ロイヤルオペラの「神々のたそがれ」プレミエ

(4月20日写真追加)

Götterdämmerung: 4月17日、コヴェントガーデンにて。
キース・ウォーナーの新演出によるワーグナーの「ニーベルンクの指輪」は一昨年12月に「ラインの黄金」が初演されて以来16ヶ月ぶりに幕を閉じることになりました。すべてに納得のいく舞台ではありませんでしたが、いつものように感想を述べてみたいと思います。

演出について
かなり説明的でわかりやすい演出です。ジークフリートの旅立ちではその音楽が鳴っている間ヴィデオ映像を駆使して彼があちこち旅するさまが説明されるし、ジークフリートの葬送行進曲では瀕死の彼によろよろと歩かせて、音楽の終了と共に倒れるとか。
私がDVDで見たものなどは、ジークフリートの死体がギービヒ家に帰ってからハーゲンが指輪を奪おうとして阻止されますが、今回の舞台では殺した直後に指輪を抜き取ろうとしてグンターの配下に弓を向けられ、やむなく断念するという風にしているのはより自然だと思います。このハーゲンの性格付けですが、父親が違うとはいえ同じ母親から生れたグートルーネとの近親相姦を匂わせていて、これも割りと説得力があります。普段の性格としては、計画が上手くいったといって小躍りしてはしゃぎ、冗談も飛ばす陽気な男で、それをダブルの背広をきちんと着たトムリンソンが実に上手く演じています。
前作の「ジークフリート」では疑いもなく主人公はジークフリートその人ですが、「神々のたそがれ」ではブリュンヒルデです。彼女が死ぬ前に歌う場面の壮大さはなかなかの見もので、この前の記事で述べた2種類のDVDのラストの不満はここでは完全に払拭されました。壮大です。これだけ大掛かりに炎を使った舞台は初めて見ました。日本だと消防法のために実現は無理でしょう。下の写真はあちこちに火をつけて回るブリュンヒルデ。
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今回は舞台装置のデザインや衣装もよく出来ていると思いました。かなり現代風ですが、さりとて完全に現代ではない。服装は揃っていて調和が取れています。

よく理解できない点も多々あります。
・ブリュンヒルデがジークフリートに貸す馬が馬の頭蓋骨(観客からは失笑)。
・第2幕でハーゲンがアルベリッヒの訪問を受ける前に自分の鞄を開けて中身を見る場面があり、金色の高さ60cmぐらいの女性像、刃渡り70cmぐらいの剣、女のものと思しき鬘、そしてネクタイ。そのネクタイを首に巻いて結ぶでもなくそのまま居眠りする。
・そこへやってくるアルベリッヒは空中に吊るした船の中ですが、右半身怪我をして血だらけで、酸素呼吸までしている。いつ怪我をした?
・終了間際に天井から大きな金属的光沢の輪が降りてくるのですが、その輪にボーイッシュな女性が立っている。輪はRingに引っ掛けているのでしょうが、この人物は何?

パッパーノの指揮
第1幕はあまり生気がなくオケの鳴り方も悪い。ワーグナーの世界に入りきれず、始まってすぐがっかりしました。第2幕で少しましになり、第3幕では納得できる音楽となっていましたが。もう少しテンポの緩急をつけて盛り上げてほしいと思います。前作まではかなりよかったのに。10日後にもう一度見ますのでそのときに期待しましょう。

歌手について
c0057725_9334164.jpgハーゲンを歌ったトムリンソンは歌も演技もとてもよかったです(左の写真で背広姿がハーゲン、赤い服はグンター)。
ジークフリートのトレリーヴァンは第1幕は調子が上がらず、第2幕からましになったのはパッパーノの影響か?
ブリュンヒルデ役リサ・ガスティーンはいつものパワーフルな歌唱で、なかなか。ただ過去にも書いていますがこの人は数年前にイゾルデを歌ったときの声から質が変わっており、現在の声質はあまり好みではありません。煉獄的な中途半端さが感じられます。
ヴァルトラウテを歌った藤村実穂子(最初、字を間違えていましたので修正しました)はロイヤルオペラ初登場ですが、なかなか魅力的な歌唱でした。声量はリサにはかないませんが。演技もよいし、終演後の観客の拍手も大きかった。
グンターを歌ったピーター・コールマン-ライトも私には好ましい歌唱でした。
グートルーネのエミリー・マギーもまずまず。
ラインの乙女たちはサラ・フォックスをはじめそれぞれはよく歌っているのに3人がちょっとばらばらな感じで合わないところもあり惜しい。
3人のノルンはよく声が出ていたものの誰が誰だかよくわかりません。
下の写真は藤村実穂子とリサ・ガスティーンです。
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その他
第1幕、ジークフリートがグンターと契りを交わすところで、居間に既に赤い液体の入ったグラスが用意してあったのですが、トレリーヴァンがうっかり長椅子の上に倒してしまい、トムリンソンがポケットから取り出したハンカチで何食わぬ顔をして拭いていました。当然次の二人の血を絞って入れても赤い色はほとんどなし(^^;

「ラインの黄金」の始まり部分で3人のラインの乙女がヌードで登場しましたが、今回の最後、指輪を返してもらって喜ぶシーンでは煌々としたライトの下で服を脱いでヌードになりました。これから見に行く殿方は双眼鏡をお忘れなきよう。このヌード、下半身につける三角に黒い毛が描いてあったので演出家はもともと全裸にしたかったのではないかと思いますが、歌手が嫌がったので妥協したか。

さて、ようやく完成した新演出、来年はバイロイト並みにすべて通して上演する計画ですが、やはりそういう風にしないとワーグナーの意図も生きてこないし、一貫性も感じられないのでその試みは大いに歓迎します。楽しみです。

キャスト
Music and libretto: Richard Wagner
Conductor: Antonio Pappano
Director: Keith Warner
Set Designs: Stefanos Lazaridis
Costume Designs: Marie-Jenne Lecca 
Lighting: Wolfgang Göbbel
Movement Director: Claire Glaskin

First Norn: Catherine Wyn-Rogers
Second Norn: Yvonne Howard
Third Norn: Marina Poplavskaya
Brüunhilde: Lisa Gasteen
Siegfried: John Treleavan
Gunther: Peter Coleman-Wright
Hagen: John Tomlinson
Gutrune: Emily Magee
Waltraute: Mihoko Fujimura
Alberich: Peter Sidhom
Woglinde: Sarah Fox
Wellgunde: Heather Shipp
Floshilde: Sarah Castle
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by dognorah | 2006-04-19 00:00 | オペラ
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