ジークフリート – ロイヤルオペラ10月14日

「ラインの黄金」 「ヴァルキューレ」に次ぐ「ニーベルンクの指輪」第3弾、今夜の「ジークフリート」はすばらしい出来で堪能しました。

あらすじ
独りぼっちになったジークリンデは行き倒れ寸前で小人族首領アルベリッヒの弟ミーメに助けられ、介抱を受けるがその甲斐もなくジークフリートを出産後死亡する。ジークフリートは子供と同じ無垢で奔放な性格のまま成人するが、自分の出生について無理やりミーメから真実を聞き出す。証拠として、母親から託されたジークムントの剣の残骸を示され、ミーメがどうしてもできなかった復元を成し遂げる。ミーメは「恐れ」という感覚をジークフリートに教えるためニーベルンクの指輪を守っているファフナーを退治することをそそのかし、あわよくばその指輪を自分のものにする画策をする。ジークフリートはファフナー退治に成功し、指輪を手に入れるが彼を毒殺しようとしたミーメも殺してしまう。まったくの孤独となったジークフリートは鳥に導かれて、ヴォータンによって炎の岩山に眠らされているブリュンヒルデを起しに行く。途中、放浪者(ヴォータン)の妨害を受けるが、ジークムントのときはその剣を破壊したヴォータンの槍は今回は逆にジークフリートの剣によって破壊され、ジークフリートはブリュンヒルデを娶ることに成功する。

キャスト
ジークフリート:John Treleavan
ミーメ:Gerhard Siegel
放浪者(ヴォータン):John Tomlinson
c0057725_21101.jpgアルベリッヒ:Peter Sidhom
ファフナー:Phillip Ens
森の鳥:Sarah Fox
エルダ:Jane Henschel
ブリュンヒルデ:Lisa Gasteen
指揮:Antonio Pappano
演出:Keith Warner
舞台:Stefanos Lazaridis
右の写真は練習時の打ち合わせシーンで、向かって左からTomlinson、Warner、Treleavanです。

c0057725_2115637.jpgまず歌手ですが、二人のテノール、トレリーヴァンの若人らしい艶のある声とジーゲルのやや太目の声はともに歌もうまく高音までよく伸び声量もたっぷりで、これ以上は何も望むことのないすばらしいコンビネーションといえました。トレリーヴァンは同じ役でバルセロナのリセウ劇場の2004年の公演で出演したもののDVDがあるのですが、それよりもいい出来ではないかと思いました。ただし、この人は演技に関しては大根の部類ではないかと思います。リセウのものより今回のほうが改善されているものの、動きや表情はまだまだという感じです。その点、ジーゲルは申し分ない出来です。左の写真はミーメとジークフリートです。

c0057725_2134248.jpgバスバリトンの歌手たちもまったく文句なしです。トムリンソンのヴォータンはさすがという感じです。歌も演技も満足です。放浪者ということですが、もう少し威厳のある衣装にしてほしかったと思いますが。右の写真はミーメを縛り上げるヴォータンです。



女声陣も大きな問題はありません。フォックスの声は細いので鳥の役にはぴったり。エルダ役のヘンシェルもそれらしい落ち着いた声と歌唱です。問題があるとすればガスティーンかな。声の伸びも声量もいいのですが、高音部がやや金属的になって私がブリュンヒルデに持っているイメージとは違う。c0057725_214699.jpg彼女を初めて聴いた2002年4月のイゾルデ役はそんな声ではなくハイCでもビロードのような艶の心地よい声だったのに。太りすぎて声が変質して来ているのでしょうか。それにもかかわらずジークフリートとの2重唱はすばらしいものでしたが。左の写真はブリュンヒルデです。

演出や舞台装置に関しては、なかなかの力作でしょう。普通はオーケストラしか鳴らない序曲や間奏曲の間も舞台上では役者が動いて筋の補足説明的なことをします。例えばジークフリートの子供時代などが俳優を使って無言で演じられます。第2幕冒頭ではアルベリッヒが地下から這い上がってきて(なぜか血だらけ)のたうちまわるとか、第3幕ではヴォータンが回転台の上で懊悩しながら身の回りのものをどんどん捨てていくなど。ミーメとジークフリートの住居に墜落した飛行機の残骸があってその操縦席からヴォータンが出てきたり、第1幕の衝撃的な終わり方も面白い。第2幕のドラゴンも恐ろしさがよく出来ているし。ここはラインの黄金で出てきた変身する箱をファフナーがかぶってドラゴンになるという設定ですね。ミーメがジークフリートを毒殺しようとするときの本心告白せりふが大きなねずみのぬいぐるみをかぶっていうとかもわかりやすい。ジークフリートがブリュンヒルデを見つけるシーンでは「ヴァルキューレ」でも使われた回転する衝立状のものが登場しますがこれはいまいちの感ありです。第2幕でトナカイの剥製みたいなのが登場しますがこれはあまり意味がわかりません。鳥の登場(フォックスが釣竿にぶら下げた模型の鳥を振り回す)ももう一工夫ほしいところ。ジークフリートがミーメを刺し殺す場面で地下から誰かが金属の塊みたいなものを頭上に持ってひょいっと姿を見せてすぐ引っ込むシーンも意味不明。

衣装はまったく不満です。ヴォータンとミーメが同じようなぼろデザインで、見分けがつきにくいし、第一見ていてちっとも面白くない。

パッパーノとROHオケも頑張っていました。大編成のため、5挺のハープは左側の客席をつぶして置いていましたが、速めのテンポながら叙情的なところは思いっきり美しく表現されて音楽だけでもうっとりします。

BBCのカメラが入っていましたので、後日TV放送されるでしょう。録画してDVDに焼かなくては。
なお、「神々のたそがれ」は来年4月から5月にかけて上演されますが、そのあとは2007年に4部通して上演される予定とのことです。
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by dognorah | 2005-10-15 21:13 | オペラ
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