ボロディン弦楽四重奏団演奏会 (Wigmore Hall)

5月5日の記事でこの弦楽四重奏団のDVD鑑賞記を書きましたが、そのときに予告したロンドンでの演奏会に行ってきました。この団体の結成60周年とメンバーの精神的支柱であるチェロ奏者ベルリンスキー氏の80歳を記念して開催されたものです。本日唯一の演奏曲目の作曲者であるショスタコーヴィッチが亡くなってから30周年でもあります。

プログラム
 ショスタコーヴィッチ:弦楽四重奏曲第15番変ホ短調 Op.144

1曲のみの演奏なので開始時刻は夜の9時半でした。家で夕食を取ってから行けるのでこういう開始時間は大歓迎です。

この曲はショスタコーヴィッチが亡くなる1年前の1974年の作品で、最後の弦楽四重奏曲です。全部で7つの楽章がありますが、すべてAdagio(第6楽章はAdagio molto)指定です。曲全体を覆う暗い調子の故に、既に全身病に冒されていた彼は自分のためのレクイエムを書いたのだろうと言われています。あるとき彼は奏者に「第1楽章は空中のハエが死んで落っこちるように演奏しなさい。そうすればあまりの退屈さに聴衆は演奏会場から出て行く」と冗談を言っています。

その第1楽章、バッハの音楽の捧げ物の始まりのような緊迫した雰囲気で、しかしもっとゆっくりと弱く第1ヴァイオリンが開始、次いで第2ヴァイオリン、ヴィオラと続きます。今度はヴィオラから始まって第1ヴァイオリンまで。それが繰り返されしばらくしてようやくチェロが入って、やや雰囲気が変化するものの、上記ショスタコーヴィッチの予言が実現するかに見えます。

第2楽章以降はしかし、不協和音によるクレッシェンドが突然中断される形式の奏法が各楽器で繰り返されるなど、緊張感をみなぎらせながらも生き生きした雰囲気が醸し出されます。それは長続きすることはなく、続く各楽章も動と静が交互に表現されて最終楽章は息を引き取るような感覚が表現されて終了。この間約40分。切れ目なく演奏されるので楽章の判断がつきにくい。あらかじめアナウンスされていましたので、終了後は拍手なしです。メンバーが楽屋裏に引っ込んでややあってから拍手が起こり、通常のように聴衆の前に姿を現しました。

この曲、ベートーベンの第15番の第4楽章のような重々しさがあります。好きというわけではないですが、もう一度じっくり聴いてみたいという気はします。

チェロのベルリンスキーさん、DVDで見たとき以上に各メンバーに睨みを効かせている印象でした。80歳とは思えない元気さです。まだ当分現役で大丈夫でしょう。
[PR]
by dognorah | 2005-05-22 19:48 | コンサート
<< ランチタイムソプラノリサイタル 愛の妙薬 (L’elisir ... >>