バービカンホールで開催されていたMostly Mozart Festivalはいよいよ最終日となりました。本日のプログラムは次の通りです。レクイエムを聴きたくて行きました。
モーツアルト:歌劇「イドメネオ」より5つのバレーシーン ハイドン:ピアノ協奏曲第11番ニ長調 モーツアルト:レクイエム ニ短調 K626 演奏者は、 指揮:John Nelson 管弦楽:Academy of St Martin in the Fields ピアノ:Leon McCawley ソプラノ:Rebecca Evans メゾソプラノ:Alice Coote テノール:Robert Murray バス:Jonathan Gunthorpe 合唱:Mostly Mozart Festival Chorus 指揮者ジョン・ネルソンはコスタ・リカ生まれでニューヨークのジュリアード音楽院で教育を受けた人である。アメリカ各地のオーケストラやオペラの音楽監督を歴任した後、現在はフランスに住み、L’Ensemble Orchestral de Parisの音楽監督をしている。 1曲目の曲は多分初めて聴く曲と思うがあまりバレー音楽的な感じのしない堅い音楽または演奏だった。やや退屈。 2曲目も多分初めて聴く曲と思う。このあたりの音楽はハイドンと言われればそうかなという程度でモーツアルトとの差もあまりわからないけれど、音楽としてはとても楽しめる。特に第2楽章は管弦楽もピアノも美しく印象的である。ピアニストは手首の動きがすばらしくしなやかで、音もそれにふさわしい美しさ。19歳のときにウイーンで開催されたベートーベンピアノコンクールで優勝したそうだ。当年31歳。 休憩後はお目当てのレクイエム。 指揮者が登場すると、最初に観客に向かって口を開く。 「私はアメリカ人として、先日起こった悲劇に対するお悔やみの心を皆様と共有したいと思います。今日のレクイエムを犠牲者の方々に捧げます」 厳かに演奏が開始され、程なくしてコーラスが始まるがすばらしいアンサンブルだ。小規模なオーケストラに合わせてこちらも総勢34人という小規模なコーラスだが実力者揃いで質が高い。各パートとも終始一貫して美しく力強いハーモニーを感じさせてくれた。これがこのフェスティヴァルのためにいくつかのプロフェッショナルグループを寄せ集めて組織されたと書いてあるのだが、それが信じられないくらい質が高い。オーケストラの濁りのない音質と共にこのレクイエムの光と影を存分に描出していたと思う。 独唱者の方は、普段ロイヤルオペラで脇役をやる人たちなので名前は馴染みであるが、バス以外は水準の出来であった。バスはもう少し力強さがほしかった。この人はロイヤルオペラの「マイスタージンガー」でNachtigall役で出ていたのを聴いているのだがそのときは悪いと言う印象はなかったので、今夜はちょっと調子が悪かったのか。 テノールは以前ロイヤルオペラのランチタイムコンサートで「美しき水車小屋の娘」を歌ってくれた人で、ついこの前見た「リゴレット」でも宮廷吏の一人として出ていた。 7月7日のテロ後レクイエムを聴くのはヴェルディに次いでこれが2度目ですがいずれも当然ながら犠牲者に捧げられました。これを書いていると再び涙が出てきます。 終演後は、フェスティヴァルの打ち上げということでホールの中庭で花火が打ち上げられました。周りには結構アパートが立っている市街地なのであまり大規模というわけには行きませんが、日本じゃとてもこんなところでの打ち上げ花火は許可されないだろうなという程度の規模ではありました。シャンパンを飲みながらの花火鑑賞、なかなか気分が良かったです。
by dognorah
| 2005-08-01 20:53
| コンサート
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Comments(4)
ヴェルディにひきつづきモーツァルトのレクイエムも高い水準の素晴らしい演奏だったようで何よりです。dognorahさんもおっしゃるように、こういう時期の「レクイエム」は、曲の持つ本来の意味を演奏者にも聴衆にも改めて思い起こさせる意味深いものになりますね。
都響の演奏会では、特にテロに関するアナウンス等はありませんでしたが、一応サブ・タイトルが「平和への祈り」とされていたし、それぞれが心の中で祈りながら演奏に接していたのではないかと思いました。 私も例外ではなく、いつもは不謹慎ながらアートとして聴いてしまいがちでしたが、今回は、全く違ったものになりました。 ところで、質問です! レクイエムの演奏のあと拍手はあるのですか? レクイエムに限らずミサ曲が教会で演奏される場合は、どうなのかなぁ?って以前から疑問に思っていました。 日本で教会での演奏に触れるチャンスがあまりないものですから、ぜひ教えてください。
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dognorah at 2005-08-02 18:42
snow_drop さんもあの事件で行動的に大きな決断をされたので今回聴かれたレクイエムは相当な重みがあったであろうことは想像していました。
今年聴いた3回のレクイエムでは、フォーレはセント・マーティン・イン・サ・フィールド教会、ヴェルディはセント・ポール大聖堂、モーツアルトはバービカンホールでしたが3回とも終演後は拍手しました。通常のようにブラヴォーの声もありました。もともと通常のコンサートとして企画されたものなので当然かなという気がします。しかし、教会の司祭がinvolveされるような企画であれば静かに終了するのではないでしょうか。 例えば、モーツアルト没後200年記念で開催されたレクイエムのDVDが手元にありますが(これはウイーンのシュテファン大聖堂でショルティがウイーンフィルを振ったものですが)、最初と最後および各パートの間に司祭の言葉が入り、終演後は一切拍手はありません。
dognorahさん、こんにちは。
詳しく教えてくださって、どうもありがとうございます。 なるほど。やはり、その企画や趣旨によって違ってくるのですね。 ヨーロッパを旅行していると教会でのコンサートやミサの案内をよく目にするのですが、ミサは祈りの場ですから、音楽が聴きたいために観光客の私などがお邪魔していいのだろうかと悩んだことが以前あったものですから。ちゃんと上記の違いをわきまえて聴かせていただけば良いのかな。(って勝手に解釈)
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dognorah at 2005-08-04 02:15
ウエストミンスター寺院で5月27日に参加したもの(http://dognorah.exblog.jp/1899362)はそういった類のコンサートで、黙って聴かせていただきました。
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