Friedensreich Hundertwasser (1928-2000)
ヴィーンで生まれ、日本からニュージーランドへの航海中に死亡。墓は遺言によりニュージーランドにある。 絵画、版画、建築デザインなどで数多の業績を残した。フンデルトヴァッサーの絵の特徴であるスパイラル模様を多用したユニークな構図や多彩で大胆な色使いというスタイルは50年代から60年代にかけて確立され、70年代以降はかつて使ったモチーフの繰り返しをすることが多い印象ではあるがそれでも魅力的だ。日本にはしばしば来ていて木版技術に魅せられ、自分の名前を漢字で読み替えたはんこ(すなわち、姓から「百水」、名から「豊和」)を作って各版画に押印したりしている。人類と自然の調和、環境保護に心を砕き、自然との調和を重要視した住居の提案を行い、建築デザインもしている。日本でも大阪市の舞洲(まいしま)ゴミ処理場、下水処理場の設計が有名である。 昨年11月にヴィーンのKunst Haus Wien(Hundertwasser Museum)で見てからずいぶん時間が経ってしまいましたが久しぶりに(恐らく17年振り位)見て大変感動しましたのでメモを残しておきます。 93年頃に見たときは、よかったなぁという程度の感想でしたが今回は最初の部屋から絵がすっと心に入り込み、しばしば立ちつくす有様。特に下の写真に掲げた1959年制作の “Singing Steamer in Ultramarine III”はあまりにすばらしく、絵の前に置いてあった一脚の椅子に座ったまま動けませんでした。この写真は色がやや明るすぎる嫌いがありますが大体の感じはわかると思います。67x270cmという横長の大きな絵です。細部にわたるまで丁寧に描かれており、構成も精緻、眼光鋭い若き日の彼の顔を彷彿とさせるエネルギーに満ちています。色遣いも完全に私の好みで、もう参りました。 Singing Steamer in Ultramarine III 同じく50年代の“The Miracurous Draught”も275x500cmという大きな絵(壁画)ですが素敵です。そのほか枚挙にいとまがないので、ネットで入手したいくつかの写真を掲載しますが、例によって色の再現性はあまり信用できません。 The Miracurous Draught Houses_In_The_Snow_In_A_Silver_Shower Singende-Vogel-auf-einem-Baum Irinaland over the Balkans Voyeurs of the Garden 絵画だけでなく版画も多数常設展示されていて、この美術館に収められた作品たちだけでも十分な見応えがあり寒い中を、暫く振りに行く気になって本当にラッキーでした。 ロンドンに帰ってからも彼の作品が頭から離れず、現地でも画集はごく限られた種類しかなく(上記美術館常設展示品の写真集さえ無い)いろいろ調べていたら死の直後に彼の全作品がカタログ化されてコレクターアイテムとして限定発売されていることを知りました。とても高いので買えませんが、検索したらBritish Libraryにあることがわかりました(さすが大英図書館、こんな特殊な出版物まであるんですね)。早速図書館の利用登録をし閲覧しました。分厚い本2巻で構成されていて凄いペース数なので夢中でページを繰っていたら5時間も経過してしまいました。それでもすべての絵画作品目録に目を通すことは出来ませんでしたが、大体の作品変遷を理解することが出来ました。全作品のカラー写真がちゃんと存在するものの非常に多くの作品現物の所在は把握されておらず、行方不明と注記されているのにはちょっと驚きました。それだけ個人愛好家に多く販売されたのでしょう。また1990年頃にオーストリアのグラーツにある美術館から10点ぐらいが盗まれていてそれも行方不明だそうです。この本はこれからも時々お世話になると思いますが、思いついて図書館に行くと棚から閲覧室に持ってきてもらうのに1時間以上待たされることがあるらしいのが難点です。事前にネットで予約しておけば待たずに済みますが。 これからもヴィーンに行くことは少なからずあるでしょうから、さらにじっくり現物を鑑賞する楽しみが出来ました。
by dognorah
| 2011-01-05 04:52
| 美術
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Comments(6)
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。(ぎりぎり松の内)
フンデルトワッサーは、昨年ウィーンでぜひ見ようと思っていたのですが、3日目はドナウ川クルーズのほうを取ったので、美術館訪問が出来ませんでした。次回、ウィーンに行ったら、まずはここ! 建築物のほうは結構見る機会があるのですが、版画や絵画はあまり印象に残っていないので、見た回数が少ないのだと思います。 大英図書館で、5時間もかけてじっくり画集をひもとくっていうのが、いいですね。登録はイギリスに住んでなくてもできるのかしら。 発売日を忘れていて、昨日ようやく5月29日のDNOのラトルとコジェナー共演の『ばらの騎士』チケットを買いました。日曜マチネなのに結構残ってました。
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dognorah at 2011-01-06 01:30
レイネさん、こちらこそ遅ればせながら新年のご挨拶を申し上げます。ご覧のようにブログも随分さぼって久しぶりに記事をアップしましたが、早速のコメントをありがとうございます。
次回ヴィーンに行かれたら是非訪問してください。美術館の位置はちょっとアクセスしにくいところにありますが、私はケルントナー通りのホテルから歩いていきました。20分ぐらいかかったかもという距離ですが意外に簡単です。 大英図書館は誰でも登録できると書いてありますがパスポートなど身分証明と住所証明が必要です。またどの本を見たいかという詳細も必要のようです。詳しくはhttp://www.bl.uk 「バラの騎士」は以前から仰っていたものですね。私は今のところ予定はしていません。お楽しみください。
こんばんわ。お元気そうで、何よりです。
フンデルトヴァッサーの名前は知っていたのですが、建築だけと思っていたので、画業があるとはまったく知りませんでした。個人的には、バルカンズが、キング・クリムゾンのデビュー・アルバムのジャケットを思わせる感じで好きです。 大英図書館、誰もが登録できるようになっているんですか。心理学コースの卒論と格闘していたとき、一般論として、大学には図書館があるのだから、最終学年の学生しか登録できないといわれました。登録するときも、指導教授の手紙を持っていかなければなりませんでした。ずいぶんと変わったようですね。
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dognorah at 2011-01-08 06:43
守屋さん、大英図書館は変わっていないと思います。今でも学生の登録に関しては同じ状態だと思いますよ。誰でもというのは一般人の話です。その一般人の私でも住所証明とIDの2種類の書類を用意しなくてはなりません。IDに住所が記されていても一つの目的にしか使えないというかなり官僚的なシステムです。
私にはフンデルトヴァッサーという人は画家であって建築家でもあるというのは後で知りました。最初に接したもので判断しちゃいますよね。
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stmargarets
at 2011-01-14 09:17
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こんばんは。久々コメントです。
私も建築から入ったクチですが、数年前にウィーンにネト子を追っかけてウィーンに行った際にここにも立ち寄り、完全ノックアウトされました。 そういえばDVDを買っていたのにまだ観ていないのだった。観なくちゃ!
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dognorah at 2011-01-15 08:29
stmargaretsさん、マノンの時でしたっけ?
そういえばDVDも売店で売っていましたね。内容が面白いようでしたら貸してください(笑)
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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