ロンドン交響楽団演奏会(2月28日)

指揮:Myun-Whun Chung
ピアノ:Yundi Li

曲目
ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11
マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調

弦楽器はショパンもマーラーも対向配置です。
チュンもリーも初めて聴く人です。会場は韓国人と中国人の観客がいっぱいでした。

c0057725_20502539.jpgユンディ・リーは2000年のショパンコンクールで優勝した中国人。ダン・タイ・ソンについで二人目のアジア人優勝者でしょうか。1982年生まれなので今年まだ24歳。
コンクールのとき以来この曲はいったい何度弾かされたことでしょう。当時とはテクニックも楽曲に対する解釈も変わっているでしょうけれどさすがに優勝者、すばらしい演奏でした。音が透明で力強さと繊細さが同居しています。特に高音部の美しさと繊細な弾き方で醸しだされる豊かな情感が印象的で、非常に優れた音楽性の持ち主と見ました。
第1楽章はオーケストラが遅めのテンポでやや気のない導入でしたが、ピアノ独奏部の後はしっかりとピアノに合わせた力強い演奏で生き生きしたものでした。ピアノは早いパッセージでも一音一音が粒立っていながらとても滑らかです。テンポやダイナミズムの取り方も説得力十分。
第2楽章はオケのヴォリュームをぐっと絞って静かな雰囲気をたたえる中、ガラス細工のような繊細なピアノが美を極めます。こんな美しい第2楽章は初めての経験です。うっとりとしてしまいました。
第3楽章はまた元に戻って、速めのテンポで溌剌とした演奏で締めくくります。
何度か聴いたことのあるこの曲の演奏では今日のがベストと思いました。
アンコールを1曲演奏しましたが、彼の声は天井桟敷では聞き取れず、曲も知らないものなので曲名を書けませんが(追記:問い合わせをしていたLSOから返事が来て、Ling-er-yaoという作曲家のSunflowersという作品であることがわかりました)、高い音を集中的に弾く美しい小品で、彼の特徴を披露するのに適した曲でした。これもすばらしい。写真は、演奏後の指揮者のチュンとピアニストのリーです。

休憩後はマーラーの5番。チュンは欧州では大活躍ですが余りイギリスには来ない有名指揮者なので期待しました。
第1楽章は力強く壮麗に開始され、これから1時間以上続くであろうマーラーの世界に期待を膨らませられます。しかし展開していくにつれてやや退屈感が忍び寄ってきました。何がよくないのかはわかりませんが、ちょっと表面的な演奏だったか。それが第2楽章まで続きます。第3楽章になってやや持ち直し、メリハリの利いた演奏でホッとします。第4楽章は映画のように情感たっぷりの美しい演奏を期待していましたが、抑え目のダイナミズムであっさりした演奏でした。特に盛り上がりはなし。ところが第5楽章になって俄然元気になって、生き生きした生の讃歌を歌い上げます。結果的には聴衆を沸かせるエンディングになるのですが、私には今一納得の行かない演奏です。もっと名演があるだろうという期待で今後も聴いていきましょう。

このマーラーの5番というのは解説書によると2番から4番までの3曲に見られる宗教や哲学など形而上的思想に基づいたテーマではなく、また後に続く6番7番の純粋器楽曲的交響曲とも違い、実人生をテーマにしたものだそうです。曲の半ばまで仕上げたころに彼は最初の妻であるアルマに出会います。出会って3週間後にはもうプロポーズしたということですからめらめらと恋愛感情が芽生えたのでしょう。そして彼女に愛を讃える曲を進呈します。それが第4楽章のアダージエットです。楽譜が届いただけで言葉は何も添付されていなかったけれど彼女はそれを理解したそうです。ロマンティックですねぇ。こういう愛の告白を受けて拒否する女性はいないでしょう。古来芸術家というのは詩にしろ絵画にしろ音楽にしろ愛する対象に啓示を受けて創作することが多いのですがこれもその典型例ですね。そして彼は結婚後に第4楽章を仕上げますが当然それは生の讃歌であるわけです。
第4楽章で燃焼しきった演奏をすると、第5楽章は何だ?ということになり、事実そういう演奏に出会ったこともあります。今回の演奏のように第5楽章を大事にする構成も一理ありますが、もう少し第4楽章にもエネルギーがほしいという気がします。

なお、この同じ組み合わせでロンドン交響楽団は3月に日本と韓国の演奏旅行をするそうです。プログラムも同じです。どなたかお聴きになったら感想を聞かせていただけるとありがたいです。
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by dognorah | 2006-03-01 20:52 | コンサート
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