モーツァルトのオペラ「羊飼いの王様」

ロイヤルオペラハウスの2軍的存在ROH2による公演です。
4月20日、Linbury Studio Theatre(ロイヤルオペラハウス内)にて。

Il re pastore : Serenata in two acts (1775)
Music : Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791)
Libretto : Pietro Metastasio (1751)

Director, set designs, lighting : Lloyd Davies
Costume designs : Susanne Hubrich
Conductor : Edward Gardner
Orchestra : English Baroque Soloists

Aminta : Katie Van Kooten
Elisa : Ana James
Alessandro : Peter Bronder
Agenor : Robert Murray
Tamiri : Anna Leese
アレクサンダーの兵士たちは8人の俳優が演じる。

あらすじ
アレクサンダー大王がギリシャのシドンという町を征服したときの話。誰に統治させようかと考えていたとき、高貴な生まれなのにある経緯で羊飼いをしているアミンタという若者がいるのを聞いて彼に白羽の矢を立てる。彼は羊飼い仲間の娘エリサと恋仲なので、それを受けるかどうか思い悩むが、とりあえずアレクサンダー大王の使者(もとシドンの貴族)アゲノールのもとへ行く。一方、アゲノールは戦乱で逃げたシドンの王女タミリと恋仲であったがアレクサンダーには隠していた。アレクサンダーはアミンタを見て気に入り、行方不明となっているタミリを女王にするとバランスが取れると考える。そして彼女を探し出して結婚を実行させようとするが、タミリとエリサが共に大王に向かって真実を説明し、彼らの愛に打たれた彼は二組の結婚を許可し、すべてめでたしめでたしとなる。

この作品は一見オペラセリアのようであるが、モーツァルト自身はオペラでなしにセレナータと位置づけています。オペラのように舞台転換がほとんど必要なく、コンサート形式でも容易に上演できるようにしたことによります。

台本はもともと皇帝マリア・テレジアの34歳の誕生日に合わせて書かれたもので、当時いた5人の彼女の子供が全員演じられるように登場人物が5人となっています。作曲は当時の宮廷作曲家によってなされたのですが、その後多くの作曲家が取り上げ、モーツァルトも24年後に作曲したというわけです。その際、オリジナルの台本をいじってかなり短縮し、さらに第2幕と第3幕を合体して第2幕としました。そして初演はマリア・テレジアの一番下の息子マクシミリアン大公が1775年にヴェネチアへの旅行の途中で立ち寄ったザルツブルグで大公臨席のもとで演じられたということです。
そのときのアミンタの役はカストラートによって歌われたそうですが、今回はソプラノのヴァン・クーテンによって歌われました。あとの男性役は二人のテノールで、また二人の女性役はすべてソプラノです。

長い間忘れられていた作品ですが、1906年のモーツァルト生誕150年のときに復活上演されて以来あちこちで上演されるようになったようです。このリンベリー劇場でも2001年にプレミエを行い、今回が再演です。
c0057725_3502443.jpg

舞台は写真に示すようにとてもコージーな雰囲気で、よく出来ていると思います。舞台前面には小川が流れているのですがちゃんと水が流されていて、水遊びまでします。写真には写っていませんが、開始してアミンタとエリサが恋を語り終えるまではとてもかわいい羊のぬいぐるみがいくつか置いてあり、始まる前はスピーカーから羊の鳴き声が流されるのもいい雰囲気です。その羊たちはエリサが歌いながら触るとするするすると壁の出入り口から退出して観客を喜ばせます。モーターとコロが仕込んであるらしく、なかなか凝っています。奥のスクリーンは舞台進行に合わせて景色や文字などが投影されます。

音楽は19歳のモーツァルトでもまさしく彼の音楽で、楽しくまた美しい。筋は単純なので、歌手たちの出来がよければ素直に楽しめる作品です。
3人の女性はすべて文句なし。見ないで聴いていると誰が誰だかわかりませんが、みんな実績のある人たちなので安心して音楽に浸れます。ヴァン・クーテンは来期はメインステージでFaustのマルゲリータとLa Bohemeのミミを歌うことになっています。アナ・ジェームスは先日の「フィガロの結婚」でバルベリーナを歌ったばかり、今期はさらに「シラノ」にも出演することになっています。アナ・リースは昨年見た「ロメオとジュリエット」でジュリエットをやった人です。
これに比べて男性陣はやや物足りない。アレッサンドロを歌ったピーター・ブロンダーはウェールズ・ナショナル・オペラのヴェテランですが、声はちょっと艶が不足で魅力的ではない。アゲノールを歌ったロバート・マレーは声はそれよりましですが今日はちょっと元気がなかったような。演技はよかった。

指揮のエドワード・ガードナーはグラインドボーン・ツーリング。オペラなどで実績を積んでいる若手ですが、2007年からはENOの音楽監督に就任する人です。今回の指揮は手馴れたもので、オーケストラと歌手のバランスもよかったと思います。

下の写真は終演後のもので、左のたすきがけがピーター・ブロンダー、挨拶しているアナ・ジェームス、指揮者、ケイティー・ヴァン・クーテン、ロバート・マレー、アナ・リースです。
c0057725_3511244.jpg

[PR]
by dognorah | 2006-04-22 03:55 | オペラ
<< ピアノリサイタル(4月21日) ロンドン交響楽団演奏会 >>