エフゲニー・オネーギン(3月22日)

ロイヤルオペラの公演です。

Music: Pyotr Il’yich Tchaikovsky
Conductor: Philippe Jordan
Director: Steven Pimlott
Designs: Antony McDonald
Lighting: Peter Mumford
Choreography and Movement: Linda Dobell

主な配役
Eugene Onegin: Dmitri Hvorostovsky
Tatyana: Amanda Roocroft
Lensky: Rolando Villazón
Olga: Nino Surguladze
Prince Gremin: Eric Halfvarson
Madame Larina: Yvonne Howard
Filipyevna: Susan Gorton
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チャイコフスキーのオペラは数年前に上演された「スペードの女王」以来久しぶりです。ロシア語だから主役にロシア人を配したのは正解でしょう。

指揮
c0057725_384696.jpg指揮者のフィリップ・ジョルダン(左の写真)は1974年チューリッヒの生まれでまだ31歳、ROHでは過去に「魔笛」と「サムソンとデリラ」を指揮したことがありますが、運動量の激しいエネルギッシュな指揮振りが印象的です。若くして各地でもてはやされていることからしても優れた指揮者であるのでしょう。今回のチャイコフスキーは叙情的なメロディを抑制を効かせながらも美しく流していましたが、第1幕第2場のタチアナの寝室での長いモノローグのあたりがやや散漫で、もう少しテンポ的に工夫してほしかった気がします。

演出
今回の新演出は、なかなかすばらしかったと思います。とても具象的で、ロシアのどこかの田舎にある屋敷の雰囲気がよく醸し出されていて物語の流れがとてもスムーズ。衣装も時代を反映したいいデザインで豪華。本当に水を張った池を出現させるなど舞台装置の方も頑張っています。冬はアイススケートのシーンも出てきますが、まるで本物の氷のように見せるテクニックにも感心。スケート靴は見た目には本物に見えるし、すいすい滑ってもいます。双眼鏡で観察してもよく仕掛けはわからないけれど、エッジの中に小さなローラーを仕込むということをやっているのかもしれません。

音楽が始まると、ヌードの男性が座って何かに悩んでいるかのようなポーズの大きな絵が現れます。この絵は各幕でシーンに応じて変わります。レンスキーが決闘で射殺されるシーンでは直後に暗殺されたマラーを思わせる絵が出たりして比較的わかりやすいのですが、この最初の男性ヌードは謎です。詩人のように想像たくましくしているタチアナの心の中を表しているのか、とも思いますが。

歌手
c0057725_3103453.jpgタイトルロールを歌ったホロストフスキー(左の写真)は、この前の仮面舞踏会では無様な歌で失望させてくれましたが、さすがにお国のチャイコフスキーものでは美しく歌い上げてくれました。第2幕まではかなり抑制を効かせて声の質を保ち、第3幕ではエンジン全開で朗々とアリアを歌ってくれて大満足です。この人はヴェルディにはあまり向かないのでレパートリーを考えるべきだと思います。



c0057725_3122275.jpgタチアナを歌ったルークロフト(右の写真)は何度もROHに出演するイギリス人ソプラノですが、高音部がスムーズに出ないせいで最高の賛辞を貰うことは少ない人です。今回もやや高音部が出にくいところがありましたが、中音部の美声を駆使して全体的には十分美しくまたドラマティックにタチアナの心情を歌っていたと思います。



c0057725_3140100.jpgエフゲニー・オネーギンは初出演というヴィヤソン(左の写真)はレンスキー役でしたが、衣装がとてもお似合いで今回はミスター・ビーンという渾名は返上。ROHに出演するのを見るのは2004年のホフマン以来2度目ですが、そのホフマン役の時と同程度の出来で、結構いいレベルだったと思います。もう少し声を響かせてほしいと思いますが、チャイコフスキーのオペラではこんなものでしょうか。この人こそヴェルディで聴いてみたいのですが、秋に予定しているネトレプコとのジョイントリサイタルまでお預けでしょう。



c0057725_315957.jpgオルガを歌ったスルグラゼ(右の写真)はグルジア出身のメゾソプラノですが、美しい声がよく出ていて合格。おきゃんな妹役を演じる演技力も立派で、タチアナと共に好対照な姉妹の性格をきっちり表現していました。




c0057725_3164699.jpg第3幕で一曲歌うだけのグレミン王子はバスのハーフヴァーソン(左の写真)が演じていましたが、この人はリゴレットでの殺し屋のイメージが頭にこびりついているせいか、立派な衣装を身につけた姿にびっくりしました。声は相変わらずあのどすの効く低音が健在でしたが、このたった一曲のアリアが結構長く、後半になると声が掠れてきたのはいただけません。調子が悪かったのか、それともあの低音は長く持続しないのかよくわかりませんが、24日にもう一度聴くので確認しましょう。



その他、ラリーナ夫人や乳母を歌った人も歌も演技も立派。決闘の時の世話人を務めたグリードウもいつもの端役ながらちゃんとこなしていました。この人にグレミンを演じさせても面白いかも。タチアナの命名日パーティで余興に歌われるムッシュー・トリケの歌はちょっとレベルが下がります。合唱は今回も文句なし。

帰りの電車で、オペラハウスでよく顔を見るけれどお互いに名前も知らない中国系の人とばったり会い、いろいろ感想を話し合いました。チャイコフスキーの音楽はすばらしいねぇ、と水を向けると、「そうなんだよ。このオペラは大好きなものの一つなんだ」とにこにこ。「ロンドンに住んでてほんとにラッキーだよ」とも。これは激しく同意。
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by dognorah | 2006-03-24 03:39 | オペラ
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