ヘンデルのオペラ「ヘラクレス(Hercules)」(3月15日)

Barbican Theatreでの公演です。
このプロダクションはエクス、パリ、ウイーンとの共同制作で、エクスで2004年にプレミエをやったあと、欧州各地とニューヨークで公演してまわり、やっとロンドンに来たものです。評判がいいので各地での公演と同様ロンドンでの3回の公演は切符がすべて売り切れとのことです。でも、本日確かめたらリターンチケットは何枚かあるようです。毎回6時からそれを売り出すとのことですが、今日は6時半でもまだありました。

オペラと演奏者
音楽:ヘンデルのオラトリオHerculesに基づいたもの
作詞:Thomas Broughton(英語)
演出:Luc Bondy
指揮:William Christie
管弦楽と合唱:Les Arts Florissants
舞台セット:Richard Peduzzi
衣装:Rudy Sabounghi
照明:Dominique Bruguière

Hercules: William Shimell
Dejanira: Joyce DiDonato
Hyllus: Ed Lyon
Iole: Ingela Bohlin(声はHannah Bayodi)
Lichas: Katija Dragojevic
Priest of Jupiter: Simon Kirkbride

この作品はもともと英語のテキストにオラトリオとして作曲されたものですが、以前からオペラとしても演奏されているようで既に十数年前にガーディナーがオペラとしてCDを出しています。そのCDではなんとJohn Tomlinsonがヘラクレスを歌っています。最近ではミンコフスキーのCDもあるようです。DVDではこのプロダクションのものが既に出ています。Ed Lyonの代わりにToby Spenceが出ているものです。
公演は字幕なしの英語ですが、古語が結構多いし、かなり聞き取りにくいです。あらかじめ筋を把握していないと付いていけないでしょう。

演奏
演奏はなかなかすばらしいものでした。シメル、ディドナート、ライオンは好調で、合唱の質の高さも特筆物です。シメルとディドナートは演技も上手で、特にディドナートは嫉妬に怒り狂う場面ではすごい迫力です。この人、ついこの前見た「セヴィリアの理髪師」でも怒り狂う場面ではすごい迫力だったので、実生活上でも怖い人なのかもしれないなぁと思っちゃったりしました(^^; ただ、ヘラクレスが死んで狂乱する場面ではちょっと単調で、演出面でももう一工夫ほしいところです。
イオレ役のボーリンが初日だというのに風邪をひいて口パク出演、代わりに合唱のソプラノトップであるバヨディが急遽ピットで歌うという変則上演になったのはちょっと残念です。しかしこの代役のソプラノがなかなかの実力者であまり違和感がなかったのは幸い。どうも冬はこの手の事故がつき物で、昨年も「ラインの黄金」でブリン・ターフェルが口パクをやったことを記事にしています。
リチャス役のドラゴジェヴィックは第1幕ではあまり声が出ず、ちょっと落ちるなぁと思っていたら次第に回復し、第3幕ではいい声になっていました。
クリスティの音楽もいい感じで、美しくヘンデルを響かせています。ところで、この指揮者はアメリカ人でフランスに住みこのレザル・フロリッサンを設立したそうですが、先月聴いたロデリンダを演奏したカーティスもアメリカ人でイタリアに住んで同様の活動をしているのが面白い。何が彼らをそういう行動に駆り立てているのでしょう。

舞台
舞台のほうですが、全面に砂が敷き詰めてあり、多くの出演者は裸足です。デジャニラが怒って砂を蹴散らすような場面が結構あるので恐らくオケピットにはかなり飛んでいることでしょう。終演後は頭を洗わないと(^^;
砂の上には恐らくヘラクレスの大きな像でしょうか、首、胴体、手足などが切断されてあちこちに転がされています。各幕でその配置が違えてあります。
服装は現代のもので、合唱隊も含めて色とりどりの私服で登場といういでたち。古代を意識させるのはヘラクレスの像と最後に登場するジュピターの全身像ぐらいのものです。第3幕はヘラクレスが死ぬので全員上下とも黒服です。
舞台を見ていて感銘を受けたのが、照明です。大体が左斜め上から、時には真横から光を当てるのですが、実に微妙に場面に応じてその色合いと明るさを変えて演技者の心理を表現しています。とても美しい。真横からの淡い光に砂の凹凸が陰影を作るさまは特に印象的でした。
下の写真はカーテンコール時のもの。左から血だらけのシメル、照明のBruguière、ディドナート、指揮のクリスティ、演出のボンディ、イオレのボーリン、ピットで歌ったバヨディ、ライオン、カークブライド。
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全部で3時間半ぐらいかかるオペラですが、第1幕と第2幕を2時間20分ぶっ続けで演奏というのは長すぎます。休憩を入れてほしい。第3幕の前にやっとインターヴァルがあり、席に戻ってくると左右の席が櫛抜け状態になっていました(^^; 隣のお兄さんは上演中からあくびをしていたので予想できましたが、これほど沢山帰ってしまうとは!何が期待はずれだったのか知りませんが、もったいない。

あらすじ
ヘラクレスはある国を滅ぼすための戦争に行ったまま音信不通で、もう死んだのではないかとデジャニラは心配している。神託所でお伺いを立てると、彼は死んでオイテ山の頂で火葬にされたという。息子のハイリュスはそれを信じず、探す旅に出ようとするがまさにそのときにヘラクレスが帰還する。しかし敵の王を殺し、その娘のイオレを捕虜として連れてきたのが災いの元、若くて美しい彼女を見てデジャニラが激しい嫉妬心を燃やす。
デジャニラはケンタウルス族のネッソスがヘラクレスに殺されるときに彼女に託した血だらけの上着を思い出す。それを相手に着させると失われた愛を取り戻せる、という触れ込みだったから。それをリチャスに持たせて、身の潔白を証明するために彼に着るように言う。ところが、実はその服はネッソスの策略で復讐のために毒が含ませてあり、ヘラクレスは死んでしまう。息子に遺言として、ジュピターの下に旅立てるように遺骸をオイテ山の頂で火葬にするように伝える。これにより最初の神託が現実のものとなる。
デジャニラは気が狂ってしまうが、ハイリュスとイオレはジュピターの神官の勧めで結婚する。
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by dognorah | 2006-03-17 00:38 | オペラ
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