石坂団十郎のチェロ -10月2日

前の記事で話題にしたJerusalem Chamber Music Festival関連コンサートの続きです。このコンサートはデノーケの名前に引かれて行ったことを述べましたが、切符を買ってから、演奏者の中に日本人らしい名前があるに気付きました。そのときはまだピンと来ず、前半の演奏が終わってインターヴァルのときにロビーでSony ClassicalのCDの広告に印刷されている写真を見て思い出しました。ちょっと前に「おかか1968」ダイアリーというブログでこの人に関する記事を読んでいて、この広告と同じ写真を見ていたのでした。

c0057725_18411337.jpgこの人は、日本人のお父さんとドイツ人のお母さんの間に1979年に生まれてドイツに住んでおり、各種国際コンクールで優勝して注目を浴びている若手チェリストです。ローマ字では、Danjulo Ishizakaと表記してRの代わりにLを使っています。体格のいい人で、恐らく180cm以上の身長があるでしょう。現在、日本音楽財団から1696年製のストラディヴァリウス“Lord Aylesford”を貸与されています。

今夜の出演者(ソプラノ:Angela Genokeを除く)
クラリネット:Karl-Heinz Steffens
ピアノ:Elena Bashkirova
チェロ:Danjulo Ishizaka

プログラム
ベートーベン:クラリネット3重奏曲 変ロ短調 作品11
エリオット・カーター(Elliott Carter):チェロソナタ
ブラームス:クラリネット3重奏曲 イ短調 作品114

3曲とも初めて聴く曲ですが、クラリネットトリオではブラームスの方が断然いい曲ですね。一般に私は室内楽はベートーベンはあまり好きではないということがわかってきました。このベートーベンもすごくしっかりした構成でベートーベンらしい響きですが、あとのブラームスを聴くと楽想の豊かさといい、ピアノやチェロの美しい鳴らせ方といい、はるかに性に合っています。

カーターという作曲家は名前を聞くのも初めてですが、1908年生まれでまだ存命中のようです。この作品は1948年に作曲された4楽章構成の曲ですが、さすがにかなり現代的な響きで、不協和音も結構あります。最初の2楽章はあまりよく理解できませんでしたが、第3楽章以降は心の深遠に迫る響きが繰り広げられてなかなか聴き応えのある音楽です。

演奏は、文句のつけようがありません。各楽器とも名手ぞろいのすごく洗練された演奏で、なおかつアンサンブルはぴたっと合っています。私はかぶりつきに座っていましたので、すぐ目の前で繰り広げられる豊かな音楽に圧倒されました。特にブラームスでのチェロのなんともいえないふくよかで奥の深い音は、やはりストラディヴァリウスなのでしょうか。こんな近くでこの有名な楽器を見るのも初めてでした(といっても、他の楽器との区別は私には全くつきませんが)。石坂さんはこれからもどんどん上に行く人ではないでしょうか。

c0057725_18415999.jpgクラリネットのカール-ハインツ・シュテフェンスは1952年生まれ、2000年まではバイエルン放送響のソロクラリネット奏者でしたが、現在はベルリンフィルのソロクラリネット奏者です。ザルツブルグなどのフェスティヴァルの常連で、ベルリンの音楽大学の教授でもあります。

c0057725_18423969.jpgピアニストのバシュキロヴァも只者とは思えません。世界各地のオーケストラとの共演も含む幅広い音楽活動をしています。すごいテクニックを持った人で、芯のあるカチッとした音をさらっと出しています。最初は予備知識なしにトリオの演奏を聴いていたのですが、ひょっとしてこのピアニストがリーダーかしらと思いました。履歴を読むと、まさにその通りで、このエルサレム国際室内楽フェスティヴァルというのは彼女自身によって1998年に創立され、現在もその芸術監督を務めているのでした。現在の夫のバレンボイムの影響と支援があるものと思われます。

このフェスティヴァルは毎年開かれ、第8回の今年は9月はじめから中旬まで約2週間にわたってエルサレムで開催されました。デノーケを除くあとのメンバーもエルサレムで演奏しています。

今回のWigmore Hallでのコンサートは10月1、2日に都合3回開かれ、全部で11曲の演目が演奏されたのですが、彼女はそのすべてに出演するというタフ振りです。ピアノという楽器の性格からそうなるとはいえ、自分が引っ張っているんだという自負もそうさせたのでしょう。各メンバーも恐らく彼女が個別に誘ったと思われます。

デノーケの歌曲もトリオの演奏もすばらしかったのに、残念ながら観客の入りは悪く恐らく300人ぐらいしかいませんでした。ロンドンではこの演奏者の誰もがあまり知られていないからでしょう。
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by dognorah | 2005-10-04 19:03 | コンサート
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