私がよく行くもう一つのランチタイムコンサートは、サウスケンジントンにあるハイドパークチャペルで開催されるものです。主に若い音楽家による演奏ですが、時にははっとさせられる名演に出会ったり知らない曲のよさを発見したりで、いつも期待を胸に秘めて参加します。ここは大体木曜にあるので、今日が今シーズンの幕開けです。
演奏者:Jan Daniel du Preez プログラム ヘンデル:シャコンヌ ト長調 ベートーベン:ピアノソナタ第17番 作品31-2 テンペスト ブラームス:ピアノ小品集 作品118 インテルメッツォ インテルメッツォ バラード ドビュッシー:前奏曲集第1巻より4曲 Le vent dans la plaine La danse de Puck Minstrels Ce qu’a vu le vent d’Ouest このピアニストは南アフリカ共和国生まれで20代後半の長身の男性です。ワインで有名なステレンボッシュ(Stellenbosch)の音楽大学を卒業後ドイツのハノーヴァーに留学して研鑽を積み、故国はもとより欧州とカナダで幅広くリサイタルや室内楽で演奏活動をしています。イギリスの音楽大学との接点はなく、そういう人がここでコンサートをやるのは今までに例がないので、ここの方針が変わったか。 演奏は、ヘンデルのシャコンヌの冒頭の音を聞いただけで、只者ではないと思いました。造形のカチッとした音、美しい和音、自然な音楽の流れ、私はもうぞっこんです。次のベートーベンもブラームスも惚れ惚れ。ドビュッシーもとてもいいのですが、欲を言えばもう少し奔放なところがあってもいいかなという感じです。 しかし何でこんな人がたったの20名程度しか聴衆が集まらないこんなローカルなコンサートに来るの?という疑問が付きまといます。教会の世話役が一新されているのであるいは企画者が頑張りすぎたのか。しかしもったいない。彼ならSt. Martin in the Fieldでのランチタイムコンサートでやった方がいい。あそこはいつも数百人が集まりますから。ウイグモアホールでコンサートを開けるだけの実力はありますが、知名度がないから切符は売れないかもしれません。コンクールに出場するには年齢が問題かしら。 とにかく今年このチャペルで聴いたピアニストにはいろいろ上手な人はいましたが、この人が今までのベストと思いました。
by dognorah
| 2005-09-16 04:11
| コンサート
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Comments(8)
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YOKO
at 2005-09-16 20:46
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なつかしいサウスケンジントン。そこは、フランス人の溜まり場なので、お食事はおいしいとか。。私、そこのヴィクトリア・アルバ-トには、ゾッコンでした。無料の大英にはまだ、行ったことがなく、そこばっかり。。。
こういう、コンサ-トって、嬉しいんですよね。自分が見つけた--という感じで。私も、こんなコンサ-ト、行ってみようかしら。もうじき、ピアノも再開するつもりなので。。。小さなグランドがあるのですよ、もったいない、もったいない、とみにそんな気持ちになってきました。 dognorahさん、お好きなピアニスト、ベスト5を挙げてください。たぶん、たくさん、お好きな方いらっしゃいますよね。
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助六
at 2005-09-17 07:23
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マネージメントの選択の仕組みは、我々一般聴衆には不可解なことも間々ありますね。当然コネ、運、当人の野心もモノを言うのでしょう。でも20台後半なら、キャリアはまだまだこれからですよね。
dognorahさんのベスト5、私も興味あります!
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hummel_hummel at 2005-09-17 07:32
dognorahさんがここまでおっしゃるのならきっと素晴らしいピアニストでしょうね。名前覚えておきます。
ピアニストは人口が多く層が厚いので、実力と売れる売れないは関係がないことがままありますね。先日TBいただいたベートーヴェンソナタでも、実は私がこれまでに最も感動した最後のソナタは、ブレンデルでも内田さんでもなく無名(かな?)ピアニストの演奏だったりします。
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dognorah at 2005-09-17 07:54
YOKOさんかなり詳しいですね。仰るとおり駅のそばのフランス大使館の関係者が多く住んでいるのでフレンチレストランも多いですがポーランドやイタリアなどかなりインターナショナルで私はもっぱらイタリアン愛用者です。
YOKOさんはもともとピアノを弾かれていたのですね!それはぜひ再開してくださいよ。ほんとにもったいないですよ。 ピアニスト、好きな人はもちろん沢山いますが、実演を聴いた方の中から5名選びますと、Michelangeli, Argerich, Zimerman, Kissin, 内田というところですね。 今日は来年6月のPletnevのリサイタルの切符を買いました。 来年2月から6月にかけてピアニストは、Perahia, Kissin, Pollini, 内田、Sokolov, Brendelといった錚々たる人たちもリサイタルをやりますが、一番切符の売れ行きのいいのはキーシンです。後は大体同じような売れ行きですが、内田さんがちょっと悪いかな。これはモーツアルトプロのせいかと思います。今月LSOとやるシューマンの協奏曲は売り切れです。組み合わせの交響曲がElgerとWaltonだというのに。やはり新鮮なプロがいいんですよね。
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dognorah at 2005-09-17 09:05
助六さん、マネージメントも計算ずくということはあまりなくて、仰るようにコネや運がずいぶん入り込んでいるのでしょうね。彼もここまで伸びたのはいい先生が見つかったからだろうと思いますが、今後も運良く上に引っ張り上げてくれる人と出会うことが出来れば世の中に出られるのだろうと思います。
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dognorah at 2005-09-17 09:25
フンメルさんもいろいろ聴いていらっしゃるからそういう経験があるのですね。今回のように、予期していないときにすばらしい演奏だったりすると感動も大きいです。
名前を覚えるのなら、Niel du Preezがいいかもしれません。ファーストネームがややこしいので、本人が愛称で行こうとしていますので。
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YOKO
at 2005-09-17 17:17
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dognorahさん、ありがとうございました。ほぼ、納得ですね。ひとりだけ、kissinのみ、私、ダメですね。2度、聴きましたが・・・
ここ数年、私が目をつけた方々をご紹介いたします。 Buchbinder、ヴラダ-、Vogtでみんな男性です。そして、上原彩子さん は、私はモ-ツアルトの協奏曲だけですので、なんともいえませんが、リサイタルか、他の協奏曲だったか、憶えてませんが、最後まで見事に弾ききったと、サイト評では、何人か、褒めちぎっていましたね。とても個性的な演奏?らしいです。アシュケナ-ジ、私はなぜか、行きたくないですね。
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dognorah at 2005-09-18 07:27
YOKOさん、各人の好みもありますから・・・
私は、ポリーニもアシュケナージもリヒテルも聴いていますが、ものすごくよかったという印象は残念ながらありませんでした。リヒテルは録音ではものすごくいいんですけれど。挙げられた3人の男性ピアニストは全く知りません。きっとすばらしい方々なんでしょうね。今まで若手はあまり積極的には聴いてこなかったのです。 上原さんはとてもよかったです。6月9日に記事にしていますのでよろしければお読みください(http://dognorah.exblog.jp/2007688)。 私もアシュケナージはあまり興味がありませんが、本人も今は指揮しかしないんじゃないですか? 来年3月はキーシンに行きますが、久しぶりなので楽しみです。実はこの前の彼の本番の曲にすごく感動はしたのですが、曲目がなんだったか忘れてしまったのに、アンコールだけ強烈に憶えているのですよ。リストのリゴレット4重唱をテーマにしたコンサートパラグラフです。絶品でした。
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