オペラ「フィガロの結婚」公演(2月7日)

このポピュラーな演目、モーツァルトの生誕記念を待っていたわけではないでしょうが、20世紀の末にロイヤルオペラハウスが改装されてからは初めての公演だということです。これに先立って昨年12月から今年1月にかけてロッシーニの「セヴィリアの理髪師」が公演され、観客は自然に原作の筋の流れがわかるように配慮されていたわけです。バルトロがロジーナと結婚するのを邪魔したフィガロに対して復讐を企てるなど以前の話に基づいた台詞が出てきますが、「セヴィリア」を観た直後では何の違和感もありません。

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キャスト
フィガロ:Erwin Schrott
スザンナ:Miah Persson
アルマヴィーヴァ伯爵:Gerald Finley
伯爵夫人(ロジーナ):Dorothea Röschmann
ケルビーノ:Rinat Shaham
バルトロ:Jonathan Veira
マルチェリーナ:Graciela Araya
ドン・バジリオ:Philip Langridge

指揮とチェンバロ:Antonio Pappano
演出:David McVicar
舞台装置:Tanya McCallin

まず演出ですが、マクヴィカーにしては非常におとなしく、登場人物の性格付けもごくオーソドックスと感じさせるものでした。舞台装置も衣装も古典的で、装置的にはなかなかうまく出来ていると思います。この作品は権力の象徴であるアルマヴィーヴァ伯爵が庶民層からめちゃめちゃやっつけられる話なので、この数年後に起こったフランス革命を予見したものという説もありますが、そういう解釈をしなくてもオペラとしてはとてもよく出来た作品で(なぜテノールが使われなかったのか不思議ですが)、私はモーツァルトのオペラの中では一番好きです。そして、今回は十分楽しませてくれた公演でした。

序曲が始まると、すぐに幕が上がり、宮廷内の大広間で、床掃除をする人や窓のブラインドをあける人、台所の用意で忙しく立ち働く人など早朝の忙しい廷内の様子を見せてくれます。序曲が終わる頃に左側の部屋の壁が舞台中央にせり出してきますがそれはフィガロの部屋なのでした。第1幕と第2幕は休みなしに連続して上演されますが、フィガロの部屋から伯爵夫人の部屋への転換が非常にスムーズで、音も無くあれよあれよという間に変わるテクニックはたいしたものです。お陰で音楽も全く止まらずに済みます。第3幕と第4幕の間も休みなしですが、そこはちょっとスムーズさに欠け、間があいてしまいましたが、それでも伯爵の部屋から中庭へごく短時間に変化します。全体的には非常にスマートな出来と思います。

歌手ですが、フィガロを歌ったエルウィン・シュロットと伯爵を歌ったジェラルド・フィンリーは終始すばらしい歌唱で、大満足です。フィンリーは既に名声を確立した人ですが、顔の表情など役になりきった演技と歌唱はさすがです。シュロットはウルグアイ出身の若手で、張りのある若々しい声がとても魅力的です。競争の激しいバリトンですがこれから大活躍する人でしょう。
スザンナを歌ったスウェーデン出身のミア・パーソンも初めて聴く人です。第1幕では高音がちょっと引っかかるような印象で、これをずっと聴かされるのはいやだなぁと思っていたら、時間の経過とともによくなっていって休憩後の第3幕では絶好調の喉になりました。高音までよく伸び、なんともいえない心地よい声と歌唱で感動しました。この人はもう一度聴いてみたい人です。
伯爵夫人を歌ったドロテア・レシュマンは以前魔笛でパミーナを歌ったのを聴いたことがありますが、そのときと同様水準以上をこなしていたと思います。
ケルビーノのリナト・シャハムはイスラエル出身。あまり好きな声ではないです。少年役としてはなかなかいい演技をこなしていましたが。
マルチェリーナのグラシエラ・アラヤ、ちょっと華がありませんが歌はうまい人です。
バルトロのジョナサン・ヴェイラは、同役で以前グラインドボーンで聴いたことがありますが演技も歌もとてもうまい人です。アラヤといいコンビでした。
ドン・バジリオのフィリップ・ラングリッジは最近では「ラインの黄金」でローゲをやっていましたがこの種の脇役では貴重な存在です。
パッパーノの音楽は、序曲が意外におとなしかったものの軽やかにメリハリの効いた演奏で、淀みなく美しいモーツァルトを表現していたと思います。

シュロットとパーソンが魅力的なので、後の公演で安い席が残っているならもう一度行ってみるかもしれません。
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by dognorah | 2006-02-08 22:17 | オペラ
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