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マーラーの交響曲第2番演奏会 -10月18日

ギルバート・キャプラン(Gilbert Kaplan)指揮ロイヤルフィルハーモニック管弦楽団の演奏がロイヤルアルバートホールでありました。

指揮:Gilbert Kaplan
ソプラノ:Sally Matthews
メゾソプラノ:Karen Cargill
管弦楽:Royal Philharmonic Orchestra
合唱:Philharmonia Chorus
   Crouch End Festival Chorus
   Brighton Festival Chorus
   Southend Festival Chorus

マーラーの交響曲第2番演奏会 -10月18日_c0057725_7592983.jpgキャプランという指揮者、これが初めて聞く名前ですが、検索してもどこの誰という情報はなし。アメリカ人でしょうか。年齢60歳ぐらいでしょうが、もともと投資会社を設立したビジネスマンで、マーラーに興味があって研究していたら嵌ってしまい、楽譜の校訂や指揮までやるようになったとか。専門の音楽教育は受けていないようです。指揮も特に深く研究しているマーラーの交響曲第2番しかしないようですが。それだけで世界の名だたるオーケストラを網羅しているというのもすごい。

今回の演奏会は、彼が校訂して国際マーラー協会が承認した新しい版The Revised Critical Editionの世界初演だそうです。今までの版に比べて約500箇所の訂正がなされているそうで、今までフルートが吹いていたパートをトランペットが吹くなどかなり重要な変更点がいくつかあるようです。すべてマーラーの残したメモなどを仔細に研究した結果、これが作曲家の意図したものであるとの確信に基づいているということです。

この曲の細部など頭に入っているわけではないので私には従来の演奏との違いなどわかりません。大体これの実演を聴くのも今回が初めてですから。第1楽章と第2楽章の間に5分間の休憩を入れるという作曲家の指示があるようですが、ほとんどの指揮者がそれを無視するところ、キャプランは忠実に守っています。しかし、それは無視したほうが結果はいいということが感じられました。そういう休憩を入れるということは恐らく当時のオーケストラの演奏スタイルや聴衆の意識では理にかなったことであるとマーラーが考えたのかもしれませんが、今日ではかなり違和感があり、各楽章の有機的つながりがなくなってしまいます。ということで第3楽章あたりまでかなりまとまりのないばらばらな演奏という印象です。当時は人気のない現代音楽で、マーラーも人気取りに苦心していろいろ考えたのでしょうけれど。
第4楽章から第5楽章にかけてようやくマーラーらしい音楽が聴けたという感じがしました。大人数の合唱隊(とてもうまかった)を入れた効果がしっかりと出ています。途中、ホルンが音をはずしかけてちょっとよろよろというところはありましたが、オケも先日のPROMSで聴いたダニエレ・ガッティ指揮のときほどではないものの、まあ頑張っていました。独唱のソプラノ(7月に聴いた「ミトリダーテ」でSifare役を歌っていた人)とメゾソプラノはすごく印象的というわけではないですがこんなものでしょう。メゾのほうがやや目立っていましたが。

ということで後半の歌の入るところは盛り上がって楽しめたものの、キャプランの実力はいまいちわからずじまいです。しかしマーラーという人は楽屋裏でホルンなどを吹かせるのが好きですね。今回はホールの一番上のギャラリーの裏で吹いていたのでこれも音の方向感にちょっと違和感がありました。
by dognorah | 2005-10-20 08:05 | コンサート | Comments(14)
Commented by 助六 at 2005-10-20 09:15 x
カプランの指揮、一度聴きたいと思っていました。日本でも指揮していると仏で読みましたが未確認。「Institutional Investor」誌を創刊して一儲けした後、雑誌は売却し、「復活」に集中して指揮をゼロから学び、マーラー自筆譜の演奏に関する書き込みを基にした演奏を行っているとのことでしたが、遂に校訂版まで出しましたか。
80年代後半にLSOと入れた「復活」の録音は、仏でもかなり好意的に迎えられ、丁度進行中だったシャトレ劇場でのマーラ-全曲演奏にカプランを呼べという声まであった位でした。マーラーの希望に即して本物の鐘を使った効果などなるほどと思わされるものがありました。数年前にヴィーン・フィルとの再録音がグラモフォンから出ている他、「5番」アダージェットの自筆譜に基づくとする録音もあるようです。
インタビューは「なるほど知性も意志力もありそうな男」という感じでしたが、やはり「実力はいまいちわからずじまい」ですか。ウ~ン。
Commented by dognorah at 2005-10-20 21:26
助六さん、日本のレコード会社がキャプランと表記していましたので私もそれに従いましたが、フランスではカプランと発音するんですね?
演奏はもっとずしっと来るものを期待していたのですが、熱狂する人ではなく結構冷静に音楽を作る人でした。やはり学究肌なのでしょうか。
Commented by 助六 at 2005-10-21 05:46 x
私は80年代に出たレコードの表記が「カプラン」だったので、それで憶えてしまいました。
一般に「カ」と「キャ」の区別はフランス人の耳にはirrelevantで、現代口語仏語から「カ」の音はほぼ消滅しています。Kaplan「キャプラン」、Karine「キャリーヌ」、Catherine「キャトゥリーヌ」、Quatre「キャトゥル」、Kamikaze「キャミキャーズ」と発音されます。

