小川典子とイギリス室内管弦楽団

ロンドン在住のピアニスト小川典子さんが村中大祐さん指揮のイギリス室内管弦楽団と共演するコンサートに行ってきました。
4月24日カドガンホールにて。

ピアノ:小川典子
フルート:ウイリアム・ベネット
指揮:村中大祐
管弦楽:イギリス室内管弦楽団

プログラム
武満:How Slow the Wind
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番ハ短調作品37
モーツァルト:フルート協奏曲ニ長調K314
ラヴェル:クープランの墓

1曲目、武満らしい緊張感を伴った音による短いフレーズが組み合わされて曲が進行していく。情景的な描写は日本人である私にはよく理解できます。しかし全体の構成としてはやや冗長感が漂うのは否めない。隣のイギリス人がとても理解できないという顔をしながら「武満をどう思う?」と話しかけてきた。「私は好きだよ」と答えると、「いや、私も好きだけど・・・」と言葉を濁す。「でも、何なの?この音楽は」とあくまで理解不能の様子。昨日のリハーサルも聴いた人の話だと、この音楽は非常に難航したそう。その人はこの本番もひやひやして聴いていたという。何でそんな曲を選んだ?

c0057725_21373195.jpg2曲目は本日の目玉。小川さんはジュリアード音楽院を出たあと、1987年に開催されたリーズピアノコンクールで入賞したのが縁でその後ずっとロンドンに住んで演奏活動をしている。もう40歳ぐらいでしょうか。隣のイギリス人は「うそー、20歳ぐらいと思ったよ」と驚いていましたが。
演奏は、オーソドックスでダイナミック、確信に満ちた音で立派なもの。第1楽章のカデンツァも聴き応えがありました。ダイナミックさは先日聴いたポール・ルイスより上、ただし音そのものは彼のほうが透明感がありましたが。彼女の音はペダルの使い方なのかやや渇き気味で、もう少し潤いがほしいと思うときがありましたが、これはホールや座席による影響もあるかもしれません。オーケストラの方もピアノと付かず離れずの演奏で、格調高いものでした。演奏中はピアニストと指揮者がほとんどアイコンタクトを取っていないのにぴたっと合っているのに感心しました。写真は終演後拍手に答える小川さん。

隣のイギリス人は、演奏前に「評判の高いこのピアニストを実際にこの耳で聴いてみたくて来た」といっていましたが、この演奏に大いに満足した様子で、「世界クラスのピアニストになれる素質がある。ほとんどミスタッチがないことにも感心。」とコメント。指揮者についても、とてもいい指揮者だと褒めていました。村中さんは、ピアノを習っていたものの、大学は外国語大学出身で、卒業後にヴィーンへ行って指揮を学んだ人です。1995年にイタリアの指揮者コンクールで1位を獲得したときから指揮者としてのキャリアを積んできました。あちこちのイタリアの歌劇場でオペラを指揮したあと東京でも指揮しています。現在は横浜でオーケストラを立ち上げ中で多忙とのこと。

3曲目のフルート協奏曲はまあ標準的な演奏でしたが、ベネットのフルートの音色はあまり好きではありません。もっとやわらかく暖かい音色が好みです。
隣のイギリス人は非常に辛口で「最低だ。あんなのモーツァルトじゃない。Rubbish!」。彼が演奏中から興味をなくしていたのは私にもわかりましたが、ここまで貶すとは。

4曲目は、私はピアノ曲だと思っていたのですが、作曲者自身が後に管弦楽用も書いているということを初めて知りました。ラヴェルの音色感がよく出ていた好演だったと思います。
しかし今日のプログラムはどういうポリシーで選ばれたのかちょっと理解に苦しむ選曲です。何人かの企画者の妥協の産物という感じがしないでもない。

すべてのプログラムに対するリハーサル時間が昨日の3時間のみで、今日、本番前におさらいして終わりだったので大変だったという話が終演後のパーティで指揮者からあったが、それにしては独奏者二人との共演はよく合っていました。

c0057725_2140852.jpg終了後、ロビーに行くと真ん中部分をロープで囲って主催者によるパーティが開かれていたので参加させていただきました。出演者も参加しています。日本人聴衆が非常に多かったわけですが、10人ほど会った知り合いに聞くとほとんどの人はスポンサー企業から回ってきた切符で来ていることがわかりました。道理で第1楽章終了時に拍手が起こるわけです。左の写真は挨拶する村中さん。

2月にウイグモアホールでリサイタルをされた中嶋彰子さんもこのコンサートにいらしていることを友人から教えてもらい、早速見つけて話しかけてみました。今回ロンドンに来たのは今後の出演についての打ち合わせのためだったそうで、パッパーノとも会談したとのこと。まだ詳しくは言えない、とのことですが、どうやらロイヤルオペラ出演が近々(といっても2007/8年シーズンでしょうけれど)実現しそうな雰囲気で、大いに楽しみです。
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by dognorah | 2006-04-25 21:45 | コンサート
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