9月も中旬になり、ロンドンもほぼ休暇シーズンが終わって街は以前のように多くのビジネスマン(ウーマン)が行き交っています。昨日までの3日間雨模様だったのに、8月下旬に戻ってきた夏はあまり衰えを見せず、今日も歩いていると汗ばむ陽気でした。
さて、今週から各地の昼休みの無料コンサートも新しいシーズン入りです。その中でも最も聴き応えのある演奏を披露してくれるロイヤルオペラハウスのランチタイムリサイタルも今日から幕開けで、早速行って来ました。 ヴィヴァルディ:弦楽器のためのコンチェルト バルトーク:ルーマニア舞曲集 メンデルスゾーン:8重奏曲 作品20 演奏:The Prince Consort Ensemble この団体は、ロンドンの音楽大学Royal College of Musicのヴァイオリンの教授Dona Lee Croftの主宰でこの学校の卒業生および現役の学生を集めて2001年に結成されました。各地で演奏会を開いてきましたが、この秋には欧州とアメリカへの演奏旅行を予定しています。第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが2名ずつで、ヴァイオリントップにこの教授が座ります。写真は終演後のものですが、一番左が教授です。 ヴィヴァルディは演奏時間が5分程度の小品ですが、始まったとたん「ああ、これはうまい!」と思いました。小さな部屋でしかも目の前で演奏されるのでホールの響きが加味されない生の音が直接耳に届く状況なのに各楽器の音もアンサンブルも文句なし。とても心地よい音楽です。音楽そのものに没頭できます。 バルトークはハンガリー人なのにルーマニア舞曲を作っていたことは知りませんでしたが、全体に舞曲らしい陽気さはあまりなく郷愁を誘うような親しみやすい作品です。これも演奏時間が10分程度の小品ですが、各曲のニュアンスを多彩に弾き分けていてよく練れた演奏でした。 メインのメンデルスゾーンは、室内楽の範疇ながらとてもスケール感のある曲で、彼の何か深い思索が込められている重い曲という印象です。全楽章を通じて、演奏からはそういう深い精神性が垣間見えます。 とにかく演奏のレベルが高い。海外演奏旅行はこのレベルを保っている限り成功間違いなしでしょう。幕開けからこんなすばらしい演奏を聴けてとても幸せな気分でした。 このランチタイムリサイタル、先シーズンは個人名のスポンサーが付いていたのですが、今日はロイヤルオペラハウス自体の主催、つまりスポンサーなしです。ちょっと先行きに不安を感じました。スケジュールは11月ぐらいまで発表されていますが。
by dognorah
| 2005-09-13 02:07
| コンサート
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Comments(7)
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助六
at 2005-09-13 07:19
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これは晴れた日のシーズン明けに是非聞きたい爽やかなプロですね!当方は金曜にビエロフラヴェク指揮グリアコワ他の「ルサルカ」、日曜が矢崎指揮東京シティ・フィル、今晩はチョン指揮ドレスデンでシーズン明けとなり上機嫌です。パリはロンドンと違って夏はかなり見事に音楽枯れとなりますので、毎年2ヶ月生の音楽がガタっと減った後の開幕コンサートは、何を聴いても良い気分になってしまいます。
Royal CollegeとRoyal Academy of Musicはどう違うのでしょうか? メンデルスゾーンは、まるでコンヴェンショナルな音楽と霊感溢れる音楽、自然な旋律が素直に湧出する音楽と極めて知的な形式上の実験曲が交互に現われる点が奇妙で、かつ興味を引かれます。そんな中で弦楽8重奏は、自然で霊感に満ちた若き日の傑作ですよね。仰る通り驚くべき精神的成熟(16歳!)と思います。実演を聞く機会は少ないように思え、小生もコチアン・プラジャーク両四重奏団合同で一度聴いたことがあるだけです。
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dognorah at 2005-09-13 09:18
シーズン明けは「ルサルカ」ですか!いかがでしたか?私は興味があるもののまだ実演はおろかDVDも見ていません。ルネ・フレミングが歌ったパリ・オペラ座のものが出ているようですが。
ロンドンの音楽大学は沢山ありすぎて私にも現在の性格の違いなどわかっていませんが、Royalを冠しているのは王室が創立時に関わっており、Royal Collegeのほうはエリザベス女王がパトロンとなっています。ここは過去の有名なイギリスの音楽家のほとんどが卒業生です。例えば、ホルスト、ヴォーン・ウイリアムズ、ブリテン、ティペット、ストコフスキー、コリン・デーヴィス、トーマス・アレンなど錚々たるものです。Royal Academyはロンドン大学の中の一つのカレッジです。これ以外で有名なものに、City of Londonが肝いりで設立したGuildhall School of Music and Dramaが活発な成果をあげているようです。 メンデルスゾーンの8重奏曲が16歳時の作品とは知りませんでした。やはり天才ですね!
