ベートーベンの第9「合唱付き」 - 8月20日

今日のプロムスはこれがメインです。昨年はラトル指揮のベルリンフィルによる演奏があったのですが切符を入手できず無念の涙を呑みました。今年はロンドンフィルでぐっと落ちますが、無事に切符を入手して聴いてきましたのでその感想を述べます。

プログラム
グバイドゥーリナ作曲The Light of the End(UK初演)
ベートーベン作曲交響曲第9番ニ短調

演奏者
ソプラノ:Christine Goerke
メゾソプラノ:Jean Rigby
テノール:Thomas Studebaker
バスバリトン:Honno Müller-Brachmann
合唱:Finchley Children’s Music Group
   London Philharmonic Choir
管弦楽:London Philharmonic Orchestra
指揮:Kurt Masur

最初の曲は現在74歳になるロシアの作曲家Sofia Gubaidulinaの大掛かりな管弦楽曲です。演奏時間は30分足らず。ボストン交響楽団の委嘱を受けて2003年に完成し、今日の指揮者マズアの棒で初演されました。したがってマズアにとってはレパートリーなわけです。
c0057725_9481133.jpg曲は弦が不安をそそるようなエキゾティックなメロディを奏でてそれに管楽器と各種打楽器が複雑に絡んで異様な雰囲気をかもし出します。3種の楽器の使い方のバランスがよく、力作という印象を受けました。非常に楽しめるというわけではないですが、退屈はしません。左の写真は終演後、マズアに呼ばれて舞台で挨拶する作曲家です。

マズアという指揮者ですが、私はロンドンで過去に何回か聴いていますし、数年前には出張で訪問したニューヨークでたまたま定期公演をしていたニューヨークフィルをリンカーンセンターで聴いたこともあります。印象としては、オーソドックスに手堅く音楽を作る人です。悪くはないけれど、すごくいいということもなかった。NYでは隣に座っていたニューヨーカーに尋ねてみましたが、評価は高く、彼が常任になって以来不満はないといっていました。

で、今夜の演奏ですが、第9の第1楽章と第2楽章、なかなかのものです。どっしりとして密度の高い表現でした。聴いている方も緊張が持続します。両楽章とも終了時にちょっと拍手がありましたが納得できます。特に第1楽章はみんなの期待を上回るものだったのでしょう、歓声まで聞こえました。しかし第3楽章は弱音のアダージョでちょっとぼろが出た感じです。このオケ、アンサンブルがやはりちょっとよくない。この美しい緩徐楽章の表現もいまいち薄っぺらで豊かな響きがほとんどない。まあこれは指揮者の問題かもしれません。でも、第4楽章でまた元気を取り戻してぐいぐいという感じです。
c0057725_949977.jpg独奏者は、バリトンとソプラノが水準の出来、メゾとテノールはちょっとがっかりです。特にテノールは左の写真にもありますようにこの図体なのに貧弱な声です。バリトンは声量的には合格ですが、歌い方が余りスムーズではなく言葉が途切れ途切れです。いつも思うのですが、この第4楽章で最初に歌うバリトンのパートでは独唱者はベテランでもどきどきものでしょうね。聴いている方だってどきどきしますから。ここをうまく歌ってくれるとこちらもその後安心して聴けるというものです。
合唱はすごくよかった。これだけは日本で聴く第9では真似が出来ないでしょう。大きなホールなので二つの合唱団が合同で歌ったのですが、声量はもちろんのことアンサンブルといい細かなニュアンスの表現といい大満足です。合唱のポーズの部分で気づいたのですが、このホールの残響時間は2-3秒で消え方も自然でとても聴きやすい。長年の努力でここまで改善されたものと思います。
コーダの部分は特に熱狂的になることなく、よくコントロールされて感じよく終わりました。この辺がマズアらしいといえます。聴衆の反応はとても熱狂的でしたが、特に合唱団に対してはそれまで比較的静かだった私の席の回りからも歓声が上がるくらいの大きな拍手喝采で、やはりみんなの思いは同じと実感した次第です。
このオーケストラ、まあまあの音を出してくれるのですが、17日に聴いたロイヤルフィルのほうが実力は上と思います。

ところで、今日は安い席は満席、高い席でも9割方埋まっていました。先日のシェーファーのときが5-6割の入りだったことを考えると、イギリス人もベートーベンの第9が好きなんだということがわかります。
こういう満席のときに、まんの悪いことにダブルブッキングのトラブルに巻き込まれた人たちがいます。システムエラーですね。私は先日と同じサークル席にいたのですが、私の斜め前の最前列でありました。それも一人や二人ではなく6人以上。まるで飛行機の座席予約みたいにオーヴァーブッキングしちゃったんですね。不思議なことに1曲目の現代曲が始まるときには何もトラブラなかったのです。かなりの人が第9だけを聴こうと思って来たんですね。それで休憩時間後に発覚。第1楽章が始まってもまだ揉めてました。「私はこの曲をこの席で聞きたいと思っていたのにー」と、ある婦人がドイツ訛りの英語で嘆いていました。お気の毒としか言いようがありません。
[PR]
by dognorah | 2005-08-21 09:53 | コンサート
<< ダイヤモンドの輝き BBC PROMS コンサート... >>