>結構冷静に音楽を作る
「2番」は素人はドンチャカやりたくなるタイプの音楽でしょうから、「さすが!」という評価も可能かも知れませんね。
Commented by dognorah at 2005-10-21 08:28
ということは例えばキャトリーヌ・ドヌーヴとなるわけですね。

うすうす感じていたのですが、キャプランの2番は玄人受けする演奏かなとも思います。私はCDで聴く限りバーンスタインのような演奏が好きですが。
Commented by hummel_hummel at 2005-10-21 08:56
キャプラン…!彼の実演を聴かれましたか。ウィーンフィルとの録音を聴いたことがあります。どうも先入観が大きすぎたためか、
>実力はいまいちわからずじまいです。
に近い感想だったかもしれません。。とはいえ、一曲に惚れこんで、ウィーンフィルまで指揮してしまうとはおそるべしです。今は手元にCDないので聞けませんが、もう一度聴いてみたくなりました。

>第1楽章と第2楽章の間に5分間の休憩
CDでは2枚組みで、一枚目は第1楽章だけでした。CD変えるときに5分休憩しろということだったんでしょうね。
Commented by dognorah at 2005-10-21 19:16
>一枚目は第1楽章だけ・・・
なるほど、考えられた構成ですね。普通だったら1枚目には第3楽章まで入れるでしょう。私の手元にあるマゼール指揮ヴィーンフィルではそうなっています。CDの解説書にはそのあたりのことが言及されていたかもしれませんね。
Commented by YOKO at 2005-10-21 21:48 x
確か、この方だったと思います。テンシュテットのマ-ラ―を最高と、彼が断定した記事を読んだ記憶が。。。

私は、まだ、マ-ラ―語れるほど、たくさんの場数踏んでいませんが、バ
―ンスタインは苦手ですね。もちろん、CDの話ですが。。。
Commented by dognorah at 2005-10-22 09:05
今手元にハイティンク、メータ、テンシュテット、バーンスタイン、ワルター、キャプラン、マゼールの各CDを確保しました。どの程度違いがわかるかわかりませんが、おいおい聴いて比較してみるつもりです。
ところで、YOKOさんはバーンスタインのどういうところが苦手なんですか?
Commented by YOKO at 2005-10-22 15:06 x
私のお勉強版というのが、テンシュテットだったせいか、レコ-ド店の方から、渋いねと言われましたが。。バ―ンスタイン、もう、しょっぱなから、私には仰ぎょうしくて、5分も聴くのが辛いかんじなのです。
dognorahさん、いつか、マ―ラ―CD比べ、ワインと共に、待っています。
Commented by dognorah at 2005-10-23 09:34
YOKOさん、ではテンシュテットとバーンスタインから聴き比べて見ますね。ワインは最近安くておいしいものになかなか当りません。毎日飲んではいますが、みんな値段相応なので記事にするほどの値打ちがないのですよ。
Commented by ISURUGI at 2005-12-10 00:20 x
はじめまして。

私は、2003年だったかな、キャプランがフィルハーモニア管弦楽団を指揮した演奏会をロイヤル・フェスティバル・ホールで聴きました。
そのときは、彼のレクチャーが演奏前にあったりしました。

演奏は、なかなか健闘していました。余計なことをしないので
ある意味で純化された演奏でした。私の横に座っていた老婦人
は目頭を抑えておられましたし。

マーラーの意図していたものは、十分に伝えていたと思います。
しかし、キャプランさん、またロンドンで演奏されたのですね。。。

Commented by dognorah at 2005-12-10 07:29
ISURUGIさん、始めまして。2003年ですか。その頃は仕事が忙しい、ロンドン郊外に住んでいた、オペラに熱中していたなどの条件でコンサートの方はそれほどたくさん行かなかったのでそのフィルハーモニアのものは逃しました。音楽を聴く場としてはフェスティヴァルホールの方がはるかに優れていますよね。印象的な演奏で貴重な体験でしたね。私はもう少し多様に経験しないとと思っていますのでこれからもいろいろな演奏家のものを聴いていくでしょう。
Commented by zerbinetta at 2009-12-15 08:27
古い記事へのコメントでごめんなさい。
わたしもキャプランさんUSで聴きました。2003年頃かな。指揮は下手だったけど、練習のときしっかりとオーケストラにやりたいことを伝えているのでしょう、キャプランさんの表現したいことがきちんと伝わる、とってもステキな復活でした(オーケストラはナショナル・シンフォニー)。

ところで第1楽章と第2楽章の間の5分間の休止、マーラーの手紙の中ではここで最低10分の休止をとることとなってます。第1楽章と第2楽章以降では完全に別世界と見なしていたんだと思います。わたしの聴いた限りではほとんどの指揮者は、ここで休止をとっていました(5分まではなくても)。ちなみに第3交響曲も第1楽章と第2楽章の間に休止をとることを手紙に書いてます(こちらはスコアからは省かれたみたいですが)。
Commented by dognorah at 2009-12-16 00:48
zerbinettaさん、古い記事へのコメントでもありがたいです。キャプランの指揮を本家のアメリカで経験されているんですね。私の場合は指揮者が一旦引っ込むような休止を経験したのはキャプランとヤンソンスの2回だけです。マーラーは10分もの長い休止を要求していたとは初めて知りました。
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