております。
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dognorah at 2006-06-10 09:36
sottovoce さん、早速こちらにコメントをありがとうございます。ここにコメントをされている助六さんもパリ在住の方ですが、これでまたパリ在住のオペラファンにめぐり合えてうれしく存じます。私の方も時々訪問させていただきますね。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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