トリスタンとイゾルデ

2011年7月3日、グランジ・パーク・オペラにて。

Richard Wagner: Tristan und Isolde
Grange Park Opera
Sung in German with English surtitle

Conductor: Stephen Barlow
Director & Designer: David Fielding
Lighting Design: Wolfgang Goebbel

King Marke of Cornwall: Clive Bayley
Tristan: Richard Berkeley-Steele
Isolde: Alwyn Mellor
Brangäne: Sara Fulgoni
Kurwenal: Stephen Gadd
Melot: Andrew Rees
A shepherd/a sailor: Richard Roberts
The English Chamber Orchestra

グラインドボーンに引き続いて二日続けてイギリスの田舎で行われるオペラに行き、オペラだけでなくピクニックもたっぷり楽しみました。今回のグランジ・パーク・オペラはハンプシャー州のウインチェスターに近い場所にありロンドンから約70マイルの距離、私は初めて経験しました。グラインドボーンほど立派な劇場ではないですが、こんな場所によくぞこれだけのものがと驚くようなちゃんとしたオペラ劇場(昔の建物の内側に2002年に建築)で、舞台装置もとてもまともなものです。客席数は恐らく5-600人程度と思われますが、ストール席は傾斜がついていますし、シャンデリアはMETと同じように開演と同時に天井に上がっていきます。これだけすばらしい劇場が1年に一ヶ月間しか使われないなんてもったいないというか贅沢というか、イギリスの豊かさはこういうところにもあるんですね。グランジ・パーク・オペラが設立されたのは1997年で、第一回目は1998年だそうです。それ以来毎年開催されていて、今年の演目は「トリスタンとイゾルデ」「ルサルカ」「リゴレット」の3つでそれぞれ7乃至9回の公演が行われ、それに加えてブリン・ターフェルのリサイタルが2回開催されました。グラインドボーンやホランドパークと同様ここも原語主義です。

さて、公演の方ですが、これが予想以上の質の高さで驚きました。トリスタンのリチャード・バークリー・スティールは2009年のROHの公演でメロート役を歌った人ですが、声も歌唱もすばらしく、過去に何回も聴いたRobert Dean Smithよりもずっといいです。
イゾルデを歌ったオールウイン・メラーはそのROH公演のニーナ・ステンメのカヴァーとして待機していた人らしく、ROHもそこそこ実力を認めていた人ですね。この人の声は全面的には好きというわけじゃないですが、これだけ歌えれば立派というしかない歌唱でした。「愛の死」はもう少しニュアンスが欲しいところですが。
ブランゲーネ役のセイラ・フルゴーニは何度もROHの脇役で聴いていますが、何ら不満のないブランゲーネで、ROHではチャンスは無くても他の劇場ではいい役で活躍できる人ですね。
クルヴェナール役のスティヴン・ガッドはユーロフスキーのコンサート形式の時にもいい声で歌っていた人で、今日は一際惚れ惚れする声でした。ROHでも同役で何ら不足はない歌唱が出来るでしょう。
マルケ王のクリーヴ・ベイリーもROHでは何度も脇役でお目にかかっている人で、低音はよく出るものの声の輪郭がはっきりせず、迫力的にはやや物足りない気がします。
メロート役のアンドリュー・リーズは元気のいい声でよかったと思います。

スティーヴン・バーロー指揮するイギリス室内管弦楽団も立派な演奏で、ヴァーグナー音楽を十分満足して聴けました。

演出ですが、モダンな設定で第1幕の船室は全く現代のもの、トリスタンも青いキャプテン制服姿です。イゾルデのスーツケースのそばには死の予感の意かあるいはトリスタンに殺された彼女の許婚モロルドの遺骨なのか頭蓋骨が転がっています。頭蓋骨は形を変えて第2幕でも登場します。その第2幕は舞台設定がよくできていて二人が愛し合う場面では寝室の壁が動いて明るい森が現れ、幻想的な雰囲気を醸しだしたり非常に美しいものです。第3幕はトリスタンの独白の間に少年時代の回想シーンなどが俳優たちによって演じられ、視覚的にも退屈しないようになっています。ただし、トリスタンが死んだ後の二人の動きはPeter Konwitschnyの演出そのもので、クレジットには何も書いてありませんが恐らくコンヴィチュニーの許可を得てコピーしたものなのでしょう。すなわち、死んだはずのトリスタンとまだ生きているはずのイゾルデが手を取り合って他の人々から不可視の状態になり、二人の背後で黒いカーテンが引かれるとイゾルデがトリスタンのために「愛の死」を歌うもので、二人が舞台袖に引っ込むとカーテンが開いて二人の墓のそばにマルケ王とブランゲーネがたたずむというものです。このエンディングそのものはなかなかよくできたものなので、演出家デイヴィッド・フィールディングも使いたかったのでしょう。それはともかく、全体としての演出はとてもよくできていると思います。上記の音楽面での充実振りと相俟って非常に楽しめた公演でした。この大オペラをこういう小さな劇場で聴くというのは何という贅沢なことでしょう。来年も是非来たいと思ったのでした。

この日は気温も高めで24度くらい、風もほとんど無くピクニックには最適の天候でした。8人で借りた小さなテントの下で開演前と2回の長いインターヴァルの間にたらふく食べて飲んで談笑しました。

ピクニック用の敷地。右手前とか左後方の小テントの中で飲食するので雨でもOK。
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Stephen Gadd、Alwyn Mellor、Richard Berkeley-Steele & Sara Fulgoni
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Alwyn Mellor & Richard Berkeley-Steele
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Richard Berkeley-Steele
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Alwyn Mellor
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Sara Fulgoni & Clive Bayley
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Stephen Gadd
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conductor: Stephen Barlow
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by dognorah | 2011-07-06 01:06 | オペラ
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