プッチーニのオペラ「Il trittico」初日

2011年9月12日、ROHにて。

ロイヤルオペラの今シーズン幕開けです。例年のコンサート形式での幕開けと違うだけでなく、新演出で1965年以来初のプッチーニ3部作です。各地のオペラ劇場でこれが上演されるニュースを見るにつけ、なぜロンドンではやらないのだろうと思っていましたが、パッパーノはかなり以前から構想を温めていたようです。これまでは「ジャンニ・スキッキ」だけは上演されていましたが、同じ演出者によって今回他の二つが付け加えられたのでした。結論を先に言えば、それは演出、指揮、歌手にすばらしい人材を得てとても強力な出来で感動的舞台でした。更にいえばこのプッチーニの3部作は他の二つに比べて「ジャンニ・スキッキ」が一番出来が悪いオペラと言えます。なぜ一番出来の悪いオペラが3つの中で最も頻繁に上演されるのかは謎ですが。ROHでの上演記録を見ても、Il tabarroが今夜で21回目、Suor Angelicaが10回目、Gianni Schicchiが50回目となっています。

今回の演奏ですが、まずパッパーノの指揮に脱帽しなければいけません。文句のつけようのない密度の高い充実した演奏でした。特にIl tabarroとSuor Angelicaは初めて聴く音楽なのに大感動しました。これは歌手の出来も大いに寄与しています。
Il tabarroでは期待通りエファ=マリア・ウェストブルックが絶好調の歌唱、ルチオ・ガッロとアレクサンドルス・アントネンコの男声陣も惚れ惚れする歌唱と演技、それに加えて脇役達も立派でした。ルチオ・ガッロはここでは暗くて残酷な役柄を見事に演じるかと思えば、最後のGianni Schicchiでは笑わせ役を飄々と演じるなど感嘆しきりでした。以前見たシモン・ボッカネグラ役でも演技のうまさに感心したことがありますがそういう才能を持った人なんですね。
舞台装置は重厚な煉瓦造りの建物がそばに立っているセーヌ河畔に係留された資材運搬船という物語にふさわしい暗さが表現されていて、人物の動きなど見事に設定された質の高い演出です。

Eva-Maria Westbroek and Lucio Gallo
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Aleksandrs Antonenko
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Ji-Min Park 久しぶりに見たらちょっと太っていました
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Suor Angelicaは出演者全員が女性という希なオペラですが男性の私には全く違和感なし。WikipediaによるとROHでの三部作初演時には初日に上演したものの二日目からはこのオペラ自体をカットして二部作上演し、プッチーニの怒りを買ったそうです。
タイトルロールのエルモネラ・ヤオはアンヤ・ハーテロスの代役ですがなかなか頑張っていました。以前はネトレプコの代役、今回はハーテロスの代役と、そういうときしか聴いていませんがいずれも元の歌手ほどの出来ではないにしても無難にこなしますね。声の質はあまり好きじゃないですが歌唱、演技ともとても感動を与えてくれました。日本公演の椿姫役でミソをつけただけに今回の成功には本人も嬉しかったでしょう、ブラヴォーをもらったカーテンコールではちょっとウルウル状態でした。彼女の叔母役で出演したアンナ・ラーソンは今までコンサート歌手と思っていましたがオペラにも出演するんですね。今回のROHデビュー、なかなかよかったです。特に演技が。他の大勢の歌手達の中ではROHの研修生であるアンナ・デヴィンのうまさに感心しました。ヤオよりいいかもしれません。修道女コスチュームがとてもよく似合い、舞台映えのする美人になるのも印象を強くします。Il tabarroではちょい役でしたがそれもなかなか印象的な歌唱でした。
演出はIl tabarroに比べるとごく普通という感じです。悪くはないですが。

Ermonela Jaho
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Ermonela Jaho & Anna Larsson ヤオはこのように常に泣きそう
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中央がAnna Devin
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最後のGianni Schicchiは私は多分これで4回目の鑑賞になりますが、いつ見ても大して面白くもないオペラという印象で、今回も例外ではありません。例のLawrettaのアリアは今回のエカテリーナ・シューリーナが今までで一番上手いかも知れません。しかし今回Rinuccio役を歌ったテノールは前回のコステロにはかないません。

Lucio Gallo
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Ekaterina Siurina
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Francesco Demuro
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Richard Jones
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IL TRITTICO
Composer: Giacomo Puccini
Director: Richard Jones
Conductor: Antonio Pappano
Orchestra of the Royal Opera House

IL TABARRO
Michele: Lucio Gallo
Giorgetta: Eva-Maria Westbroek
Luigi: Aleksandrs Antonenko
Tinca: Alan Oke
Talpa: Jeremy White
Song Seller: Ji-Min Park
Frugola: Irina Mishura
Lovers: Anna Devin, Robert Anthony Gardiner

SUOR ANGELICA
Sister Angelica: Ermonela Jaho
The Princess: Anna Larsson
The Abbess: Irina Mishura
The Monitress: Elena Zilio
Mistress of the Novices: Elizabeth Sikora
Sister Genovieffa: Anna Devin
Nursing Sister: Elizabeth Woollett
Alms Sisters: Gillian Webster, Kathleen Wilder
Sister Osmina: Eryl Royle
Sister Dolcina: Elizabeth Key
Novice: Katy Batho
Lay Sisters: Melissa Alder, Kate McCarney

GIANNI SCHICCHI
Gianni Schicchi: Lucio Gallo
Lauretta: Ekaterina Siurina
Rinuccio: Francesco Demuro
Zita: Elena Zilio
Gherardo: Alan Oke
Nella: Rebecca Evans
Betto di Signa: Jeremy White
Simone: Gwynne Howell
Marco: Robert Poulton
La Ciesca: Marie McLaughlin

Maestro Spinelloccio: Henry Waddington
Ser Amantio di Nicolao: Enrico Fissore
Pinellino: Daniel Grice
Guccio: John Molloy
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by dognorah | 2011-09-15 09:31 | オペラ
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