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YOKO
at 2005-09-13 23:13
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わたしも、ルサルカ、興味あります。あの、吉田先生の解説で、ラジオで少し、聴いたとき、何て綺麗なオペラなんだろうと。。。随分、前のことですが。パリはいいな-。私は、今週末、重い腰をあげて、渋谷の、NHKに行こうかな-と。新国も、オペラ開幕しますが、マイスタ-。ワ-グナ-でも、これ、わたし、退屈なので。。。リング再演はもう、諦めているけど、ロ-エングりンなんか、やってくれないかな-------、もう、リングの時みたいに、
完全制覇しちゃうのだけど。。。家事、放り出して。でも、今の日本、これは絵に書いた、お餅でしょうね。
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助六
at 2005-09-14 06:40
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「ルサルカ」、DVDで出ている02年新演出の再演でした。カーセン演出は舞台装置も美しく、解釈にも面白いアイデアもあって、個人的には出来不出来の多い(売れっ子で物凄い数の仕事をこなしてますから、当然かも知れませんが)彼の演出の中では最も成功した部類と考えています。
3年前のコンロン指揮フレミング主演に替わって、今回はビエロフラヴェク指揮グリアコワ主演でした。前回も悪くなかったのだけれど、私は今回の方が指揮も主演歌手も好きでした。ビエロフラヴェクは20年位前に期待されてチェコ・フィルに登場したと記憶しますが、その後仏オケ定期に2回客演した時の印象は、「堅実」以上のものではありませんでした。オペラで聴くのは今回初めてでしたが、コンロンに比べて彼はさすがにチェコ物では水を得たよう、繊細な抒情性と劇的ダイナミスムを併せ持ち、オペラティックな感覚も充分で申し分ない出来でした。
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助六
at 2005-09-14 06:42
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ルサルカ役もエナメルみたいなフレミングの美声よりも、グリアコワ(ロシア人)の暗みを帯びた声の方が、チェコ語共々私には自然に響きました。1幕の「白銀の月」はスラヴ系歌手には珍しい純粋な声で息を呑みましたが、後半のダイナミックな部分では、ちょっとヴィブラートと篭り声が気になりました。でも哀れな水の精にぴったりの華奢な体つきの美人で、この点フレミングは全くかないません。
この曲、叙情的に美しい旋律を沢山含むけれど、劇性に乏しいと良く評されますが、私は必ずしもそうは思いません。以前ヤノフスキの指揮で聴いた時には、ヴァーグナーの影響が顕著で(半音階パッセージが多く、よく似たライトモティーフが出て来る)、劇的な堅固さも含んでいることに気付かされました。3幕の音楽がドラマ的に少し弱いのは事実と思いますが。とても美しく繊細な音楽で、この人間に憧れた小さな水の精の悲しい物語には、何度聞いても心を打たれてしまいます。
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dognorah at 2005-09-14 23:59
YOKOさんはラジオで聴かれたのですね。お気に入りのようで私も早く聴きたいです。
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dognorah at 2005-09-15 00:12
助六さん、ルサルカの詳しい公演報告ありがとうございます。すごくよかったみたいで、シーズン開幕早々感動された様子が伺えます。ますますこのオペラ見たくなりました。カーセンの演出がすばらしいのですね。それにしてもこのめったに公演されないオペラを何度も見ていらっしゃるのですね。私もマイナーな名前のものをもっと積極的に聴かねばと思いました。ロシア人歌手も注目すべき人が沢山ですね。グリアコワの名前、覚えておきたいと思います。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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