プッチーニ「西部の娘」-10月1日

Giacomo Pucciniのあまりポピュラーではないこのオペラ「La Fanciulla del West」の上演をロイヤルオペラハウスで見てきました。今回の上演ではこれが最終日です。
私は昨年、家人から邪魔になるという強いクレームを受けて、持っているオペラCDをすべてAmazonで売りに出したのですが、このオペラは最後まで買い手が付かなかった数少ないものの一つでした。ドミンゴ‐スカラ座‐マゼールのライブ録音です。おかげで今回予習が出来たわけですが。

このオペラの初演は1910年にNYのメトロポリタンで行われましたが、その半年後(1911年)には欧州初演が我がロイヤルオペラハウスでなされたのです。しかもプッチーニ自身の立会いのもとに。それ以来何度もここで上演されて、わたしが見た今回の公演は52回目です。演出と舞台装置は1977年のもので、最近の再演は1994年ということですから、オペラハウスが近代化されて再開した1999年以降では今回が初めてです。古い舞台装置を最新技術を使った舞台の上に再現するに当たっては、オリジナルの演出家Piero Faggioni氏が立ち会って確認したそうです。

キャスト
Minnie: Andrea Gruber
Dick Johnson (Ramerrez): José Cura
Jack Rance: Mark Delavan
指揮:Antonio Pappano
演出と照明:Piero Faggioni
舞台装置:Kenneth Adam

あらすじ
(第1幕)場所は1850年ごろのカリフォルニアの金鉱山。ミニーは鉱夫たちを相手に酒場を経営しているが、その魅力に惹かれてシェリフのジャックを含めてみんなから言い寄られている。そこへ見知らぬ男ディック(実はラメレスというお尋ね者の盗賊)がふらりと入ってきて、ミニーとお互いに一目惚れ。

(第2幕)早速自宅にディックを招待したミニーは、雪だから泊まって行け、と彼を引き留めるが、彼がお尋ね者であることを見破ったシェリフや追っ手がやってくる。いったんは隠れ果せたものの、不用意に家を出たためにシェリフに撃たれ、怪我をする。家の中で3人が対峙する中でミニーがシェリフにカードによる賭けを提案する。彼女が勝てば、ディックを見逃すが、負ければ彼女はシェリフのものになる、というものでシェリフはそれに乗る。しかし、まんまといかさまで彼女はゲームに勝ち、ディックは彼女の家で静養することになる。

(第3幕)数週間後の鉱山の作業場。シェリフ以外の追っ手はようやくディックの居所をかぎつけて逮捕し、絞首刑に処する準備をする。まさにディックがロープで吊るされようとする瞬間に騒ぎを聞きつけて現場に到着したミニーが必死でみんなを説得し、二人で新天地に旅立てるようになってハッピーエンド。

パフォーマンス
ホセ・クーラは好調で、大部分は期待したとおりの声と歌唱が聞けましたが、一部迫力不足な面もあったことは確かです。予習したドミンゴの歌唱(1991年録音)がベースになってしまってクーラには気の毒ではありますが、例えば第3幕で、処刑されたことはミニーには言わないでくれ、と歌うアリアCh’ella mi credaとか、二人で新天地に旅立とうとする場面での2重唱などもっと盛り上がってほしかったと思います。このあたりはパッパーノにも責任があるのかもしれませんが。

アメリカ人ソプラノ、アンドレア・グルーバーは、中低音に迫力がなくちょっと物足りない面もありましたが、聴かせどころのアリアでは年齢をものともせず美しい高音をヴォリュームいっぱいに響かせてくれてまあ満足とすべきでしょう。同じくアメリカ人のバリトン、マーク・デラヴァンもしっかりした低音に支えられた声と迫力ある歌唱でとてもよかったと思います。

パッパーノの指揮はプッチーニのメロディを小気味よいテンポでがんがん鳴らしていましたが、もう少し音量を下げてやらないと歌手とのバランスが悪いんじゃないの?という部分もあり、もっと叙情的に演奏してほしいなぁという場面もいくつかありました。
全体としては、主役級の3人がすばらしいアリアを披露する場面がいくつもあるのに、歌がそこで止まらずに筋が進行してしまって、「ブラボー」と声をかけるチャンスがなかったことがちょっとフラストレーションを感じることになって残念でした。これは1つにはプッチーニの音楽の流れがそうなっているからで、特に第1幕はそうです。しかし、例えば私が予習で聴いたCDでは、第2幕も第3幕もアリアのあとで会場の拍手がかなり入っており、このあたりは演出と指揮者の考え方次第でタイミングを取ることは可能なのでしょう。コヴェントガーデンでは誰のせいでそういうことになったのか知りませんが、私はちょっと不満です。

特筆すべきは、舞台の造りのすばらしさで、昔はみんなこういう風にまじめに物語を表現していた、という典型的な例ですね。第1幕の居酒屋の内部と第3幕の作業場など特にリアルで、感嘆しました。


今回は、私は切符のアロケーションに外れ、落胆していたのを不憫に思ったstmargaretさんが余っていた切符を譲ってくださり、ご一緒させていただきました。この前の「ポルトガル王ドン・セバスティアン」でもそうでしたが、オペラ好きの方とご一緒だと休憩時間にいろいろ感想を交換しながら過ごせるのがとても楽しいことです。stmargaretさん、ありがとうございました。
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by dognorah | 2005-10-02 22:19 | オペラ
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